Sightsong

自縄自縛日記

小嶋稔+是永淳+チン-ズウ・イン『地球進化概論』

2013-06-28 08:09:18 | 環境・自然

小嶋稔+是永淳+チン-ズウ・イン『地球進化概論』(岩波書店、原著2012年)を読む。

地球はどのようにでき、どのように進化してきたか。

わたしは、高校生の時分に『地球大紀行』(NHK、1987年)に感激してしまい、地球物理を勉強することになった(情熱は長くは続かなかったのではあるが)。本書を読むと、その後も地球史の研究が大きく進展してきたことがよくわかる。つい夢中になって、1日で読了してしまった。 

本書はコンパクトではあるが、さすがに第一人者によるだけあって、包括的な内容をカバーし、議論の全体感がわかるとともに、各論も「かゆい所に手が届く」ものとなっている。いかなる専門家であっても、これはなかなかできないことだ(逆に、各論の隘路に入り込み、説明も独りよがりな本ならば何冊もある)。

本書では、たとえば各論を読みつつ「あの話とは何の関係があるのだっけ」と思っていると、それを見越したかのように、議論の全体における位置を示してくれる。また、学問としての進展のプロセスや、現在の限界も、同時に示してくれる。

通読すると、同位体の存在が、地球史という学問を精緻なものにしてきたことがよくわかる。また、熱的なバランスという観点から、プレートテクトニクスや、地磁気について議論が展開され、なるほどと思わせてくれるものがある。

素晴らしい概説書。推薦。


ニコラス・レイ『We Can't Go Home Again』

2013-06-28 00:39:08 | 北米

新宿のK's Cinemaで、ニコラス・レイ『We Can't Go Home Again』(1976年)を観る。

レイの遺作である。また、ヴィム・ヴェンダース『ニックス・ムーヴィー/水上の稲妻』(1979年)において、最晩年のレイの姿とともに、このフィルムが紹介されており、観たい作品だった。

大学の映画の教師に就任したレイ。学生は乱暴に、アナーキーに動く。レイは自殺をも試みる。

とはいえ、物語はあって無きがごとし。複数の映像のコラージュによる作品であり、投影された画面が、混沌を絶えず創り出し続けている。

レイや若者たちの醜い阿鼻叫喚、16ミリの滲みと染み、それらの脈絡のない融合は、おそろしいほどに外部に開かれている。汚いものも没論理も感情過多も、すべて人間そのものだ。それは観る者と否応なくリンクしていく。

●参照
ニコラス・レイ『太平洋作戦』
ジョナス・メカス『「いまだ失われざる楽園」、あるいは「ウーナ3歳の年」』(ニコラス・レイの死が語られる)