思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『後白河院』 日本一の大天狗

2023-02-06 16:14:06 | 日記
『後白河院』井上靖

後白河院は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で
西田敏行が演じていた「日本一の大天狗」。

四人の視点から後白河院の印象を語る構成です。
第一部:語り手・平信範〔のぶのり〕
第二部:語り手・建春門院中納言
第三部:語り手・吉田経房〔つねふさ〕
第四部:語り手・九条兼実〔かねざね〕

個人的には、なんとなく後鳥羽天皇と混同しがち〜。
どちらも「後」がつくから…。

(後鳥羽天皇は3種の神器無しで即位したことで懊悩抱えていた天皇。
後に承久の乱を起こして隠岐に流された人。
安徳天皇の異母弟であり、私的には
宇月原晴明(うつきばらはるあき)『廃帝綺譚』で読んだ人である)

後白河天皇は、即位前には後継候補として名前も挙がっておらず、
風流人として呑気に暮らしていたらしい。
ほえ〜、意外。
天皇になりたくてなったわけじゃないのかな。

第一部は平信範が、若い九条兼実に後白河天皇即位までの話を
語り聞かせているのですが。
第四部では、その九条兼実が老齢になり後白河院の思い出(?)を
振り返っている。
ちょっとずつ時代が移ろっていくし、
語り手それぞれ、後白河院に対する評価や想いが異なっている。
おもしろいな〜。

若い頃に保元の乱、平治の乱に巻き込まれ、
平家の全盛期に幽閉されたり権力奪われたり、
京都に木曾義仲が来たり義経が来たり頼朝が来たりして
時代のうねりに翻弄されまくった割に
天寿を全うしている、稀有な人である。

個人的にはコテンラジオでも評されていたように
「この行動をとったらどういう結果になるのか、をあまり考えない」
的な人じゃないかと思ってるけど。
にしても、めちゃくちゃ波瀾万丈な時代に数十年の間
君臨しつづけたのは、すごいよなあ。
上皇でも流罪になる時代だもんなあ、しみじみ。

初版は1975年。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする