「県政オンブズマン静岡(静岡県庁の光と闇)~よりよき未来のために~」管理人のブログ

注)teacupブログから移転の2022年5月以前の投稿には、文字コードの違いから多くの文字化けがあります。

闇事業のスマートデバイス活用情報共有事業にみる県行政の幼稚化の現状

2014-07-27 19:54:00 | 近況活動報告
6月3日に予告のとおり、県事業の企画の手本にして主導すべき資質が求められる企画調整部幹部らが、議会の審議を経ずして独自に取り組んだ部局調整費(=公文書開示請求によらなければ使途が見えない闇経費)を使った「スマートデバイス活用情報共有事業」について、その成果の公文書が公開されたので紹介する。

まず、この事業について振り返ると、その趣獅ヘ、
「スマートデバイスを使って従来のワークスタイルを革新するため、タブレット端末を企画広報部幹部に配布し、実証実験を行う。」(http://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/914.html)というもので、
平成24年度末の3月に駆け込み予算消化のように県幹部ら13名にiPad(LTE仕様やRetinaモデル)を配布し、以下の画像のとおりペーパーレス会議などの実証実験を行い、各部の幹部職員に利用を呼びかけ活用推進を図ろうというものである。


そして以下の画像が、その取組の実績である。






県が示した実証実験に係る具体的検証内容は、「いつでも、どこでも情報へのアクセス(iPadを使い、いつでも、ケーブルの制約を受けること無くインターネットへ接続)」などわずか4項目で、いずれも実証実験など行わずとも答えが容易に推測できるものばかり。
ペーパーレス会議の検証に至ってはわずか2つの会議で使ったのみで、その検証効果の記述中には、「用紙が不要になり経費削減及び省力化が図られた」とあるものの、鰍ッた費用に対してどれだけの効果があったのかという肝心な効果測定すら出来ておらず、「カラーの資料が表示されるため、分かりやすかった」などと、小学生の感想レベルの効果で満足しているのである。
小中学校の夏休みの自由研究レベルとしても劣る内容だ。
さらに利用者アンケートを見ると、コメントするまでもなくその利活用の失敗及び検証の不十分さがよく見て取れる。
まさに、これら幹部らへのiPad配布は猫に小判、豚に真珠の様相である。

この事業の金額(直接費用のみ)としては80万円程度と大きいものではないが、一事が万事、副知事以下の幹部らで行われた事業であることからしても、静岡県で経営管理の手法として取り組んでいるとされる計画、実行、評価、改善のPDCAサイクルが、如何に建前でしかないか、実態がないものかが分かるだろう。
事業の額の大小は身銭を切らない公務員にとっては大きなことではない。
まして、小さな事業さえまともに完結できない幹部らに県行政という大きな舵取りが手に負えるはずがない。
愚鈍な指導者らに導かれていては八甲田雪中行軍のように迷走(徒労)したあげく絶望(無成果)に至るのは必然というべきである。
事実、その他多くの主要事業にあってもまたこの体たらくにして、県勢は衰退し続けているのであるから。
彼らは自覚していないが、生活習慣病のように組織の病理は既に深刻な状況にあるといえる。

<資料>
実績報告.pdf
(今回実績報告に併せて今後の方針なるものが添付されていたが、これを策定するにこの実証実験が必要不可欠なものであったかは大いに疑問のある内容となっている。むしろ、幹部に配布するのではなく現場に配布して実験した方がまだましではなかったか。)
今後の方針.pdf

くらし・環境部による補助金交付、事実のすり替えや虚偽の疑い濃厚と、裁判で断罪さる

2014-07-25 22:22:00 | 雑感
先週末18日の判決報道を3連休の中で見落としていたので、本日これを紹介し、記録しておく。

この事件であるが、平成23年に県くらし・環境部が国の要領に基づいて「ふじのくに里山コミッション」という団体に補助金230万円を交付したことについて、静岡市内の弁護士らが、この団体には実体がなく、国の要領に定める補助金交付の要件を満たしていないとして県監査委員に住民監査請求を行ったところ、県の監査委員は国の要領に違反し不当ではあるが違法ではない、その不当も後に解消されているから補助金返還の必要はないと請求を棄却した事件である。

