拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

花咲く命或る限り

2007-02-04 18:55:59 | 音楽
「世界に一つだけの花」を聴いている。ご存知SMAP最大のヒット曲にして、子供からお年寄りまで誰もがなんとなく口ずさめる文字通り「みんなのうた」。私の祖母もテレビでこの曲を聴いては「良い曲だわねぇ~」としみじみしている。当然SMAP本人達にとっても大事な曲のようで、香取慎吾に至っては「SMAPで一番好きな曲」と公言するほどである。
ではSMAPファンにとってこの曲の存在はどうなのだろう。大ヒット曲だし、ライブではファンもあの例の振り付きで踊るし、それなりに思い出深い曲なのだろうが、やはり「良い曲だけどもっと名曲なのは他にあるよね」的に思ってるだろうな…。ファンというものはそのアーティストのメジャーな曲よりもマニアックな曲を好むというのは当然だ。私だってラルクの「HONEY」より「TIME SLIP」や「fate」が好きだし、スピッツなら「チェリー」より「スピカ」や「夜を駆ける」だ。宇多田なら「Automatic」より「日曜日の朝」だし、SMAPなら「感じやすい不機嫌」や「お茶でもどうかな」が素晴らしい。
…話が逸れた。今日の記事の中心ははあくまでも「世界に一つだけの花」だった。まあ、それ聴いてて。あの曲は元々15枚目の「Drink!SMAP」収録曲で、草剪が俳優として飛躍するきっかけとなったドラマ「僕の生きる道」のためにシングルとして切られたもの。当時平井堅のお陰でちょろっと流行った2ステップを取り入れたり、ケツメイシを向かえてレゲエを歌ったりと、その時代の流行をスマートに取り入れつつも、アイドルとしての彼らのキャラを立たせることを忘れない丁寧な作りが印象的な、名曲だらけの「Drink! smap」。正直「世界~」よりも良い曲一杯詰まっていると思うのだが、ドラマのテーマに合わせてあれが選ばれたのだろう(「僕の生きる道」に「JIVE」や「FIVE RESPECT」はミスマッチどころの騒ぎではない)。アルバム聴くときはたいていスキップするほどどうでもよろしい曲だ。SMAPの曲にしてはアレンジが無難すぎるし…。
でも今日、きちんと聴いてみたら、気付いたことがあった。それは多くの人はとっくに気付いてるかもしれないけれど、あまりちゃんと聴かなかった私は初めて気付いたことだ。
もともと違う者同士が競争し、相手を蹴散らしてトップを獲ろうとすることを高らかに否定し、個人個人を認め合うことを歌う「世界に一つだけの花」。サビの「ナンバー1にならなくてもいい もともと特別なオンリー1」は、この曲が幅広い世代に受け入れられた要因となった決定的なフレーズだ。しかしこのフレーズは「皆が各々オンリー1を目指したら秩序が無くなる」とか「ナンバー1を否定することは資本主義を全否定すること。それでは社会は成り立たない」とか「苦しい競争から逃げようとしてるだけ」等というように、「甘い考えだ」と批判する声が発売した頃から一部で後を絶たなかった。でもさー、あの歌詞で「ナンバー1でなくオンリー1」を許されてるのは「花」だ。蕾ではなく、途中で萎れることなくきちんと花開くことができた存在。少なくとも花を咲かせなければナンバー1を捨ててオンリー1で居ることは許されない。歌詞に「頑張って咲いた花はどれも綺麗だから仕方ないね」とあるように、花を咲かせるまでは競争してでも頑張ることが前提の「オンリー1」だ。
だからこの歌はシビアだ。花を咲かせる努力をしない者には「オンリー1」権は与えられていない。以前はどう見てもスーパースターのSMAPが「ナンバー1にならなくてもいい」と歌うことに抵抗があったのだが、案外、長年芸能界で荒波に揉まれ続け、立派な花を咲かせた彼らにこそ相応しい曲なのかもしれない。
長々とくだらん私の物思いを読んでいただいてありがとうございます。ぺこりー。

●今日の一曲
「IN FEAR OF FEAR」/BAUHAUS

追記
タカアンドトシのトシ、タコの赤ちゃんみたいで好き。