Sightsong

自縄自縛日記

鎌田慧『怒りのいまを刻む』

2013-06-15 09:15:57 | 政治

わたしがもっとも敬愛するルポライター・鎌田慧さんは、「東京新聞」にコラムを連載している。切り口や観点はつねに鋭く、決して高みからの視線となることはない。『怒りのいまを刻む』(七つ森書館、2013年)は、2009年からのその連載を集めた本である。

原発と核燃料サイクル。冤罪。死刑。国鉄処分。朝鮮人強制労働。三里塚。高校無償化での朝鮮学校差別。米国追従。辺野古。高江。普天間。ハンセン病。過酷な労働。TPP。水俣。慰安婦。

こうして振り返ってみると、改めて、真っ当な怒りがこみあげてくる。その怒りは、非人道的で強権的な政治を行う為政者や、政府に向けられている。しかし、それと同時に、怒りは、問題や矛盾を視ようとせず、仮に視えても視ないふりをする市民にも向けられている。

勿論、人ごとではない。誰でも、自分に火の粉が降りかからなければ、いつの間にか、騒がず順応していることになる。その意味で、本書により、この数年間で社会に噴出した矛盾を振り返り、再び意識下に置くことは重要なことだ。ましてや、問題を認識せず、想いを馳せてこなかったとすれば、その者の外部との関係性はいびつで独りよがりなものになっている。著者でさえ、ハンセン病に対する自らの「無知と無関心」を反省すると何度も書いているのである。

人間は知と想像力の持ち主であるべきだ。

●参照
鎌田慧『六ヶ所村の記録』
鎌田慧『沖縄 抵抗と希望の島』
鎌田慧『抵抗する自由』
鎌田慧『ルポ 戦後日本 50年の現場』
前田俊彦『ええじゃないかドブロク(鎌田慧『非国民!?』)
6.15沖縄意見広告運動報告集会
『核分裂過程』、六ヶ所村関連の講演(菊川慶子、鎌田慧、鎌仲ひとみ)
金城実+鎌田慧+辛淑玉+石川文洋「差別の構造―沖縄という現場」


スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』

2013-06-15 01:17:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(WATT、2011年録音)を聴く。

Chris Cheek (ts)
Steve Cardenas (g)
Carla Bley (org)
Steve Swallow (b)
Jorge Rossy (ds)

作曲はすべてスワロウによる。官能的で、甘酸っぱいような旋律が続く。明らかにスワロウの個性である。

スワロウとカーラ・ブレイによるデュオのライヴ映像を持っているのだが、他人が視てはいけない愛の交歓の私的空間のようだった。ここでもカーラ・ブレイはオルガンで参加。その格好よさとスワロウとの相性のよさといったらない。

ホルヘ・ロッシの才気煥発なドラミングもまた聴きどころ満載。

1時間、憑依されたように堪能し、それを繰り返す。愛あり、哀しみあり、悦びあり。曲も演奏もすべてが本当に素晴らしい。時に内的な盛り上がりを覚え、涙が出そうになる。聴いてよかった。大推薦の1枚。

●参照
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