思惟石

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『シャクルトンに消された男たち』 ドラマチック・ノンフィクション!

2023-02-24 14:13:21 | 日記
『南極横断隊の悲劇
シャクルトンに消された男たち』
ケリー・テイラー=ルイス
奥田祐士:訳

20世紀初頭に激化した北極南極制覇競争は
『世界探検史』で読んでいたけれど、
その後のシャクルトンの物語は知らなかった〜。

シャクルトンは南極制覇に遅れを取った人。
(南極点は一番乗りがノルウェーのアムンセン、
 2番手がイギリスのスコット)

「じゃあ、俺は南極大陸横断する!」
というわけで、そちらの一番を目指したものの、
南極大陸に上陸すらできずに遭難。
2年ほど遭難しつつも、隊員は全員生還だ!
という話で有名な人である。

とはいえ、この本はその話ではなくて。

シャクルトンの南極横断を助けるために、
逆サイドから南極上陸していた「サポートチーム」のお話しです。

まず、そんな人たちがいたんか〜い!という驚きがすごい。
作者もその驚きが執筆のきっかけらしい。

しかもシャクルトンたち本隊は南極に上陸すらできてないのに、
サポートチーム(ロス海支隊)はそれを知る術もないまま
2年間、南極大陸でがんばっていたという。
あらすじを読んだだけで「うわあ」となります。

作者は、隊員の日記や公式文書・新聞など
細やかにリサーチしていて、
ロス海支隊の詳細がわかりやすく整理されています。
なので、読んでいてずっと「うわあ」となります。
うわあ。

ちなみにシャクルトンが南極大陸横断に出発した1914年は
第一次世界大戦勃発の年でもある。
シャクルトンの母国イギリスは
開戦初期はごりごり当事者ではなかったけれど、
長引く戦争の泥沼にじわじわハマっていく。
シャクルトンたちの遭難がわかった1916年あたりは、
「南極探検隊救助どころじゃないよ〜」という世相もよくわかる。
(一方で、彼らが帰還した際のお祭り騒ぎも、
明るい話題に飛びつきたくなる人心というか、わかるよなあ)

ロス海支隊の隊長マッキントッシュは
確かにリーダー向きな性格ではなかった。
けれど彼ばかりを責めるのも違うよなあ。
と思いつつ、やっぱり記録や日記を読み進めていると
頭が硬いオッサンだな!と腹を立ててしまう。

現場上がりの実質的リーダーであるジョイスも
なかなかクセの強い性格で、
なんかもう、人間関係が
ドラマよりもドラマチック!
めちゃくちゃ読み応えあります。

あと、犬が不憫。

個人的にはシャクルトン本隊の話より、
断然おもしろいと思う。
コメント
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