そして、監査請求した弁護士らがこれを不服として住民訴訟を行った第一審判決(静岡地裁)がこの18日、原告の主張を認め、県が知事に230万円の返還を請求するよう命じたのである。

何よりも、興味深い事実は、この判決で、
「補助金の申請時から交付に至るまで一貫して、事業の実施要領が定めた協議体の要件を満たしていないばかりか、実態を有していなかった」「(報告書の一部について)事実のすり替えを行った虚偽の疑いが濃厚」「違法な支出について故意又は過失があったと推認するほかない」などと県監査委員の下した結論を完全否定し、違法な補助金支出であるが故に返還が必要と断じたということである。
この判決を受け、原告の小川秀世弁護士は
「コミッションは、県職員が公金を自分たちのために使おうと作った。裁判所が明快な判断をしてくれた」(静岡新聞19日朝刊)
とコメントしたが、(実体がないという例は極端な例で違法であるが、)このマネーロンダリングとも言うべき手口というのは大きなものでは大規模イベント用に作った一時的な補助金受け皿団体などでは本県に限らずよく問題になる(長野オリンピック招致委員会の使途不明金問題など)ものである。
補助金という形で官製団体にお金が流れてしまえば、そこから先は県直接支出のように入札や出納審査などもなく事実上ブラックボックス化するからである。
そういう意味では、空港振興の目的で作られた富士山静岡空港利用促進協議会も同様で、税金が原資でありながらその具体的使途について文書開示請求すら出来ないのである。

違法な行為が組織内で横行し、職員は組織利益・組織防衛のためそれを取り繕うことが当たり前となり、本来そういう過ちをチェックし正しい道に導くべき監査委員までもがその悪事を助長するかのように取り繕いに加担し、もって、世間の常識からますます隔絶した組織となって職員の良心を蝕むという構図がこういう判決や幾多の不祥事から見て取れるのが今の静岡県である。

やはり、県民各位による監視強化は不可欠な処方箋であるということである。

県職員連続不祥事、沼津貨物駅移転問題、政務活動費など雑感

2014-07-21 23:08:00 | 雑感
最近ご無沙汰気味であるので、この一週間ばかりの間に起きたことについて以下に書き留めておきたい。

まず、昨週末に起きた私と同じ職場の所属ということになっている職員が起こしたのが、飲酒により箍を外し松崎町内のホテルにおいて器物損壊事件を起こした事件である。実はこの職員の名前を聞いても顔が浮かんでこないどころか、名前の記憶もない。どうも職場内にはおらず松崎町に派遣されている職員らしい。いわゆる市町との交流人事だが、人事上の籍は賀茂農林にあるのだろう。酒が下での事件は以前にも公然わいせつや暴行などの事件を職員が起こしているが、こればかりは私生活上のことであり県において完全抑止を極めるというのは難しかろう。
次に先週の中部県民生活センターでの職員が上司に対して、しらふの状態でピッケルで殴り鰍ゥった事件であるが、これは凶器を準備していたのであろうから、よほどたまりたまったものが爆発したというところだろう。これは上司に備えておくべき能力があれば十分防げたもので、どちらにも問題ありの事例であろう。
そして、いずれの事件においても、一応は県職員であり、社会人としての知的能力においての問題ではなく、感情の問題というか自制能力というか、要するに気分、刺激感受性、精神活動性、攻撃性に起因する気質の問題といった方が適切であろう。

