Sightsong

自縄自縛日記

侯孝賢『憂鬱な楽園』

2013-06-09 20:22:02 | 中国・台湾

侯孝賢『憂鬱な楽園』(1996年)を観る。

台湾。チンピラたち。何か大きなことをやりたいという気持がある。上海でレストランを開こうとして失敗。立ち退きの時に豚を買い取ってもらう詐欺を考えるも、分け前がもらえず失敗。暴れて逮捕。

感情を制御できず、焦燥感ばかりが高まり、それでも時間が過ぎていく。誰にでも迫る日常生活という魔を、侯孝賢は、過激な長回しによって描き出している。

世界の敵は世界そのものだ。それを映画として包んだ手法は見事。

●参照 侯孝賢
『風櫃の少年』(1983年)
『冬々の夏休み』(1984年)
『非情城市』(1989年)
『戯夢人生』(1993年)
『ミレニアム・マンボ』(2001年)
『珈琲時光』(2003年)
『レッド・バルーン』(2007年)


スリランカの映像(11) レスター・ジェームス・ピーリス『湖畔の邸宅』

2013-06-09 14:29:20 | 南アジア

スリランカ映画の巨匠、レスター・ジェームス・ピーリスの2002年作品『湖畔の邸宅』(Mansion by the Lake/WEKANDE WALAUWA)を観る。

5年ぶりに、ロンドンからスリランカの邸宅に戻ってきた母子。迎える母の兄と、娘のように育てられた孤児。母の夫が亡くなり、失意のあまりに祖国を離れていたが、その間、銀行からの借入金をまったく返していないことが判ったための帰国だった。返済するオカネはない、しかし、懐かしい大邸宅を手放したくない。

人柄はさておき、特権階級であることが染みついている人たち。昔、この邸宅で育った大学生は、反体制運動の咎で警察に追われながら、幼馴染の娘と恋に落ちる。大学生の理想は、昔、使用人であったオカネモチ(真っ赤なベンツに乗っている)に嘲笑される。そして大学生は警察に射殺され、邸宅はオカネモチに買い取られてしまう。オカネモチのことを、その出自ゆえ下の身分だとみなしている家族は、屈辱にまみれ、邸宅を去っていく。

さしたるドラマチックな演出がなされるわけではない。しかし、身分社会の観念から離れられない哀れな人たちを淡々と描く手腕は、さすがに老大家のものだと思えた。チェーホフの『櫻の園』をもとにしているためか、室内劇的なカメラワークでもある。

主演の女優は、『ジャングルの村』(1980年)(>> リンク)にも出演していたマーリニ・フォンセーカ。20年以上の時間差があるため、調べてみないと気付かない。


杉本良男編『もっと知りたいスリランカ』(弘文堂)より

ところで、スリランカらしさは、独特の音階を持つバイラなどの音楽に起因している点もあるように感じたがどうだろう。

●参照
スリランカの映像(1) スリランカの自爆テロ
スリランカの映像(2) リゾートの島へ
スリランカの映像(3) テレビ番組いくつか
スリランカの映像(4) 木下恵介『スリランカの愛と別れ』
スリランカの映像(5) プラサンナ・ヴィターナゲー『満月の日の死』
スリランカの映像(6) コンラッド・ルークス『チャパクァ』
スリランカの映像(7) 『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』、『シーギリヤのカッサパ』
スリランカの映像(8) レスター・ジェームス・ピーリス『ジャングルの村』
スリランカの映像(9) 『Scenes of Ceylon』 100年前のセイロン
スリランカの映像(10) デイヴィッド・リーン『戦場にかける橋』