★ Serena ★

カナダ暮らしのエスペランチスト、自然愛好家。
エスペラントやカナダの野草、ネーチャークラブの活動など思いつくままに。

インデアンの絵筆

2005-04-18 11:31:03 | 野の花 - 春から夏へ
この名の由来は一目瞭然、絵の具に筆先を浸けた絵筆のような形をしているからです。
色も、鮮やかな赤から黄や白に至るまで多く、その種類は200を超えるとのことですが、
私は一種類しか見たことがありません。それがこの写真です。
ロッキー山脈の、とあるハイキング・トレールのほとんど真中ともいえるところに”息も絶え絶えに”咲いていた花でした。息も絶え絶えと言うのはその時私が受けた印象です。踏みつけられ、踏みにじられながらも必死で立ち直り続けてきた形跡が見られたからです。それは貧弱でやせ細りほとんど這うようにして咲いていました。でも色は鮮やかで遠目にも直ぐ気付いたくらいです。娘夫妻と一緒に歩いていたのですが、「マミは目聡い」と娘が感心したほどかなりな距離からそれと気付きました。
学名はCastilleja、200種類もあるのでその後にcoccineaとかlinariaefoliaとかをつけて分けてあります。私が見つけたのは多分(Castilleja miniata)と呼ばれるものではないかと思っていますが、確信はありません。エスペラントではPeniko de Indeanoで良いのでしょうか。
他の草の根に寄生の習慣があるそうで、その根性は好ましいとは言いかねますが、私が興味を覚えたのはその花の形(実際の花はこの色鮮やかなホウの中に隠れていて見えない)や鮮やかな色もさることながら、この花にまつわる伝説です。

インデアンの神様キッチー・マニトゥが世界を創造したばかりの頃は、世界には色というものがなく何もかもが真っ白でした。
物を造るときはただ有益なだけでなく美しく造ることもキッチー・マニトゥのモットーでしたから、真新しいぬり絵のような世界を彩り良くするために絵の具を塗ったのです。
キッチー・マニトゥは初め動物たちを塗りました。主として茶色と灰色を使いましたが、黒とか赤もところどころに使い、感じのいい彩りに仕上げていきました。この動物たちはただ役に立つだけでなく目に美しいものとしても造られたのです。ただ、冬が来て木々が裸になったとき危険から身を隠すことができなくなるため、何種類かの動物たちには、冬には元来の白にもどることを許してあります。
木々も初めは真っ白でした。キッチー・マニトゥは木々や草には緑色を使いました。ときには黄色や橙色も使ったので、これが濃淡のある緑とうまく映りあい、草や木も単に役立つだけでなく眼の疲れを慰める美しいものになりました。
花々には思いつく限りの色を使いました。キッチー・マニトゥは花を塗るのにその色彩感覚の良さを充分に発揮したのです。でも、キッチー・マニトゥは数限りなくある花々を全部塗り終えることができませんでした。
それはそれはたくさんの花がありましたし、花は一番後回しにしたので花を塗り終える頃にはキッチー・マニトゥは考える力も無いほどに疲れ切っていました。絵の具もほとんど使い果たし、絵の具壷の底にほんの少し赤い絵の具が残るだけになっていました。
この赤い絵の具はトリリアムを塗るために取っておいたのですが、いくつも塗らないうちにすっかり無くなってしまったのです。そういうわけで今でも赤いトリリアムは少ししか有りませんし、春、森の中で見かけるトリリアムのほとんどはキッチー・マニトゥが世界を創造した頃のままの真っ白なのです。
絵の具を使い果たしたとき、キッチー・マニトゥは精も根も尽き果てて赤い絵の具がついたままの絵筆をほっぽり投げて休息を取りました。この絵筆は飛んでいって地面につきささり花になりました。ですからインデアンの絵筆という花はキッチー・マニトゥが造った一番最後の花なのです。

この伝説に出てくるトリリアムは大花の延齢草、北海道辺りに咲いているのより花が大きいらしいです。
白いトリリアムはここオンタリオ州の州花で、四月下旬頃から咲き始めます

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1 コメント

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Unknown (glimi)
2005-04-18 18:13:24
『インデァンの絵筆』ありがとう。



土筆の形を想像していたのでちょっと違いました。また、伝説も面白いですね。
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