goo blog サービス終了のお知らせ 

しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

夏への扉 ロバート・A・ハインライン著 福島正実訳 ハヤカワ文庫

2017-07-22 | 海外SF
12年ローカス誌オールタイムベスト61位、’06年SFマガジン海外ベスト3位、'14年SFマガジン海外ベスト9位、1957年発刊

‘12年ローカス誌オールタイムベスト59位の「ノヴァ」の流れで、60位の「ジュラシック・パーク」は既読のため本書を手に取りました。

「「夏への扉」の評価が高いのは日本だけだ!」というはなしもあるようですが….。
ローカス誌オールタイムベストでも61位に入っていますからアメリカでも評価の高い作品なのかとは思います。

日本では永らく海外SFのポピュラー中のポピュラーになっている作品です。
私も初めて本作を読んだ時(小学6~中学1年くらいだと思う)「こんなに面白い話が世の中にあったのか!!!」と衝撃を受けた記憶があります。

当時読んだもの



今でもamazonの書評など見ると「面白い!」と絶賛している人が多いので、設定や作中のテクノロジーが古くなっている部分はあるかとも思いますが、ひねくれた中年になって初読するのでなければ本作は大多数の人に素晴らしい読書体験を約束する作品ではないかと思います。
(少・青年期に本作を初読する人がうらやましい。)

ただ日本ではハインラインといえば本作しか読んだことのない人がけっこう多いのではないのでしょうか。

かくいう私もその口でこの福島正実訳「夏への扉」は初読以降、数えきれないほど読み返しており、社会人になってからも何回か読んでいたほど愛読していました。
(最近小尾芙佐訳の新訳がハヤカワから出ているようで少し気になったのですが..福島正実の旧訳版で読みました。ハヤカワも文庫はまだ旧訳で出しています。「夏への扉」ほどのド定番だと冒険しにくいんでしょうねぇ+故・福島正実氏への配慮?)

でも他ハインライン作品はこのブログを書き出して2013年に「宇宙の戦士」を読むまで完読したことがありませんでした。
(2005,6年くらいに短編集「時の門」を入手して前半の何篇かを読んだことは読みましたが短編集一冊完読できませんでした…「時の門」は広瀬正の「タイムマシンのつくり方」収載の「時の門を開く」を読んで以来永らく読みたかった作品でした。読んでみたら…「時の門を開く」の方が….。)

中学生時分「悪徳なんかこわくない」やら「愛に時間を」やらを図書館で借りて読もうとしたことはあるのですが、まっちょさと、アダルトすぎて(笑)おこちゃまにはハードルが高く「読了できず」というか数ページ以降進んだことがありませんでした。

「巨匠 ハインライン」と「夏への扉」とのギャップは激しい気がする…。
そういう意味では日本ではハインラインにとって罪な作品といえるのかもしれません。

ハインラインでも「大宇宙の少年」(入手済み-未読)とかジュブナイル寄りのものなら違和感なかったのかもしれませんが当時は手に入りにくかったような気がします。

このブログで感想書いている「ダブル・スター」はジュブナイル寄りかと思いますが結構マッチョ」でしたが…。
(なおコニー・ウィリスも少女時代「大宇宙の少年」を読んでSFに魅かれたというようなことをいっていたようです。)
少年時代に「夏への扉」で入った海外SFですが、ハインラインには行かず当時の私はアシモフのロボットものなどに熱中していた記憶があります。

今回昔読んだものはこれ以上痛むのもなので今回はブックオフで改めて購入

したもので読みました。

鋼鉄都市」などは当時「すげぇ」と思っていたのですが、最近読み返すと「・・・」だったので、今回かなり久しぶり(少なくとも15年くらいは読んでいない)の本作再読なのでびくびくしていたのですが….。
内容紹介(裏表紙記載)
ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。かれは、数多いドアのなかの、少なくともどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして1970年12月3日、かくいうぼくも夏への扉を探していた。あなたならどんな気持ちになるだろう? もし、最愛の恋人にはうらぎられ、仕事はとりあげられ生命から二番目に大切な発明さえも騙しとらてしまったとしたら・・・・・・。ぼくの心は12月の空同様に凍てついていたのだ!。そんな時ぼくの心をたらえたのは夜空にひときわ輝く<冷凍睡眠保険>のネオンサインだった! 巨匠ハインラインが描く感動の名作

