翌朝、佐田浜の「鳥羽マリンターミナル」へと車を走らせ、近くの駐車場に車を停めて、付近を歩いてみることにしました。
「鳥羽駅西駐車場」というのがあり、駐車料金が「鳥羽マリンターミナル」付近の駐車場よりも安いということを知り、地下道を潜って、鳥羽駅の向こう側(西側)に見えた白い大きな鳥居の下を通過して、鳥羽駅の西側へと向かいました。
この大きな鳥居に近付いた時、その柱面に金属製の銘板が埋め込まれており、それを何気なく見てみると、「昭和三十三年八月竣工 奉納者 浦賀船渠株式会社 扁額揮毫 浦賀船渠株式会社 社長多賀寛謹書」と刻まれていました。
奉納者が「浦賀船渠株式会社」というのが面白い。
「浦賀」というのは、おそらく神奈川県の三浦半島の浦賀であると思われる。その浦賀の「浦賀船渠株式会社」がこの大きなコンクリート製の鳥居をここに奉納しているというのです。
「浦賀」と「鳥羽」の深いつながりの歴史を知る思いがしました。
そこからしばらく歩くと、目指す「鳥羽駅西駐車場」はすぐに見つかりました。
その手前に左手の山へと入って行く細い道があり、その道の入口のところに「案内板」があり、「廣楽園(展望広場)」・「松尾芭蕉の句碑」・「日和山方位石」・「無線電話発祥記念碑」についてのそれぞれの説明が付されていました。
「松尾芭蕉の句碑」に刻まれているのは、芭蕉が伊良湖岬で詠んだ「鷹一つ見つけてうれし伊良子崎」であるとのこと。
「方位石」は、山頂見晴台の中央にあり、八角形で、高さ65cm、直径49cm。上面に十二干の文字が刻まれ、鳥羽が風待ち港、避難港として栄えてきた往時を偲ばせているとのこと。また全国最初に方位石が設置されたのは、鳥羽の日和山といわれているが、現在のものは2代目で、先代の方位石は享保年間(1716~34)に作られたものと伝えれれている、とも記されていました。
この鳥羽の日和山の方位石は、「北前船」関係の本の写真で見たことがあり、神島行きの船の出る時刻にはまだ間があることもあって、日和山山頂へと続くその山道へと入ってみることにしました。
細い舗装道路を道なりに登り、舗装道路が尽きたところから山道を案内標示に従って入って行くと、展望広場があり、そこから鳥羽湾や伊勢湾、三河湾、それらに散在する島々、太平洋などを見晴るかすことができました。
広場には「鳥羽展望案内」図があり、それぞれの島の名前や半島などの名前を知ることができました。
神島の向こうに伊良湖水道があり、その向こうに渥美半島があります。
その渥美半島の向こうに聳えるのは雪をかぶった富士山。
天気がよく、空気が澄みきっていれば、鳥羽の日和山山頂からは、答志島と神島の間に渥美半島(伊良湖岬)が見え、その奥に富士山が見えることになります。
渥美半島の右側は、海上交通の難所である遠州灘が広がっています。
この案内図を見てみると、鳥羽と神島、渥美半島、遠州灘、富士山の位置合いがよくわかり、神島や富士山の航行上の目印としての重要性をあらためて認識することができます。
遠くに見える富士山の向こうが江戸であり、その向こう(左手奥)が東北地方や蝦夷地(北海道)ということになります。
江戸湾へと入って行く入口にあたるところにあるのが、伊豆半島の先端近くにある下田湊であり、また三浦半島にある海の関所である浦賀湊。
まわりが島々で囲まれている鳥羽湊の、風待ち港、避難湊としての立地の良さも、この案内図から理解することができました。
あいにく目を凝らしてみても、神島や伊良湖岬は見ることができましたが、その奥にみえるはずの富士山は見ることができませんでした。
年間を通しても、富士山が見える日は数えるほどしかないのでしょう。
眺望を楽しんだ後、付近の「廣楽園」碑、「皇太子殿下御臺臨記念碑」(大正4年)などを見てから、方位石のあるという日和山山頂の見晴台へと向かいました。
途中、「鳥羽主水(もんど)の砦(とりで)跡」という案内板があり、このあたり一帯が鳥羽氏が館(やかた)を構えていた本曲輪(くるわがあったことを知りました。
「日和山の方位石」は、先の展望台とは別の頂きにあり、読み難くなっていますが、広場手前に方位石の案内板も立っていました。
その案内板によると、船乗りが明日の天気を見るためにこの日和山に登ったと伝えられているとのこと。
またこの方位石はよく研磨された本場神戸の御影石で、八角柱の上に円形の方位盤を乗せた形をしており、「文政五年壬午二月 石工平吉」「摂州灘 樽廻船中」とも刻まれているという。
さらに八角十二支の形のものは全国的にも珍しく、その大きさも類がない、とも記されていました。
見晴台の中央にあるその方位石に近寄ってみると、御影石の方位盤上には十二支と矢印が鮮やかに刻まれていました。
続く
〇参考文献
・『渡辺崋山集 第2巻』(日本図書センター)
・「近代デジタルライブラリー 参海雑志」
・『東京風俗志 上巻』平出鏗二郎(ちくま学芸文庫/筑摩書房)
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