Sightsong

自縄自縛日記

ジョルジュ・アルヴァニタス+デイヴィッド・マレイ『Tea for Two』

2015-10-24 23:33:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョルジュ・アルヴァニタス+デイヴィッド・マレイ『Tea for Two』(Fresh Sound Records、1990年)を聴く。

George Arvanitas (p)
David Murray (ts)

ちょうどこれが出たあと間もなくだったと思うが、秋葉原の石丸電気(昔、よく輸入盤を物色していた)で見かけ、ああ聴きたいなあと思いそのままになっていた。最近レコ屋で、500円で見つけてしまい、一も二もなく確保。さほど珍しいものでもないのだろうけど、音楽も本も出会いである。

アルヴァニタスはフランスの粋なピアニスト。かれの伴奏で、マレイがスタンダードをじっくり吹くという趣向のライヴ録音である。曲は「Chelsea Bridge」、「Polka Dots and Moonbeams」、「Star Eyes」、「Body and Soul」、「Tea for Two」、「La Vie En Rose」といったど定番ばかり。ちょっと「バラ色の人生」が珍しいのかな。

マレイのテナーは、臭い音色で過剰なほど堂々とヴィブラートを聴かせ、ブルージーに攻め、たまに高音に駆け上っては戻ってくる。要するにいつもと同じである。マレイがローランド・ハナと組んで、やはりスタンダードを中心に吹いたアルバム『Seasons』があって、結構好きでよく聴いたのだが、まあこれも同じである。それでもいいのだ、マレイだから(笑)。

●参照
デイヴィッド・マレイ・ビッグ・バンド featuring メイシー・グレイ@ブルーノート東京(2013年)
デイヴィッド・マレイ『Be My Monster Love』、『Rendezvous Suite』(2012、2009年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
ワールド・サキソフォン・カルテット『Yes We Can』(2009年)
デイヴィッド・マレイの映像『Saxophone Man』(2008、2010年)
デイヴィッド・マレイ『Live at the Edinburgh Jazz Festival』(2008年) 
デイヴィッド・マレイの映像『Live in Berlin』(2007年)
マル・ウォルドロン最後の録音 デイヴィッド・マレイとのデュオ『Silence』(2001年)
デイヴィッド・マレイのグレイトフル・デッド集(1996年)
デイヴィッド・マレイの映像『Live at the Village Vanguard』(1996年)
デイヴィッド・マレイ『Special Quartet』(1990年)


鶴見俊輔『アメノウズメ伝』

2015-10-24 10:10:26 | 思想・文学

バンコクからハノイに飛ぶ機内で、鶴見俊輔『アメノウズメ伝 神話からのびてくる道』(平凡社ライブラリー、原著1991年)を読了。

アメノウズメは、アマテラスが引きこもった天岩戸の前で、なんとか呼び出そうと、エロチックでコミカルに踊る。そしてまた、ニニギノミコトが天孫として日本に降りるときに立ちはだかっていた怪神サルタヒコに、まるで恐れず、お前は何者だと問う(やがて結婚する)。

安本美典『日本神話120の謎』によると、記紀神話に沿って、アメノウズメの満たしているべき条件は以下の6点。

●手に笹の葉または矛を持つ。
●裳(スカート)をつけている。
●ヒカゲのカズラでタスキをしている。
●マサキのカズラまたはサカキを髪飾りとしている。
●乳房をかき出している。
●紐が陰部に垂れそうになっている。

まあ開けっ広げであり、まったく陰湿さのない開放された性と笑いだ。そして、サルタヒコという異なる外見とルーツを持つ者に対しても、接し方は普段と何ら異なるところはない。鶴見俊輔は、このようなアメノウズメのキャラクターに、近代の日本が失っている力を見出している。そして、その系譜に連なる者として、瀬戸内寂聴、田辺聖子、北村サヨ(戦時中に神がかりになり、天皇の苛烈な批判をはじめた女性)を挙げる。

面白く納得できる見立てである。その一方で、このようなトリックスターが居てこその政治的な日本神話の強化だろうという気もするのだがどうか。


及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul

2015-10-24 09:21:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

南青山のBody & Soulで、及部恭子さんのNYからの帰国ライヴを観る(2015/10/23)。何しろクリス・スピードが共演。

Kyoko Oyobe 及部恭子 (p)
Chris Speed (ts, cl)
Michael O'Brien (b)
Gene Jackson (ds)
Special guests:
Makoto Ozone 小曽根真 (p)
Branford Marsalis (ts)

及部さんのプレイに接するのははじめてだが、1曲目の「How About You」から素晴らしいピアニストであることが伝わってきた。まるで踊るように、愉快そうにピアノとメンバーに対峙し、タッチは柔らかい。まるで俊敏な猫のようだ。弾くか弾かないかのところで出し入れするときの優雅さと愉しそうな表情といったら。

ジャズスタンダード「Donna Lee」は、チャールス・ミンガスにふたりの妻がいたという話から、チャーリー・パーカーまたはマイルス・デイヴィスが作曲したという。その話から妄想を膨らませ、話しながらユーモラスに展開する「Donna and Lee」。クリス・スピードのクラリネットが渋い。また、ワインのことを想像しながら作ったという「I Remember Bourgogne」は、「I Remember Clifford」を引用する。さらに、及部さんのご実家のうどん屋をモチーフにした「Udon」。終始遊び心が溢れるライヴだった。

クリス・スピードのテナーサックスは、音量も押し出しも強くはない。むしろ、ドライで、隙間のある中空の物体のようで、聴けば聴くほど面白くなった。

ところで、途中で小曽根真さんが聴きに入ってきたのが見えたのだが、最後の曲でスペシャル・ゲストとして飛び入り参加。しかもなんと、ブランフォード・マルサリスとともに(!)。セロニアス・モンクの「I Mean You」の途中で、小曽根さんが交替し、さすがの貫禄、超高速のカッチョいい和音の塊を炸裂させた。ブランフォード・マルサリスも、テナーらしいテナーの、目が覚めるようなソロ。隣に立ったクリス・スピードが、アイドルであるかのようにブランフォードを見つめていた。

帰り際に、先日、Mezzrowでの穐吉敏子さんのライヴを観ていたでしょうと訊くとビンゴ。

Nikon P7800

●参照
ブリガン・クラウス『Good Kitty』、『Descending to End』(クリス・スピード参加)
三田の「みの」、ジム・ブラック(クリス・スピード参加)
ハリー・コニック・ジュニア+ブランフォード・マルサリス『Occasion』
デイヴィッド・サンボーンの映像『Best of NIGHT MUSIC』(ブランフォード・マルサリス登場)