この気質の問題として昨日来報道されているのが沼津駅付近鉄道高架化事業の原地区への貨物駅移転問題に見る静岡県知事川勝平太の豹変の兆候である。
報道によると、知事は貨物駅の原地区移転を前提に、東海道線をまたぐ歩道橋を造り、津波など災害の避難場所にする案を提示した上で、20日に沼津市で開かれた総合コンベンション施設「プラサヴェルデ」のグランドオープン記念式典終了後に「決断をした」「秋に入った頃に全部の関係者に説明し終え、アクションを起こす」「私の腹は決まっている」と報道陣に述べたとのことである。

以前の記事(http://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/788.html)で、私は川勝の豹変を示唆していたが、どうやら彼のこの分野での知性では役人らの巧言に対抗できなかったようだ。なにしろ、費用対効果の効果と経済波及効果の効果とを混同している(http://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/769.htmlほどであるからさもありなん。

要は、彼は学者としては優秀かもしれないが、行政を司るには知性的に見ても未熟であり、気質的にはもっと問題があるようだ。
かつてのJALとの搭乗率保障の悶着を思い出してほしい。
はじめはJALの社長を持ち上げ親しさを強調し対話で解決できるかのように吹聴していたが、事態が好転せずに年を越し時ばかりが過ぎ、ついには年度末を迎え保証金を請求されるや払わない、裁判だと豹変した事件である。(結果的には一部減額されたものの裁判費用などを含めると県民負担が増えた)
この事件やこれまでの数々の問題発言・放言とその後の取り繕いなど後先考えない行動からして、彼には循環気質の傾向・問題が見られる。
おそらくは、今回の貨物駅移転のケースもこれに類似した道を歩むと見られる。つまりははじめは巧言令色で近づき意に添わせようとし、それでも自分の意に添わない者に対しては容易にかつ突如として強権的手法に転化すると見られるのである。


最後の話題としては兵庫県議の珍会見で世界的話題にもなった「政務活動費」の問題についてである。
現職である私としては本県の個々の議員や政党についてこの問題を追及することは中立性の確保の客観性という点において難しい問題があり、現在は取り組んでいない。ただし、興味はあるので職を離れた後には取り組めるよう学習は怠らないようにしていきたい。9月に開催される全国市民オンブズマン岩手大会ではこの政務活動費が大きく取り上げられるようであるので楽しみである。
マスコミでは兵庫県議の事件を受けてからようやく政務調査費が政務活動費になった問題に注目するようになったが、全国市民オンブズマンでは既に昨年の大会においてこの問題を指摘しており(http://navy.ap.teacup.com/hikaritoyami/944.html、改悪への社会的無関心が問題の芽を生んだという好事例であろう。

本県の政務活動費には触れにくいとはいえ、何も示さずともいかないので、最後に県議会がホームページ上で公開している会派ごとの政務活動費の大まかな使途と返納額などを表にしたので以下に掲載しておく。もちろんこれについての私のコメントは抜きであるので、各位の所感に委ねたい。



静岡空港利用者の推移(開港6年目初月)~厚遇補助の中国チャーター便効果で過去3位に押し上げ~

2014-07-09 21:40:00 | 静岡空港
静岡空港利用者数(搭乗者数)の推移

(注)開港初年については月ごとの発表のなかった上海便各月推計データを加味した上で6か年を比較したグラフです。
以下、開港6年目の初月となる6月実績に基づき傾向を概観する。

<傾向等>
開港から6年目のスタートとなる6月実績は、国内線各路線とも過去の壁を越えられず、札幌線にあっては過去5位と振るわず総合でも過去6年中第5位の実績となった。
一方、国際線は定期便だけで比較すれば過去4位であるが、6月から始まった中国からの旅行者のための天津航空などのチャーター便が、人数にすればわずか6,720人ながら、静岡空港のような元々利用者の少ない空港においては対前年同月比にして47.9%も押し上げ国際線の対前年同月比は133.8%と飛躍した(チャーター便がなければ同85.9%)。
結果、トータルで見ても国際線のチャーター便が対前年同月比で19.2%の押し上げ効果をもたらし、対前年同月比113.3%と1割以上増加し、歴代(過去6年間で)第3位の実績となった。

