川勝平太が下回ったら安全と言ってはやまない今話題の食品における放射性物質の暫定規制値ですが、以下の事実から
暫定規制値は「安全」を保証するための値ではありません。
・国際放射線防護委員会(ICRP)が設定した一般人の許容被曝線量年間1ミリシーベルトは「これ以下に抑えた方が安全であるという予防的な数値である」としていること。
・年間1ミリシーベルトは、「一般の人びとは年間10万人に1人から100万人に一人程度の市のリスクは社会的に容認しているものだということを前提としている」こと。
・ICRPの放射線防護基準は、「放射線防護の主たる目的は、放射線被ばくを生ずる有益な行為を不当に制限することなく、人に対する適切な防護基準を作成することである」として「正当化の原則」(被曝に見合うメリットの要求)、「最適化の原則」(被曝量は経済的・社会的要因を考慮に入れて合理的にできうる限り低く保たなければならない)、「線量限度遵守の原則」(第1、第2の原則を満たしてもICRPが勧告する線量限度を超えてはならない)との3原則に基づき勧告が行われていること。
・ICRPは確率的影響(発がんや遺伝的影響)に関しては「しきい値はない」としていること。(しきい値:放射線影響について安全と危険を分ける境界値)
・ICRPの勧告する線量限度は「メカニズムの違う内部被曝と外部被曝と同等に扱」って計算され設定されていること。
この最後の部分は特に重要なので解説するが、ICRPは外部被曝と内部被曝を合わせた被曝線量の全体量に着目しているということである。
しかし、体の全体が均一に1ミリシーベルト被曝するのと、特定の臓器に長時間にわたって蓄積・濃縮される人工放射性元素がその蓄積付近の細胞だけを長期にわたって1ミリシーベルト被曝させるのとでは意味が違う。
また、牛の脳抽出脂質で実験して証明されたペトカウ効果と呼ばれる「長時間、低線量放射線を照射する方が、高線量放射線を瞬間放射するよりたやすく細胞膜を破壊(遺伝子を破壊)することができる」との事実を考えれば、低線量でも安全とは言えない。
・静岡県が安全と主張する根拠となっている我が国の暫定規制値(セシウム)は「食品全体の摂取で5ミリシーベルトを超えない」「①飲料水、②牛乳・乳製品、③野菜、④穀類、⑤その他の各カテゴリーごと1ミリシーベルトを超えない」とするものであって、さらにこの根拠としているのはWHOの1988年現在の食品の規制に関する介入レベルについての見解であること。
・1989年4月にICRPの勧告を受けてわが国でも一般人の年間許容被曝線量が5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに切り下げられたが、食品の規制値は据え置かれたこと。
・欧州放射線リスク委員会(ECRR)は内部被曝の許容量を「ゼロ以外安全ではない」としていること。
つまり、食品についての
暫定規制値とは、経済合理性を考慮して設定されたリスク受忍限度量というべきものであって、安全を保証するものではなく、放射線内部被曝についてはできうる限り少ない方がよいというのが両国際機関の一致した見解であり、私もそのように考えます。
行政が全食品種について一定量の調査をし公表しない限り自己管理にも限界があります。
被曝の影響は個人差がありますので、特に幼児や妊娠中の方はより注意する必要があるでしょうが、それでもこの状況下ではある程度の被曝は避けられないでしょう。経済合理性が生命に優先するのがこの国の現状です。残念です。
また、レントゲン写真を引き合いに出す詭弁が横行していますが、これが外部被曝であることに加え、妊娠中の方や乳幼児にはよほどのことがなければ行わないことからも、決して安全なものではありません。あくまで病気の診断の有用性が勝るがゆえに行われるものであることに留意してください。
以上(「」書きが引用部)の出典書籍
・内部被曝の脅威(肥田舜太郎、鎌仲ひとみ;ちくま新書)
・食卓にあがった放射能(高木仁三郎、渡辺美紀子;七つ森書館)
・家族で語る食卓の放射能汚染(安斎育郎;同時代社)
・世界一わかりやすい放射能の本当の話(別冊宝島編集部編;宝島社)
なお、自然放射線(カリウム40など)と人口放射線(セシウム137など)との相違や、ホルミシス効果(ラドンの効用)のデータ不足などについて興味のある方は上記参考書などをお読みください。
参考再掲:
http://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/791.html
ドイツ放射線防護協会の提言では、
内部被ばくについて「乳児、子ども、青少年に対しては、
1kg あたり4Bq 以上の基準核種セシウム137 を含む飲食物を与えないよう推奨されるべきである。成人は、
1kg あたり8Bq 以上の基準核種セシウム137 を含む飲食物を摂取しないことが推奨される」