凛とした花が私好きなんです

私の古里は豪雪の奥会津です。70年も昔の思い出なんですけど、四月の末頃になると家中の者みんなでは春の山に柴刈りに行くんです。麓にはのっしりと残雪があるんですけど尾根の近くは雪が消えて柴が姿をを表しています。いい場所を選んで鉈を振るって柴を刈り「ゆぎまる」と言うんですけど刈った芝を集めて大きな束にまとめロープで縛って雪の残る斜面を転がり落とすんです。運ぶ手間が省けて便利なんですよ。それを小さな束に分けて積んで置き乾燥させてから家に運ぶんです。
灯油もガスも電気も煮炊きなどには使えない時代でしたから、柴は夏の間、囲炉裏で焚いて煮炊きするのに大事な燃料でした。芝刈りの仕事は厳しいんですけど家中の者みんなでお弁当持ちで出かけますからピクニック気分の楽しい思いもあったんです。
残雪があるといっても春の陽光は暖かく、周りには早春の花々がいっぱい咲いていました。マンサク、カタクリ、イワカガミ、イワウチワ、シュンランなどどれもみんな綺麗で目を楽しませてくれました。でも若かった頃の私は地味なシュンランにはあまり興味がありませんでした。
ウィキペディアによればシュンランは江戸時代から文人墨客にさ愛されていたんだそうですね。老いてきた私は文人墨客ではありませんけど近頃素朴で気品のあるシュンランが好きになりました。野草を愛好していらっしゃる方の中にもシュンランを好きな方が多いと聞いております。
シュンランは種から生長して花を咲かせるまでには5年から10年はかかるとウイキペディアに書いてありました。5年ほど昔里山の谷の入口近くでシュンランの花が幾株か咲いているのを見つけてブログに書きました。次の年の春楽しみにその場所に行って見るとシュンランの株は綺麗に消えていてがっかりしました。
私はいま里山の別の場所にいっぱいシュンランの咲いているところを知っています。シュンランってそんなに珍しい植物ではないんですね。でも種から花の咲くまで5年から10年もかかる植物です、みんなで大事にしなければならないとわたしは思っているんです。エビネやアツモリソウやオキナグサのような運命にしたくありませんもんね。