「県政オンブズマン静岡(静岡県庁の光と闇)~よりよき未来のために~」管理人のブログ

注)teacupブログから移転の2022年5月以前の投稿には、文字コードの違いから多くの文字化けがあります。

静岡県知事選にリニア水問題を引き継げる第3の候補(鈴木康友、大村慎一以外)を出す意味とは

2024-04-23 12:00:42 | 川勝後の静岡県政
大村慎一と鈴木康友の一騎討ちと見られた静岡県知事選にリニア水問題を引き継ぐ第3の候補が複数出てくる可能性が報じられている。
全県的な選挙であり、候補者が組織力を補う知名度や弁術を持っていなければ当選は困難だが、それでも出す意味とは何なのか。
それはもちろん、リニア の水問題である。

マスコミ報道の影響もあって多くの人(特に大井川流域外)に「田代ダム案」と呼ばれる水補填案でリニア 水問題は解決したと思われており、しかも大村慎一と鈴木康友両者とも水問題の本質に触れようともせずに「リニア推進」を口にしているからだ。

しかし「田代ダム案」はあくまで工事期間中の導水路からの流出分の補填案でしかなく、流域で懸念されている水問題の本質は、工事によってこれまでの水の流れが変わることによる工事後も永続的に失われることとなる水の県外流出への懸念である。

掘ってみなければわからない。これは事実である。
一方で、掘ってみて、水脈にぶち当たり一度水の流れが変わってしまったら、表流水とは違い、まして大深度となれば、水の流れは元には戻せず、覆水盆に帰らずの言葉どおり取り返しのつかない事態にもなりうる。これも事実である。

静岡県知事としてこのギャンブルをしても南アルプスの地下を通すのか、ルートを変えさせるのか。これが川勝が知事として本来なら真正面から問うべき問題であったが、現実は先日紹介したとおり、この問題をディールの材料とするため、まるで地中の構造を明らかにするCTやMRIをとれと言わんばかりのギャンブル性を排除するような無理な調査へと徐々にハードルを上げ続けてきたことから、水問題の本質がボヤけてしまっているのが現在だ。

このままリニア 推進の大村慎一と鈴木康友の一騎討ちとなればこの問題の本質が有耶無耶になっていくのは目に見えている。懸念される事態が起きても新知事はもちろん誰も責任を問われないだろう。

故に、この問題を新知事にも負担として引き継がせ、さらにはその次の知事選や未来の評価に生かすには、たとえ当選の目はなくとも、水問題を主張する第3の候補は必要不可欠なのである。

鈴木康友支援の鈴木修、川勝知事は本当に彼に従ってリニア を妨害していたのか(静岡県知事選挙)その5

2024-04-22 07:10:06 | 川勝後の静岡県政
「その1」から「その4」までを総括すれば、
1 川勝はリニア 推進だったが、水問題への懸念もあって松本を経由するルート変更を狙っていた。(説得材料として松本空港との連携があった)
2 品川と甲府間の整備が出来次第、部分開業を実現させ身延線経由での静岡県への誘客を狙っていた。
3 その際には、環境問題を持ち出しての「とおせんぼ」を盾に、静岡空港新駅をJRに飲ませ甲府から静岡空港までのルート連携実現を狙っていた。
4 水問題を除く環境問題については取引条件次第で妥協の余地を認めていた。
5 よって、辞任の際の「リニアが一段落」というのは自身の任期中の部分開業が潰えたというのが真意と考えるべき。

ということであり、結果的にリニア妨害と評価された今日の状況を招いた素因は、あくまで川勝らしいオリジナル構想なのである。鈴木修はそういう川勝を支持してのは事実であっても、鈴木修の指示でないことは明らかである。

よって、大村慎一、鈴木康友両候補が川勝の構想と手法を踏襲しないで推進というならば、川勝の後継などではもちろんなく本来の意味での静岡工区着工の推進という意味であって、その場合、環境問題に一定の配慮はしつつも、純粋に、流域県民にとって最も大きな水問題への懸念が本当に解消できるのか、それはどういう手順で、というところが新知事に求められる大きな課題(川勝による宿題)となってくるのである。


考察<リニア 問題から見た川勝平太と新知事選について>

川勝は彼自身の考えに基づいて結果として「リニアを妨害」してきたのであって、鈴木修の指示に従ってのものでないことは既に述べたとおりである。

ではリニア建設を促進する期成同盟会に加入するに当たって現行ルートでの整備を前提としルート変更の議論を先導しないとの約束は何だったのか。
「1期4年」で紹介したが彼は知事選初出馬表明前に「「まったく出馬する意思はありません。100%ですね。お断りの文書をしたためたい。」と述べていたにもかかわらず、出馬したことから分かるように嘘に罪悪感を持っていない。
沼津の貨物駅用地買収に当たって、「「将を射んとすれば、まずその馬を射よ」だ」などと述べ地権者の息子をターゲットにしたように、彼にとっては嘘は目的の為の手段として「噓も方便」とばかり十分許容なのである。

