ぶらっと散歩

訪れた町や集落を再度訪ね歩いています。

宗像市赤間は旧唐津街道沿いの町

2023年03月10日 | 福岡県

        
                この地図は、国土地理院の2万5千分の1地形図を複製・加工したものである。
         赤間は釣川上流域に位置し、北部は城山南麓の丘陵地にある。地名の由来は、神武天皇
        が東征の際、道に迷われた時に八所宮の神が赤馬に乗って案内したことから「赤馬」と名
        付けられ、のちに赤間と書くようになったという。(歩行約3㎞、🚻赤間館にあり)

        
         JR鹿児島本線の教育大前駅で下車する。JR教育大前駅が開業したのは、1988(昭
          和63)
年で線路は切通しの中に設置され、道路橋に駅舎が併設されている。1966(昭和
          41)
年福岡教育大学を赤間町に誘致したのは出光佐三ともいわれている。

        
         駅前に「旧唐津街道・赤間宿」の大きな木柱が立っているが、ここが東構口だったと思
        われる。

        
         ここから釣川近くにあった西構口までが赤間宿である。 

        
         須賀神社の石鳥居脇に道標があり、「従是右木屋瀬 従是左芦屋」とある。

        
         須賀神社境内には貴船神社、菅原神社、水神社、恵比須神社が祀られている。

        
         辻井戸は宿場の旅人や馬に飲水を供給するためのもので、赤間宿には7ヶ所(うち2つが
        現存)の辻井戸があった。

        
         一の鳥居横に宗像三偉人の一人と云われる「節婦阿政」の碑がある。大黒屋七兵衛の後
        妻の娘で、父が決めた許婚と経済的理由から結婚できず、勝浦村の大庄屋の子息の求婚と
        の狭間で思い悩み、1801(享和元)年18歳で自害したという。
         左の碑は人のために力を尽くした石松林平・伴六の碑。 

        
         須賀神社は赤間の氏神で、江戸期には祇園社と称していたが、明治期になると祇園は仏
        教的であるいう理由で須賀神社に改称する。

        
         法然寺(浄土宗)の寺説によると、法然上人の弟子であった幸阿上人が、圓光大師の白骨
        を首にかけて九州に下り、この地に白骨を埋めて草庵を結び、圓通院と名付けたのが始ま
        りとする。安土桃山期の1575(天正3)年に慶春という僧が当寺を建立したという。

        
         法然寺のすぐ南側には五卿西遷の石碑が立っている。京都を脱出して長州に落ち延び、
        筑前太宰府へ移されることになる。
         攘夷派の急先鋒であった三条実美以下5名が、1865(慶応元)年黒崎湊から筑前入りし、
        法然寺の裏手にあった御茶屋に25日間滞在したという。

        
        
        
         城山(じょうやま)から延びる丘陵の傾斜に沿って町筋が形成されている。

        
         左手が海軍兵学校の校長や舞鶴要港司令官を務めた出光万兵衛の生家跡。右手の兜造り
        の屋根を残す出光邸(蛭子屋)は、赤間宿内では最も古い建物で醤油・酢・味噌などを製造
        し、両替・荒物業も営んでいたという。

        
         出光興産の創始者である出光佐三は、1885(明治18)年藍玉問屋(松屋)を営む出光藤
        六の次男としてこの地で生まれ、神戸商高(現神戸大学)卒業後に小麦と石油を扱う従業員
        3名の酒井商会に丁稚奉公する。
         1911(明治44)年25歳の時に独立を果たし、現北九州市門司区で機械油を扱う出光
        商会(後の出光興産)を設立。戦後は石油元売業者として、イギリスの支配下にあったイラ
        ンから石油輸入に成功し、石油を自由貿易する先駆けとなる。

        
         赤間宿の特徴は兜造りの町家にある。通りに面して2階の軒を低くして小さな窓を設け
        て、正面から見ると武士が用いた兜に似ていることから名付けられたという。

