Sightsong

自縄自縛日記

広島市現代美術館の「日本の70年代」展

2013-06-27 23:34:20 | アート・映画

この日曜日には、広島市現代美術館にも足を運び、「日本の70年代」展を観た。

美術館は比治山の上にあり、エスカレーターと坂道を登る。なお、張本勲は、この山の影にあった段原地域に住んでおり、原爆による直接の熱線を浴びなかったという。

この時代の尖った感覚が好きなこともあって、とても楽しめた。

横尾忠則の『新宿泥棒日記』ポスターやその習作。『季刊フイルム』。『映画批評』。松田正男や平岡正明の著作群。足立正生『略称・連続射殺魔』のヴィデオ(富樫雅彦・高木元輝の音楽が流されていなかったのは残念)。赤瀬川原平の『赤軍・PFLP世界革命宣言』ポスターや『櫻画報』。李禹煥。関根伸夫。菅木志雄。松本俊夫。高田渡。

経年的に観ていくと、時代の変化は明らかだ。展示の終わりは80年代初頭あたり、こうなると、上澄みがいびつに発達した「ポップ・カルチャー」的になっていき、ある種の感慨を覚える。

案内してくれた記者のDさんは、あれほどまでに先鋭的であったアートが、なぜこうもやすやすとセゾン文化に回収されてしまったのか、との言。

実際に、この哀しさ・哀れさは否定できない。結果論かもしれないが、万博の際の亀倉雄策によるポスターは、東京オリンピックのときと同様に、既に資本主義に取り込まれてしまっている。また、やはり万博の「せんい館」における松本俊夫の意欲的なアートも、やがて来る形勢の逆転をはらんでいるようにも感じられた。


ケティル・ビヨルンスタ『La notte』

2013-06-27 11:44:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

ケティル・ビヨルンスタ『La notte』(ECM、2010年録音)を聴く。

Andy Sheppard (ts, ss)
Anja Lechner (violoncello)
Eivind Aarset (g, electronics)
Arild Andersen (b)
Marilyn Mazur (perc, ds)
Ketil Bjornstad (p)

ビヨルンスタの作品というと、チェロのデイヴィッド・ダーリングと組んでの静謐なる録音という印象があり、特に聴くことも少なかった。この新作は、アンディ・シェパードのサックス、マリリン・マズールのドラムスなど、気になる編成ということもあって、耐えきれず入手した。

相変わらず、メロディを綺麗な和音で横支えし、循環するピアノである。勿論悪くない。しかし、透明感があるというのはコードやメロディからの逸脱が極めて少なく、退屈ということも意味する。

それでも、多彩なメンバーでのライヴ録音ということもあって、一期一会感があり、ひたすらうっとりとして繰り返し聴いてしまう。やはり、シェパードのふわりとして巧いサックスは個性的なのだなと確認した。


Andy Sheppard (2010年) Leica M3、Summicron 50mmF2.0、Tri-X(+2増感)、フジブロ4号

●参照
キース・ティペット+アンディ・シェパード『66 Shades of Lipstick』、アンディ・シェパード『Trio Libero』
アンディ・シェパード『Movements in Color』、『In Co-Motion』
アンディ・シェパード、2010年2月、パリ


広島の戦跡

2013-06-27 08:37:36 | 中国・四国

記者のDさんに案内していただき、広島市内の戦跡をいくつかまわった。知らないことばかり、勉強になった。

■ 広島大本営

1894年、日清戦争の際に、大本営が広島に設置された。軍港・宇品港があったことも評価され、広島は兵站基地となった。なお、広い練兵場は、現在、公園になっている。

それに伴い、首都機能が広島に移され(!)、約7か月の間、明治天皇がここに移り、戦争を指揮した。これは明治維新以降ただ一度だけの首都移転であるという。

原爆により、大本営跡は破壊された。現在は、建物の基礎と、昭和十年設置の碑石が残されている。碑石からは、「史跡」という文字と、それを指定した「文部省」の文字が消されている。

■ 旧日本銀行広島支店

日本銀行広島支店は、建物自体は頑丈であったためか破壊を免れた。しかし、爆風で窓ガラスが割れ、部屋の壁に刺さった跡をいくつか見つけることができる。

地下の金庫室(分厚い扉に驚かされる)では、「被爆仏石写真展/地蔵の記憶」が展示されていた。

原爆によって、首が折れたり、皮膚がはがれたりした地蔵群。もの言わぬ存在であるだけに却って痛々しい。

■ 世界平和記念聖堂

戦後、原爆被害者の慰霊のために建造されたカトリック教会である。

設計は村野藤吾。確かにDさんの言うように、手仕事の跡があえて残された味のある外壁であり、円鍔勝三による入口上の彫刻も素晴らしい。また、鳥居のような門、松や梅の形をした窓など、「和」のテイストが面白い。

特筆すべきことは、同じ敗戦国であるドイツからの寄付が多いことだという。聖堂内部正面のイエスの壁画はアデナウアー元首相、パイプオルガンはケルン市、玄関の鉄製の扉はデュッセルドルフ市から、などというように。


デュッセルドルフ市寄贈の扉

■ 地下通信室

原爆投下についての第一報は、軍の地下通信室からなされたという。それも、学徒動員された女学生たちによって。

護国神社の横にあるのは、何とも皮肉なことである。

■ 広島第一劇場

まったく戦跡とは関係がないが、広島市内に唯一残るストリップ劇場。残念ながら覗かなかった。

●参照
被爆66周年 8・6 ヒロシマのつどい(1)
被爆66周年 8・6 ヒロシマのつどい(2)
新藤兼人『原爆の子』
『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』
原爆詩集 八月
青木亮『二重被爆』、東松照明『長崎曼荼羅』
『はだしのゲン』を見比べる
『ヒロシマナガサキ』 タカを括らないために
アラン・レネ『ヒロシマ・モナムール』