昨年冬の津波被災地の取材旅行は、岩沼市相野釜(仙台空港の東側)から始まり、そこから閖上(ゆりあげ)・荒浜・東松島・石巻・南三陸町を経て気仙沼まで北上しました。これで茨城県北茨城市大津港から始まった津波被災地の取材旅行は、福島県の放射能汚染地で立ち入ることができなかったところを除いて、茨城県・福島県・宮城県の太平洋沿岸(もちろんすべてではない)を車で走ったことになりますが、岩手県の三陸海岸については、まだ足を踏み入れてはいませんでした。今回は3泊4日で、冬の取材旅行で最後に訪ねた気仙沼から三陸海岸を北上し、できれば八戸あたりまで行けたらと考えました。途中宮古で1泊し、2日間で、気仙沼・陸前高田・大船渡・釜石・大槌・山田・田老・田野畑・久慈・種差海岸などを訪ねる計画でした。いずれのところも、先の東日本大震災で巨大津波による深刻な被害を受けたところであり、新聞やテレビ等の報道で、それぞれの地名は脳裡に刻まれたところです。ホテルで未明に読む本として携行したのは、『文藝春秋』(平成23年9月臨時増刊号)「吉村昭が伝えたかったこと」でした。その巻頭の写真の中に「田野畑」があり、そこにおける吉村昭さんの取材が『海の壁』(『三陸海岸大津波』)に結実していくことを知りました。またそこは、毎夏、吉村家が家族旅行をする行き先であったことも知りました。吉村昭さんの本格的な作家活動が始まる原点とも言うべき場所であり、その田野畑の島ノ越(しまのこし)も是非訪ねてみようと思いました。以下、その報告です。 . . . 本文を読む