Sightsong

自縄自縛日記

柊サナカ『谷中レトロカメラ店の謎日和』

2015-10-29 23:31:42 | 写真

日本カメラ博物館のウェブサイトに紹介してあった、柊サナカ『谷中レトロカメラ店の謎日和』(宝島社文庫、2015年)を読む。

変人の男と謎めいた女とが繰り広げるカメラ・ミステリー。軽いのですぐに読めてしまうのだが、ツボを突かれていちいち愉快。

登場するカメラは、コダック・シグネット35、フォクトレンダー・ベッサII、ワンテンのハリネズミカメラ、リコー・オートハーフ、ニコンF、ステレオグラフィック、ローライドスコープ、ライカIIIf。古い銀塩カメラは人間的で、ひとつひとつが違って、やはり愛すべきモノなんだな。

しかも、舞台が日暮里~谷中墓地~夕やけだんだん~谷中銀座~へび道あたり。学生時代に住んでいた近くで、先日も「ザクロ」というペルシャ料理の店に行く道々で、ここは変わった、ここは前と同じだなどと呟きながら歩いていると、懐かしさでどうしようもない気持ちになってしまった。

カメラや写真のメカニズム的なものをネタにした小説といえば、高齋正『透け透けカメラ』『UFOカメラ』、真保裕一『ストロボ』。それから、ハヤカワ文庫の翻訳ミステリで写真家が出てきて、一見何も写っていないネガの秘密を解く話・・・作家名すら覚えていない。(思い出した。ディック・フランシス『反射』だった。)

●参照
コダック・シグネット35は色褪せたポスターカラー
フォクトレンダー・ヴィトマティックII


ネイト・ウーリー『(Sit in) The Throne of Friendship』

2015-10-29 06:52:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

ネイト・ウーリー『(Sit in) The Throne of Friendship』(clean feed、2012年)を聴く。

Nate Wooley (tp)
Josh Sinton (bcl, bs)
Matt Moran (vib)
Eivind Opsvik (b)
Dan Peck (tuba)
Harris Eisenstadt (ds)

帰着点があるような無いようなファンタジックなサウンド。ウーリーの音楽でイメージする世界は、やはり小劇場のような空間で現出される物語だ。

声高に苛烈なプレイで主張するタイプでない面々が集まっている。しかし、ジョシュ・シントンの静かなる変態性、ハリス・アイゼンスタットのきめ細やかなドラムス、アイヴィン・オプスヴィークの暖かいベースなど、皆が見事に個性的だ。聴く者を、つねに何かを言い足りないような、聴き足りないような保留状態にとどめ置くウーリーのトランペットも、もちろん気持ちがいい。

●参照
ハリス・アイゼンスタット『Canada Day IV』(2015年)(ウーリー参加)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces』(2014年)(モラン参加)
ネイト・ウーリー『(Put Your) Hands Together』(2011年)(シントン、モラン、アイゼンスタット、オプスヴィーク参加)
ヴィンセント・チャンシー+ジョシュ・シントン+イングリッド・ラブロック@Arts for Art(2015年)
Ideal Bread『Beating the Teens / Songs of Steve Lacy』(2014年)(シントン参加)
アイヴィン・オプスヴィーク Overseas@Seeds(2015年)
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)(オプスヴィーク参加)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas IV』(2011年)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)(オプスヴィーク参加)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas III』(2007年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、12年)(オプスヴィーク参加)