路線ごとに見た過去6年間の6月実績のみで比較した順位と比率は以下のとおり。
札幌線6,317人   5位/過去6年(1位の平成21年11,631人に対して54.2%
福岡線8,340人  2位/過去6年(1位の平成21年11,385人に対して73.3%
鹿児島線1,390人  3位/過去6年(1位の平成23年2,137人に対して65.0%
沖縄線4,586人   3位/過去6年(1位の平成25年5,135人に対して89.3%
ソウル線4,687人 6位/過去6年(1位の平成22年15,725人に対して29.8%
上海線3,407人   1位/過去5年(2位の平成22年1,719人に対して198.2%
台湾線3,954人   2位/過去3年(1位の平成25年3,982人に対して99.3%
また、上記路線以外のチャーター便を含む総利用者は39,551人で過去5年間で第3位、ピークの平成22年(41,518人)に比べて95.3%であった。

国内線と国際線の過去6年間の推移を見ると、


国内線は頭打ち、国際線はチャーター便(税金での優遇補助)効果が見て取れる。

ちなみに、国内線の内訳を見ると、


札幌、福岡は回復傾向は見られるものの初年の壁を超えるにまだ遠く、他の2路線にあっては既に需要の限界が見られる。

国際線にあっては、大韓航空の撤退でソウル線の利用者数がが対前年同月比で半減したものの、残ったアシアナ航空の搭乗率は6.5%も向上し67.6%とまずまずの数字となった。上海線は過去6年間で6月としては最高の利用者数である3,407人を記録したものの、搭乗率は57.0%と低迷し、補助金による路線維持の状態である。
台湾路線は3年目に入ったが、近隣競合の羽田や中部国際空港の好調もあって静岡空港では昨年同月を下回り、早くも伸びの鈍化が懸念される状況となった。
そのような中、おそらく補助金の手厚さが魅力的で就航したと思われる天津航空の中国人向けチャーター便である。
このチャーター便は日本を訪問する中国人旅行者が利用するもので、180席の小型機を使用し、月、火、水、金、土曜の週5便で、運航期間は10月25日までの5か月間運行する。往路は天津午後2時50分発$テ岡5時30分着で帰路は静岡同6時30分発%V津9時40分着となっている。
県が「富士山静岡空港利用促進協議会」を迂回して天津航空に支払う定期便にはない特別な補助金は1便当たり100万円。片道1便と計算すれば180席が満席で運行しても1人1万円以上を中国人観光客に県民の税金から補助することとなる。
しかも、県は県民向けの発表では「搭乗者の主な観光先 京都、大阪、富士山周辺、東京など*最終日は静岡県内に宿泊予定」としているが、このツアーを中国のインターネットサイトで検索すると、最終日に静岡泊は見つからず、逆に初日の午後5時半静岡着後にそのまま空港近くで1泊し、翌日関西地方に移動・1泊し名古屋で1泊、静岡県内に宿泊せず富士山5合目に寄ってから箱根又は山梨で1泊、その後東京で1~2泊し最終日にお台場を観光してから静岡空港に移動し、そのまま午後6時半の便で帰国というパターンばかりであった。むしろ最終日1泊どころか、初日さえ静岡に泊まらず名古屋で1泊するパターンもあり、全行程で県内に1泊もせずというものもあった。
県の役人としては職務としてあてがわれた目標である利用者数という数字のアップだけが重要で、自分の金でない税金がどう使われようと興味ないのであろうが、これでは中国人から見たらよい鴨である。

いずれにしても、税金投入という空港の生命維持装置は一向に外せる気配すらないのが静岡空港である。

では以下、今月の実績を記す。
<平成26年6月の実績:対前年同月比>
路線:搭乗者数対前年同月比(H26.6/H25.6):搭乗率[H26.6;H25.6](赤文字は搭乗率が65%を下回っており、税金補助がなければ路線存続が疑問視されるもの)