また、一連の川勝構想(部分開業論等)が生まれた素因についても言及しておこう。
かつて元知事の山本敬三郎氏と私とで伊豆高原の氏の書斎で静岡空港問題と知事選について打ちあわせた際、氏は全国の空港の位置などがプロットされた地図などを部屋中に広げ現位置での静岡空港の条件的な不利を指摘した上で将来の東海地震に備えた復興資金などの財政問題も絡めて空港不要論を説いていたことを思い出す。私は理系(原子物理学専攻)の人間であり、空港問題に際しても需要予測などの数字で反対論を持っていたが、同じ不要の結論であっても氏の視点は具体的数字は使わない地政学的視点からの直感的ともいえる理由が柱であったがそれでも十分説得力を持って語られた。
想像であるが、川勝もまたそのような地政学的視点から静岡県にとってと望ましいものはこれだと覚知して部分開業や周遊ルートの構想を得たのだろう(*実現の可否は別にしてこの視座は評価したい)。ただしこれは、一方でリニア を国の利益として進める勢力や整備で利益を得る勢力とは必然、衝突を招く。それも含めて戦略を再構築すべきであったが、何よりも自分の知性に絶対の自信を持つ川勝らしく独りよがりに走ってしまったのが今日の結果を招いたのであって、真の政治家として最後まで脱皮できなかったのは実に残念である。

そもそもリニア事業は賛成か反対かなどという問いで片付けられるような単純なものではない。また、静岡県にとっても環境や水のリスク管理だけを考えれば良いというものでもない。人の流れや企業立地の動向を想像して県勢へのプラスマイナスにどう対応していくかを含めて県としての戦略を打ち出していくべきだ。
静岡県のリーダーとして持つべき視座は県内の個別の問題に対してイエスかノーを判断して済ませるのではなく、より大局的に静岡県として周辺の地域の変化をも踏まえた地政学的視点で柔軟さももった構想を持ち、かつ、それが独善的ではないことが要諦なのである。

物事の見方には二通りある。物事を存在と捉えるか現象と捉えるかである。
水面に広がる波紋は存在か現象か。一般に現象と捉える所以は我々人間が持つ認識の時間軸の長さとの関係に過ぎない。宏大な宇宙の時間軸から見れば我々自体も存在ではなくほとんど意識されないほどの一時の現象でしかない。
政治や行政が目指す未来も存在と捉えれば目指すべきものは必然、固定的なものとなる。リニア開業時をイメージして絵を描き、そこに向かって今現在の時をも犠牲にして執着する。
リニア全線開業を固定的な目標と捉えるのか、一時の現象と捉えるのかでアプローチの仕方は全く変わってくる。
どこまで未来のために今現在を犠牲にするかだ。
これは時流中でのの柔軟性の有無の違いにも関わる。
特に政治家は自身の今のための未来を行政に語らせ、行政はその未来を今現在より価値あるものであるが如く振る舞い国民に押し付ける。
一度決めたら立ち止まれないといわれる日本の行政。リニアだけでなく浜松新野球場なども含め、このままで惰性のまま進めて良いのか否かを各々考える機会に、今回の知事選がなればと切に思う。

<参考>
川勝の人となりについては、
「これは、タクティクス(tactics:戦術、術策)なんです。そのところが、余り表に出ると卑しくなるが。基本的に大義名分がないといけない。」という発言から垣間見れる過剰な自信とパターナリスティックな上から目線については、

目的重視で手段を軽視する実例については、
なども一読いただきたい。

鈴木康友支援の鈴木修、川勝知事は本当に彼に従ってリニア を妨害していたのか(静岡県知事選挙)その4

2024-04-21 16:25:05 | 川勝後の静岡県政
今回は初回で紹介したリニア 松本ルート案への執着と、リニア 「とおせんぼ」で得たかった一番のものが空港新駅であったことについてである。

初回で紹介した川勝の「リニア中央新幹線は、私は甲府以西はぐるっと北を回って松本空港の下に作るのがベストだと思っている。長野は空港とリニア、静岡は空港と新幹線で結ぶというのが落としどころ」との発言は単なる思いつきの結果などではない。さらに以前からの彼の持論であることが以下から分かるだろう。

