今日の毎日新聞の「富士見の祭典 知事、効果の検証表明 「どうやって…」戸惑う職員」という見出しの記事。
川勝が県議会で県議の質問を受け富士見の祭典の「コストベネフィットにおける費用効果、費用対効果があったかということについてもいずれ報告を」と答弁してしまったことについての記事であるが、この答弁からはっきり分かるのは川勝平太はコストベネフィットアナリシス(CBA)と経済波及効果が全く別物であるということを知らないという事実である。
まして、コストエフェクティブアナリシス(CEA)との違いもちんぷんかんぷんに違いない。
一方の役人(職員)はもちろんその違いを知っているので見出しのような戸惑いが生じる結果となったということである。
川勝は答弁の中で、
ツインメッセで行われた食の祭典の延べ来場者37,000人を引き合いに出し「1人が1,000円使えば3,700万円になる」として効果の例を示したが、これは経済波及効果における「効果」概念であってCBAにおける「便益」やCEAにおける「効果」とはならない。
具体例としては、静岡空港の開港前に県が発表した経済波及効果は開港初年度で556億円であるが、CBAにおける費用対効果(B/C)は国内線のみで投資額117,458百万円に対して便益計156,912百万円で1.34というものだ。(県による空港事業の費用対効果分析⇒
aircba.pdf)
ちなみに、費用と便益の均衡点は利用者にして86万人であるので、現在の静岡空港は63万人程度なので空港事業は費用に対して効果が無かった事業という評価となる。
そもそもCBAにおける便益(効果)とは社会的に実質的な厚生の利得をもたらす場合にのみ便益として計上できるのであって、しかも、その便益は将来にわたって予測されるものをすべて現在価値に割り引くという作業も必要となる。
経済波及効果では来場して1,000円の食事をしたら計上できる(
http://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/742.html)が、これはCBAでは利得とは認められないのである。
川勝の例でいえば、37,000人が1人1,000円使ってもそれは単なる消費であって生活の質の向上などの社会的厚生の利得が生じなければBCAでは効果ゼロとなるのである。
川勝は「心に訴えた効果」があるとも言っているが、どのようなものであれBCAにおいては、貨幣価値に換算しなければならない。そしてその測定には消費者余剰の概念が用いられる。
つまり、CBAの計算とはそれほど容易な作業ではないのである。
「県の担当者は「簡単ではない。どのような方法で調べられるのか検討したい」(毎日新聞)と、職員が戸惑うのも無理からぬことなのである。よほど手抜きをしなければ前添付の空港事業のような費用効果分析を一月や二月で出せるわけがない。
まあ、そうはいっても、要求する方が「もの知らず」なのだから、職員にあっては経済波及効果でも出して与えておけば、殿御満足であろう。
ただし、その場合の効果が費用を上回るのは当然だ。
税金で10万円のフルコース料理を10人に提供したら直接効果だけで100万円の消費が生じるからだ。経済波及効果では誰が出費したかは問われない。税金で出そうが効果に計上されるのである。
県民にとっては、まったく無駄な事務コストである。
愚かなリーダーを持つとコストがかかるのはどこも同じだが、
結局それが川勝県政のレベルに相応ということだ。