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自縄自縛日記

杉原達『越境する民 近代大阪の朝鮮人史』

2024-04-04 22:56:11 | 韓国・朝鮮

杉原達『越境する民 近代大阪の朝鮮人史』(岩波現代文庫、1998/2023年)を読む。

1922年に済州島と大阪を結ぶ定期航路ができ、「君ヶ代丸」が就航した。釜山~下関はおもに日本人が使い、君ヶ代丸はおもに済州島の者が使った。つまり安い労働力だ。それにより大阪に住む済州島出身者は急増し、住民の1割くらいを占めるようになった。このあたりの歴史や厳しい生活水準については、金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って ―朝鮮人街猪飼野の形成史―』にも書かれている。本書の独特な点は、それを生活圏の目線で描いていること。だから日韓併合、強制労働の開始、日本の敗戦など大きな歴史的事件があるとしても、「生活をつなぐネットワークは、国家の暴力に屈服したり、すり抜けたり、拮抗したりしながら、1920年代以降から数十年以上にわたって、さまざまな形で成立してきたことへの想像力が求められている」とは至言。

済州島出身者が住み付いた中心の街が猪飼野で、「朝鮮人の街」というイメージに反発する地域在住の日本人たちの声を背景に、その地名は消滅した(1973年)。しかし猪飼野って良い地名である。金時鐘さんの『猪飼野詩集』だって、太田順一さんの写真集『女たちの猪飼野』だってそのあとに発表されたものだし―――それにしても良い写真。たしか性能がひどくてゴーストやフレアが出まくるズミルックス35mmF1.4を使っているはずだ。久しぶりにあのあたりを訪ねて干物を買ったり美味しい韓国料理を食べたりしたい。太刀魚もあるにちがいない。

●済州島
ヤン ヨンヒ『スープとイデオロギー』
済州島、火山島
済州島四・三事件の慰霊碑と写真展
済州島の平和博物館

済州島四・三事件69周年追悼の集い〜講演とコンサートの夕べ
『済州島四・三事件 記憶と真実』、『悲劇の島チェジュ』
オ・ミヨル『チスル』、済州島四・三事件、金石範
文京洙『済州島四・三事件』
文京洙『新・韓国現代史』
金石範、金時鐘『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか 済州島四・三事件の記憶と文学』
金石範講演会「文学の闘争/闘争の文学」
金石範『万徳幽霊奇譚・詐欺師』 済州島のフォークロア
金石範『新編「在日」の思想』
水野直樹・文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』
済州島四・三事件と江汀海軍基地問題 入門編
金時鐘『背中の地図』
金時鐘講演会「日本と朝鮮のはざまで」
金時鐘『朝鮮と日本に生きる』

金時鐘『境界の詩 猪飼野詩集/光州詩片』
細見和之『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』
『海鳴りの果てに~言葉・祈り・死者たち~』
『海鳴りのなかを~詩人・金時鐘の60年』
梁石日『魂の流れゆく果て』(屋台時代の金石範)
仲里効『悲しき亜言語帯』(金時鐘への言及)
林海象『大阪ラブ&ソウル』(済州島をルーツとする鶴橋の男の物語)
金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って』(済州島から大阪への流れ)
藤田綾子『大阪「鶴橋」物語』
鶴橋でホルモン(与太話)
三河島コリアンタウンの伽耶とママチキン
尹東柱『空と風と星と詩』(金時鐘による翻訳)
『越境広場』創刊0号(丸川哲史による済州島への旅)
徐京植、高橋哲哉、韓洪九『フクシマ以後の思想をもとめて』(済州島での対談)
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』(沖縄と済州島)
宮里一夫『沖縄「韓国レポート」』(沖縄と済州島)
長島と祝島(2) 練塀の島、祝島(祝島と済州島)
野村進『コリアン世界の旅』(つげ義春『李さん一家』の妻は済州島出身との指摘)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
吉増剛造「盲いた黄金の庭」、「まず、木浦Cineをみながら、韓の国とCheju-doのこと」
「岡谷神社学」の2冊
沖縄国際大学南島文化研究所編『韓国・済州島と沖縄』


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