札幌線:93.7%(6,317人/6,745人):[47.7%;52.1%]
福岡線:106.7%(8,340人/7,816人):[57.0%;58.3%]
沖縄線:89.3%(4,587人/5,135人):[45.7%;49.7%]
鹿児島線:117.5%(1,390人/1,183人):[69.5%;59.9%]
国内定期便計:98.8%(20,633人/20,879人):[51.7%;54.0%]

国内線チャーター便計:-%(150人/0人):[98.7%;-%]

国内線計:99.5%(20,783人/20,879人):[51.9%;54.0%]

ソウル線:50.3%(4,687人/9,325人):[67.6%;51.2%]
上海線:476.5%(3,407人/715人):[57.0%;26.9%]
台北線:99.3%(3,954人/3,982人):[73.6%;74.1%]
国際線定期便計:85.9%(12,048人/14,022人):[65.9%;53.4%]

国際線チャーター便計:-%(6,720人/-人):[94.2%;-%]

国際線計:133.8%(18,768人/14,022人):[73.9%;53.41%]

全路線計:113.3%(39,551人/34,901人):[60.4%;53.8%]

静岡空港県内経済波及効果(4年間)、積算根拠非開示のままで発表の欺瞞

2014-07-04 23:45:00 | 静岡空港
県は7月2日、県議会の文化観光委員会で静岡空港が開港してから4年間での県内経済波及効果を859.7億円と発表した。

既にお知らせのとおり、当方はこの数字を検証すべく、積算根拠などを公文書開示請求したが非開示の決定が出され、現在異議申立中である。(ただし、今回の公表結果を見ると、積算根拠を精査するまでもない代物であることがわかり、ある意味徒労であったこととなる。)

しかしながら、積算根拠自体は依然不明ながら、今回の報道等の資料などからも十分その過大ぶりが明らかにできるため、以下にその代表事例を明らかにし、県民理解の向上に資すこととする。

1 需要の移転を新規需要に含める欺瞞
総務省統計局では経済波及効果について、「波及効果は、「新規需要」の発生に伴い、直接・間接的に効果を受けた額を示す。」と定義している。
これはどういう意味かというと、
例えばA町とB町の間の川に1本の橋が架かっていたとして、年間10万人が往復しており、その橋によるB町の経済効果が10億円であったとする。
ここに2本目の橋が新設され、年間5万人が旧橋から新橋を使うようになったとする(=旧橋から新橋に2分の1の移転需要が生じた)。
すると、トータルの人数が変わらないため2本の橋によるB町の経済波及効果は10億円のままであり、橋ごとに計算した経済波及効果は旧橋、新橋、それぞれ5億円ずつとなる。
総務省の定義によれば、B町には新規需要が発生していないため、新橋による経済波及効果はゼロとなるが、静岡空港の経済波及効果の計算上は5億円となるのである。
本来は静岡空港がなくても静岡に来たり去ったりしたであろう人数を全利用者数から除いて純粋な「新規需要」を特定してから計算すべきを、年間40億円にも上る空港予算の無駄を糊塗するため、「移転需要」を含めて経済波及効果を計算しているのである。
この事実は、経済波及効果計算に、4年間の全利用者数の202万人を使用したと公表していることから明らかである。

2 税金での維持管理費なども経済波及効果に計上
経済波及効果にはフローの観点から見れば経済波及効果が発生していても、ストックの観点からは投入資金の無駄と評価されるものがある。
例えば、10億円かけて巨大な穴を掘って埋め戻した場合、14億円の経済波及効果が発生してもストックの観点から見れば何も変わっていない。
また、建物を壊して同じものを新築した場合も同様である。
お金は動き、すなわちフローの観点からは、経済波及効果は発生するが、社会的な財の増加、すなわちストックの観点からの経済的利益の増加はない場合がそれである。