「JRには「静岡県がJRを応援している」という姿勢を見せることが大事。空港新駅、リニア工事のための畑薙までの道路建設、富士山5合目までの登山鉄道など、JRの協力を得なければいけない重要なことがたくさんある。
私はリニアは、日本のためには、松本を通った方がいいと思っている。松本空港の近くを通って、空港とリニアが一体となった方がいい。松本空港の真下はリニアで、静岡空港の真下は新幹線です。松本を周っても、10分くらいの違いです。(リニアの工事は)何があるか分からない。水とエコパークと2つで攻めるのが一番、説得力がある。
「リニアに対しては、環境評価の根拠になる。リニアには賛成ですが、南アルプスを通るルートには反対です。中山道のルートは通しやすい。元々は、リニアは松本を通る予定だった。松本空港の近くを通れば、空港にもすぐに出られる。フォッサマグナは年間4mm隆起している。そこを通すとは(JR東海も)大変な冒険をしている。」
ルートは水脈に影響のない松本の下を通るルートが妥当であると思う。
「南アルプスも(エコパークに)登録される前と後では、条件が違うはずだ。通過県1県につき、1駅造ると言っていたはずだが、うちの県はどうなっているのかと。コメントに書いてください。(リニアの駅を)造る予定が無いのならば、元々、静岡県を通る予定は無かったのではないか。コメントはこれでもいいが、具体性に欠ける。こちらに駅(新幹線新駅)を造ってもらうために、相手に手ごわいと思わせる。(リニアの)駅の話はこちら(新幹線新駅)を狙っている。ちょっと踏み込んで書いてください。」
以上、知事協議で幹部職員らに述べた言葉。

このように、川勝は、水(水脈)への危惧を抱きながら松本ルートへの変更と環境問題を利用しての空港新駅獲得の意図を幹部職員らに繰り返し説いてきていたのである。
あわよくばさらにもう一つの新駅(「その3」で紹介)や鉄道網の整備、道路建設や登山鉄道への協力も含めて。

鈴木康友支援の鈴木修、川勝知事は本当に彼に従ってリニア を妨害していたのか(静岡県知事選挙)その3

2024-04-20 12:02:35 | 川勝後の静岡県政
前回の「その2」のつづきで、今回は、川勝が抱いていたリニア部分開業の狙いと一連の具体的構想を紹介しておく。

それは、
まずは(当初はオリンピックの2020年、その後はJR自身が開業を明言する2027年)リニアの品川と甲府間を開業。それと併せて、新幹線の静岡空港新駅を整備。
首都圏の品川からリニアで甲府、甲府から身延線で富士駅、新富士駅から新幹線で静岡空港新駅、静岡空港から国内・国外各地へ。
リニアに乗ってみたい国内外の人々をターゲットに、山梨県内(特に甲府市内)静岡県内(特に富士市内)を回遊できる観光ルートを確立することである。
また、その後のリニア全線開業時には甲府も通過点となり、リニア の独占的ルートの優位性はなくなるので、回遊のネックとなる富士駅、新富士駅間の接続を解消するとともに山梨から静岡空港へのアクセス向上のため身延線を延伸しJR在来線と新幹線が交差する田子の浦近くに新たに新幹線新駅(富士市内新駅)を作らせる。
というものである。
静岡県内に2つも新駅を要求なんて無茶振りだろうと普通の人なら思うところだが、そこは川勝。
JRにもメリットがあり静岡県や山梨県にもメリットがあるという信念、その構想を皆分かってくれるだろうという自信、何よりも、環境問題を解決させなければリニアは通さないと言えばJRもディールに応じるだろうという願望、その導線上で行動したあげくの、世間で言う「リニア妨害」、という今般の状況だったのである。

川勝も多選や年齢を考えればせいぜいあと一期。その意味では、ただでさえ神奈川県の用地取得の遅れなど気になっていたところに、リニア 山梨県駅(甲府駅)が早くても2031年という事実を事前に知らされたなら、彼の気力が失せたのも当然なのである。

