夕刊/金田ヒサ

THE RAMBLINGSのフロントマンが贈る漂流記

Fathers' Day

2015-06-15 | Weblog
久し振りにオヤジに会ったのは田舎にある大きな病院だった。

痩せてはいたけど杖もつかずロビーを自分の足で歩いていた。

頭は驚く位にクリアですっかり人間に戻っていて嬉しかった。

何年か振りの短い「会話」をした。

そして俺は親父との別れが近いと血で直感した。

写真で見せられた親父の内蔵は予想通りズタボロだった。

入院の必要も手術の必要もないくらいにだ。

帰り際に写真を撮ろうと親父が嗄れた声で言った。

俺は子供の頃から記念写真の類が苦手だ。

さすがにそれは思い出せなかったんだね親父。

これで決定的に記念写真が嫌いになったよ。

しばらくして親父が空を見上げながら一言。



「今日は緑が綺麗だ。」



人工的な病院の緑が夕暮れ時に皮肉なくらい鮮やかだった。

それを眺めている親父の後ろ姿は一枚の画のようで

悲しくらいに美しかった。

俺は覚悟を胸にしまい親父を抱きしめた。

生きているとはこういうことか。
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2 コメント

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Unknown (パスタ)
2015-06-15 21:42:33
今生とは生まれる前と死んだ後の僅かな隙間です。それを大切になさってください。
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Unknown (Unknown)
2015-06-16 06:28:44
(;_;)
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