いやー「夏への扉」おもしろいですね。

もったいないと思いながらも通勤中読み始めたら止まらず、家に帰ってからも夜更かしして一気に読んでしまいました。

本作の直前に読んだ「ノヴァ」とはある意味対極ですが、文学性やら意味論などを除いた「おもしろさ」「爽快さ」でとらえればSF界屈指の名作ではないでしょうか。

前に「発狂した宇宙」の感想で「本作と似た構造」と書いていて、今回もそれは感じましたが、「発狂した宇宙」が思いっきり「パロディ」で現実とSF的世界を痛烈にバカにし批判しているのに対し本作は作品世界も主人公も思いっきり前向きかつ能天気です。
「パラレルワールド??それがどうした、へっん」という強さがあります。

本作が書かれた後ほどなく1960年代を迎えSF界にはニュー・ウェーブが来襲するのですが…。
「そんなものどうした!」と言わんばかりの気持ちいいばかりのストレートさです。

自らの作品世界観の肯定というのはハインライン作品数作しか読んでいないでいうのもなんですがハインラインに一貫して流れる基調な気がします。
トランプさん見ているとイメージわきやすいかと思いますが「独善的」とも「アメリカ的」ともいえる部分かとも思います。

ハインライン作品を読むにはその辺が鼻につくかどうかで好きな人と嫌いな人に分かれる気がします。

ただこの「夏への扉」についてはそれほど難しい主張もしていないし「タイムトラベル」というSF的道具立てと、比較的頭脳派のやさ男キャラの主人公、「猫」やら「少女」に救われていてマッチョさが目立たなくなっているので万人受けするかと思います。

50近いオヤジが読んでも「爽快」です。(ご都合主義だとは思いますが….)

超有名作なので細かいストーリーなどは省きますが今回読んで気づいたことを書きます。

1970年の世界で主人公ダンが発明する自動掃除機は今のルンバの発想にそっくりです。
その他家庭用ロボットの発想も頭脳部分は作業内容を複数メモリー化し、作動する機械部分と分けて設計するなどなんとも現代的(2017年的に)ですし存在の輪的に設計される自動製図機もなんとも現代的です。

初めて読んだとき(1980年代)には適当に読み流していましたが、ハインラインのその辺の読みは的確だったんだなぁと感心しました。
日本の家電会社も「夏への扉」をきちんと読んでいれば「ルンバ」的お掃除ロボをいち早く開発できたのになぁ…などと思いました。

主人公ダンは猫と少女好き(?)なやさ男のイメージがあったのですが、そこはハインライン、改めて読み直してみると独立心旺盛な「男」しています。

作中の1970年時点でも大会社の下につくよりは小さくても「ボス」でいたいというところや、冷凍睡眠から目覚めた2000年の世界で「自立」して生活していこうという姿はハインライン的男性像です。

ただベルやマイルズに簡単に騙されるところ、2000年でトウィッチェル博士を煽って後悔しているところなど憎めないところがあってハインライン的臭みを消しているように思えます。

「夏への扉」は1970年当時11歳の少女リッキーと冷凍睡眠を駆使して最終的に結婚する話でもあるので「ロリコン小説」という評価(というか非難?)もあるようです。

作中リッキーの登場場面はとても少なく終盤ダンがキャンプに会いに行くところとラストで結ばれているところくらいしか出ていません。
(あとは回想が少し)

2000年時点でのベルの老残ぶりを描いた後、ダンの振り返りの中でしか登場せず「どんな子?」とじらした後、のキャンプ地で満を持して登場する健康的で素直なリッキーの姿はとても魅力的です。

「ロリコン」はともかく、構成として(男性の妄想として?)はここで出てきて結ばれるというのは的確だとは思いました。
男性的なご都合主義は多分にあるのでこの辺どう思うのかは女性の意見も聞いてみたいところです、まぁラストのデレデレぶりは明らかにやりすぎですが…。

ということでいろいろ書きましたが単純に楽しめる(少なくとも男子・男性にとっては)SFの永遠の名作...というかスタンダードな作品だと思います。

万人受けするかは「???」ですが、「SFを読んでみようか?」などと思う人な時点で「夏への扉」適合度はかなり高いと思います。
未読の方は是非読んでみてください、難しいことを考えなければとても楽しめる作品です。

↓よろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ノヴァ サミュエル・R・デ... | トップ | サリーはわが恋人 アイザッ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

海外SF」カテゴリの最新記事