次回「その4」では松本ルートと空港新駅への執着について触れ、「その5」では次の知事候補の選択への参考としてリニア 問題から見た川勝平太について総括する。

以下に川勝部分開業論の証拠を示しておく。
平成25年11月28日(木) 14:50~15:45 知事協議記録
川勝知事
下山文化・観光部長、宇佐美部長代理、加藤理事、塚本交流企画局長、ほか
吉林戦略監、金指
<御殿場線・身延線に関する市町のJRへの要望と対応>
(下山部長):別添のとおり、沿線市町からJRに要望しているが、利用者数が伸びてないため、当然のことながら冷たい回答である。
(知事):これらの路線は儲からないから、JRは運営を止めたらどうかという流れに持っていけないか。葛西さん(JR東海会長)の専制的な経営に、矢野さん(中日本高速道路の前会長)も怒っていたので、相談にのってもらったらいい。
(塚本局長):赤字であることを強調し、ストーリーを考える。
(知事):身延線~新富士駅の延伸と、甲府駅~リニア山梨県駅(約8キロ)の両方進めてください。山梨県とも相談して。ただ、新富士駅の改築にそんなにお金をかけるつもりはない。
<富士市内の新幹線・在来線の接続検討>
(下山部長):接続のために設ける新駅は、のぞみ・ひかりのダイヤに影響がないよう、2面4線のホームにする必要がある。ホームのスペースを確保するためには、すぐ隣を走る国道1号バイパスか新幹線線路のどちらかを付け替えなければならず、工事費が多額になる。
(知事):2027年にリニアが開通した時に新駅できていればいいので、新幹線ホームは2線でいい。のぞみが無くなって、ひかり・こだまだけになれば、静岡県内の新幹線8駅(熱海、三島、富士市内新駅、新富士駅、静岡、空港新駅、掛川、浜松)のうち、3駅(熱海、富士市内新駅空港新駅)で追い越しができなくても、十分ダイヤは組めるはず。

平成26年3月28日(金)9:32~9:42 知事協議記録
川勝知事
下山文化・観光部長、塚本企画交流局長、植田観光政策課長、京極文化政策課長、宮崎交通政策課長
吉林戦略監、金指
<ふじのくに総合交通計画の策定>
(下山部長):道路等の劇的な変化(東西だけではなく、中部横断自動車道など南北のネットワークも強化されたこと等)を受け、内容を見直した。
(知事):
リニアは品川~甲府間が2020年までに開通すればいい。更に進めたければ、大阪側からの工事を先に始めればよい。静岡県内は(環境の問題が解決するまでは)通らせないというつもりで。その間によく勉強してください。
・リニアのルートは早急に決めすぎたし、意思決定の過程にも疑問がある。
まずは、リニア(甲府)~身延線(甲府→富士)~新幹線(新富士→空港)~富士山静岡空港のルートを確立します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

鈴木康友支援の鈴木修、川勝知事は本当に彼に従ってリニア を妨害していたのか(静岡県知事選挙)その2

2024-04-19 12:00:00 | 川勝後の静岡県政
先日のその1で<川勝はリニア 推進だったが別ルートに固執があった><環境問題は軽視はしていないがディール対象でもあった>ことを紹介したが、今日は川勝のリニア部分開業論(先日の論点b)について紹介したい。
これについては、平成26年当時には対外的にも臆面なく述べていた持論である。

実際、平成26年9月22日午前に静岡銀行内で行われた産業情報懇談会において、以下のとおり述べている。
<抜粋>
川勝知事:「その境界の辺りね。例えば、身延南部町は生活圏がほとんど静岡、早沢町ね、町長さんが何としても川勝と話がしたいと来てくれと、不便でしょ。こっちに向いているんですよ。この前、雪に閉じ込められたときこっちが助けに行っていますけど、山梨県庁は助けてもらう側だった。
境界のところはどっちにつくかと、こっちでもあっちでもどちらでもいいという道を作りますから。身延線の沿線上は3年以内に高規格道路に。おそらく2020年までに。私は、推進しているんですが、品川甲府間のリニア新幹線はそこだけを作ればいいと。オリンピックに来られた方々を乗せて、10分で森のビルからほんとの緑の森を見られるのだから。富士山と南アルプスと八ヶ岳、自然とに囲まれた、素晴らしい景観がみられる。2020年までに富士山空港駅を作りますから。幹線道路は甲府と清水、物流拠点はそこを通りますから。佐久、甲府がつながり、佐久まで行くと、新潟港と半分半分になるかもしれないが、長野県南部辺りが視野に入ってきた。私は、とりあえず物流拠点がどのあたりにできるのか、金融機関とあわせて考えていかんと。」

ここには、県の副知事3名(大須賀副知事、難波副知事、髙副知事)はもちろん、
静岡銀行側から、中西頭取、後藤副頭取、一杉専務、柴田常務、大石本店営業部長、中村法人部長、有海企業サポート部調査グループ長、大石㈶静岡経済研究所常務理事らが出席しており、これを彼らが真に受けたかはともかく、川勝という人物を知っていれば県政財界においては川勝の部分開業論は十分認識可能だった事実なのである。
つまり、最近になってこの持論に批判を受けるに至った川勝にとってみれば、今更なぜと映っても不思議ではないのである。

では、この部分開業論、その狙いと、より具体的構想とはいかなるものか、これについては次回「その3」で紹介したい。