思惟石

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『フォルモサ 台湾と日本の地理歴史』 18世紀のタモリさんかな?

2024-07-18 17:33:49 | 日記
『フォルモサ 台湾と日本の地理歴史』
ジョージ・サルマナザール
原田範行:訳

1704年にイギリスで出版された、
「架空の台湾誌」です。
奇書オブ奇書。

作者は「自称フォルモサ(台湾)人」ですが、実はフランス人。
この『フォルモサ』はイギリスで大ヒットし、
作者のサルマナザールはフォルモサ文化の講演会とか
フォルモサ語講習とかやっていたらしい。

ちなみに中身はホントに「架空」。
文化風習も、宗教や歴史も、フォルモサ語に至るまで
よくまあこんなに考えたなあと感心するレベルで
自由に書かれています。

以下、印象的なフォルモサポイント
・フォルモサ(台湾)は日本の植民地
・日本の当時の「皇帝」はクーデターで王位簒奪(え?皇帝?)
・フォルモサの農民ファッションは裸に毛皮のマントだけ。
 局部はベルトにぶら下げた板(!)で隠します
・フォルモサの通貨は「コンパン」(小判かな?真ん中に穴があるけど)
・何かと子供を生贄にする
・馬車は象さんが引きます
・欧米人が「フォルモサ人」「日本人」のフリしてもバレない
 (人種の違いを認識されていない)

自由に書きすぎ〜!と思いますが、
地理的な説明は結構、正確らしい。
(正確なのはそこだけとも言える)

とはいえフォルモサ語のアルファベット変換表とかあって、
がんばって書いたな!と、やはり感心する。

1700年というと、
ヨーロッパ各国が東インド会社を設立して
あちこちに拠点を確保していた時代。
一方で、「極東」のイメージは全然あやふやな時代。

フランス生まれの著者が「フォルモサ人」を名乗ったり
欧米生まれの神父が「日本人」のフリをしてフォルモサに密航する、
という、21世紀だと無理めな設定も
1704年のイギリスではスルーだったんだな。
というのが、一番面白かった。

「フォルモサ」は実際に「台湾」を示す言葉で、
ポルトガル語の「美しい島」という意味でもある。
が、この本では「タイオワン」と「フォルモサ」は違う島、
と言っている。
なんでそこだけ紛らわしい主張するんだよ…。

実はこの本は、イエズス会を批判するための
イギリス国教会プロパガンダ本。
3分の1近くがキリスト教教義のアツい主張
(だいぶ個人的な主張)なのだけれど、
当時のイギリス人も、現代の私たちも、
おもしろいと感じる部分はそこじゃない。
それで良いじゃないか、という本です。

大航海時代を土壌にした『カリバー旅行記』や
『ロビンソン・クルーソー』
が誕生する直前の奇書。
結局、サルマナザールは「嘘」だったことを白状するけれど
ありもしないフォルモサ語の講義などもバレずにやっていて
(英語とはまったく違ったソレっぽい発音だったらしい)
18世紀英国のタモリさんかな?と思う。

なんじゃこら、と思いながら読みましたが、
最終的には「多才な人だなあ」と感心してしまった笑
コメント
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