県は今回の経済波及効果859.7億円の中に、空港関係事業費によるものとして78.8億円を算入している。
つまり、空港の維持管理費などの税金で行った消費も経済波及効果に含めているということである。
もちろん税金によるものであっても経済波及効果は発生するが、今回の経済波及効果の発表が、「空港が県内経済や県民の生活を支える重要な社会インフラだと示すこと」(高橋孝雄県空港政策課長)にあるのであれば、このようなストックの観点から無駄なものは経済波及効果に算入すべきではない。
これがまかりとおれば、無駄の象徴となった私の仕事館のような無駄な箱ものにあっても経済波及効果が大きいとして「空港が県内経済や県民の生活を支える重要な社会インフラだと示すこと」(高橋孝雄県空港政策課長)になってしまうからである。

2 国内線利用者の一人一往復当たりの県内経済波及効果が73643円
県は過去4年間のアウトバウンド・インバウンド別経済波及効果として、国内線のアウトバウンドと日本人のインバウンドの利用者数とその県内経済波及効果を明らかにしている。
これによれば、アウトバウンド日本人送客(国内)の人数は80.3万人、その県内経済波及効果は176.0億円となっている。すなわち、静岡から静岡空港国内線で出て行く日本人は1人当たり21918円の県内経済波及効果をもたらすということとなる。
また、インバウンド日本人が静岡空港に降り立つ人数は42.9万人、その県内経済波及効果は221.9億円となっており、静岡空港に降り立つ日本人は1人当たり51725円の県内経済波及効果をもたらすということとなる。
よって、日本人が静岡空港を往復で使った場合は1人73643円の県内経済波及効果を県内にもたらすと県は言っているのである。
さきにお知らせのとおり、県はこの計算根拠を非公開にしたため飲食費、宿泊費、土産代などのどの部分が過大なのかなど全く不明であるが、昨年公表された萩・石見空港の経済波及効果でインバウンドの島根県内での1人当たりの消費額22761円、アウトバウンド同6000円と比較すると過大は明らかである。
ちなみに、萩・石見空港の経済波及効果では、2012年度の利用者数71千人に対して、その経済波及効果は島根県で5億4200万円、山口県で2億7600万円、合わせても8億1800万円であり、一人一往復当たり23042円に過ぎないのである。


<総評>
県は空港建設時の費用便益分析において、便益が費用を上回る分岐点が開港初年度の利用者数86万人(次年度以降は右肩上がりが前提)であることを明らかにした。
つまり、この空港は既に費用便益分析、いわゆる費用対効果において費用を効果が下回る「失敗の事業」の産物であることは明らかな事実となっているのである。
しかし、県はこの事実を費用便益費ではなく、どれほど無駄遣いをしても遣っただけ大きくなる性質を持つ経済波及効果で失敗をごまかそうと企んだのである。
費用対効果でいう「効果」と経済波及効果の「効果」が全く別物であることを知っている人には全く通用しないのだが、県は大多数の県民は違いなど分からないと軽視しているのだ。
これは、経済波及効果の公表があった同じ7月2日の県議会厚生委員会のやり取りを見ればよくわかる。
県が5年後の合計特殊出生率の目標値を2(全国で最高値)としたことに対して、直近の率が1.53で前年からの上昇率が0.01の増に過ぎないことから、県議から「あまりに高すぎる」と指摘されたのに対して、堀内智子健康福祉部理事は「県民に分かりやすい数字として示した指標」と説明したという。
県民には少数以下を示し、理論的な数字を説明しても理解できないだろうということなのだろう。
あまりに、非科学的で、県民をばかにした話だ。

民間企業などが過大広告を行えば行政による取締の対象となるが、行政自体の過大広告・過大宣伝を取り締まる部署はない。
最近の政府の独断・暴走と同様、行政の側からすれば行政は民間企業が私益のために宣伝するのと違って公益のために活動しているのだから過大な広報や広告も許されるという意識があるのだろうが、どのような人でも組織でも過つものである。ゆえに、その不遜・傲慢は改められるべきである。


<参考類似記事>
「静岡県発表の新東名高速道路の開通効果の欺瞞」