思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『千個の青』 3人の女の物語。良い。SFではないけど。

2023-03-08 19:14:47 | 日記
『千個の青』
チョン・ソンラン
カン・バンファ:訳

ロボット工学好きの15 歳のヨンジェと、
小児麻痺で車椅子に乗る17歳の姉ウネと、
姉妹の母ボギョン。
親子であり女3人の家族の物語。

その舞台が近未来で、
競馬の騎手にヒューマノイドを使うくらいに
科学が進化している世界、という感覚で読むのがいいと思います。

(なので、SF的な設定はふわふわしている。
ヒューマノイドの仕組みや存在価値もふわふわしている)

夫である消防士が突然亡くなってしまい、
女ひとりで娘二人を育てなければならなくなった母、
家庭の財政的に義足が付けられない姉、
母と姉と家庭の状況を受け入れて
諦めることに慣れきってしまった妹。

それぞれ辛いものを抱えているし、
それぞれ強い心を持っているのに、
すれ違う親子3人の真摯な生き方は胸にくる。

ヨンジェと強引に友達になるジスが、
これまた、すごく良い存在。
良い物語でした。

とはいえ、まあ、SFではないです(しつこい)。
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『国宝』 最高オブ最高の小説

2023-03-06 18:00:30 | 日記
『国宝』吉田修一

戦後の長崎から始まり、バブル期の東京へ。
極道の家の「ぼん」から梨園の跡取り、
そして稀代の立役者へ。

主人公・喜久雄の一代記。

語りが狂言回し風というのか、
上質な講談や噺家の語りを聞いているような
独特な文体。
読んでいて気持ちいい、素晴らしい小説。

吉田修一すごいわあ〜。

梨園の「ぼん」である俊介との出会いからの青春編、
人生にとって素晴らしい数年間だよなあ。

と感動してからの別離、泣ける。

極道時代から兄代わりで世話をしてくれる
徳次の存在も素晴らしい。
小指を詰めたシーンの胸熱っぷり!!兄さん!!!

そして誰もいなくなった円熟期も涙無しには読めないし、
もう、ぜんぶすごい。
吉田修一すごい。

未読の『怒り』も読む!
『続 横道世之介』も読む!
(『横道世之介』は読んだ!!)

ちなみに表紙の写真は森山大道、
丹波屋の家紋デザインは束芋。豪華!
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『早雲の軍配者』富樫倫太郎

2023-03-03 19:36:31 | 日記
『早雲の軍配者』富樫倫太郎

主人公は風摩小太郎。
北条早雲に見込まれ、軍配者となるために
「足利学校」で学ぶことになった少年の成長物語。

これって、忍者系の話しでよく見る人ですか?

と思って調べたら、
フィクション系でよく見る風魔小太郎は
もう少し時代が下がった頃の人らしい。

そして「風摩」を名乗る人物や一族は、
史実的にはかなり不確からしい。

足利学校は実在しているけれど、
そこで学友となった山本勘助もかなりあやふやな人なので、
まあ、ファンタジーとして読むのが良い気がする。

北条早雲(伊勢宗瑞・伊勢新九郎)(1456〜1519)は
戦国時代の前半に活躍した人。
幼少期には応仁の乱(1467〜1477)を体験していて、
織田信長が生まれる20年前に亡くなっている。
いわゆる「戦国武将」で有名な人たちより、
一世代前なんだ〜。

という学びはあった。
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