        
         お菓子の製造、卸、小売りをされてきた桝屋。江戸中期の建物で「中の間」には明り取
        りがあって、鰻の寝床といわれる奥行きが深いため、製造に利用された運搬用のレールが
        あるとか。入口に「桝屋」という一枚板で作られた大きな看板があったが撤去されている。 

        
         桝屋さんの向い側に出光佐三展示室。戸袋に屋号があったものと思われるが見えず。

        
         旧芳村呉服店は特産品の販売や食事ができる街道の駅「赤間館」となり、施設内には井
        戸も現存する。

        
         赤間宿には上町と下町のそれぞれに町茶屋(脇本陣)があったという。ここには下町の新
        屋(あたらしや)という屋号の町茶屋があり、上級武士が参勤交代の時に宿泊したとされる。

         
         1790(寛政2)年創業の勝屋酒造は、隣の三郎丸という地で醸造を始めたとされ、18
        73(明治6)年6月に福岡県で起こった民衆暴動(筑前竹槍一揆)で打ち壊しに遭ったのち、
        この地に移転したという。
         宗像大社の御神木に由来した「楢の露」の銘柄で酒造を続け、宗像大社の御神酒も造り
        続けている。

        
         奈良県にあるお酒の神様を祭る大神神社では、美味しい酒ができるようにと杉玉を飾っ
        てきたが、その習慣が江戸初期から全国の酒蔵に広まったという。軒先に緑の杉玉を吊す
        ことで、新酒が出来たことを知らせる目印とされる。

          
         勝屋酒造の主屋と煙突は国登録有形文化財。

        
         萩尾邸は江戸後期の建物で、1888(明治21)年頃に屋号「新屋」として、こんにゃく
        製造業を営む。

        
         辻行燈などもあって風情ある町並みではあるが、交通量も多くて注意しながらの散歩と
        なる。

        
         中央に旧宗像市の市章と、周りに市の花であるカノコユリがデザインされたマンホール
        蓋。

        
         現存する辻井戸の1つ。

        
         今井神社の由緒は不明であるが、木製鳥居の先に大木が参拝を妨げる。

        
         石松邸は明治前期の建物で、以前は荒物屋で橋口屋と称していたという。 

        
         吉田邸は明治初期の建物で、戦前まで家具の製造販売をしていた。二階の窓横に「儀」
        の鏝絵がある。

        
         石松邸は蔦屋という屋号で呉服店を営んでいたとされ、兜造りの屋根と蔀戸(しとみど)
        見られる。

        
         「蔦」と文字が彫られた差し掛け。

        
         赤間構口交差点付近が西構口とされ、遺構は残されていないが、交差点表示で構口であ
        ったことを知ることができる。

        
         辻田橋の袂に2つの石柱が建っている。右は「此方鞍手郡山口道 此方畦(あぜ)町道」と
        刻まれた追分石である。
         左手は一番定石といわれるもので、釣川は氾濫しやすい暴れ川のため江戸期に大規模な
        治水工事が行われた。江戸後期の宝暦年間(1751-1764)頃に行われたが、1791年川底を
        浚って土砂などを取り除く工事が、この橋から河口にかけて10ヶ所で行われ、10本の
        定石が建てられたが1番目の場所を示すものである。

        
         公園から見える宗像城山には、安土桃山期まで宗像氏の蔦ヶ嶽城があったことから城山
        と呼ばれている。貴重なウスキキヌガサタケが見られることで山の存在が知られている。

        
         釣川沿いにある公園に「唐津街道 赤馬宿」の石碑が建立されているが、「赤馬」と表
        示されている。(ここで引き返す)
         1899(明治32)年九州鉄道が開通して地内を通るが、赤間駅が当地より西方に設けら
        れたため旧街道の賑わいは衰えた。

        
         浄万寺(真宗)は、室町期の1556(弘治2)年許斐岳城主であった占部氏が出家、現在の
        宗像市田久寺山に開創。後に現在地へ移転したとされる。

        
         猿田彦神社も由緒がなく創建年などは不詳。鳥居には明治12年(1879)と刻まれている。
         唐津街道ができる前の旧街道を歩いてみるが、赤間中学校が御茶屋(本陣)だったという
        以外には何もなかった。