この地図は、国土地理院の2万5千分の1地形図を複製・加工したものである。
前島は周防大島町久賀の北方約5㎞沖に浮かぶ面積1.09㎢の島である。島名の由来
は、久賀の前にある島だといわれている。
江戸初期には無人島となっていたところに、草木の採取が行われ始め、そして田畑の開
墾を行った歴史がある。(歩行約3.1㎞)
JR大畠駅から防長バス橘病院行き約20分、周防久賀バス停で下車する。(@730-)
バス停前にふるさと館があり、前島航路の乗船券が購入できるが、桟橋は天神前バス停
近くにあって約300m引き返さなくてはならない。(天神前だと140mほど)
定期船「くか」は28人乗りと小型船であるが、この航路では、波が穏やかでエサとな
るイワシが多い4~11月頃「スナメリ」に会えることで知られている。
ライフジャケットを着用すれば、船首から船旅を楽しむことができる。
約20分の船旅を楽しんで島に上陸するが、船は5分後に久賀に戻るのでスナメリウオ
ッチングの方はそのまま引き返して行く。
渡船場前の大きな家は民宿をされていたようで、庭に五右衛門風呂と2階には展望でき
るバルコニーが設置されている。
倒壊した家屋などが目に付く。
石組みの防波堤から渡船を見送る。
この急坂は島民の方にとっては苦坂のようだ。商店がないため生活物資は島外に頼る以
外にないようで、通常はJAに注文して渡船で送ってもらうまでは問題ないが、渡船場か
ら重たい荷物を持ってこの坂を上がらなくてはならないという。
大きな家に囲まれた畑地は耕作されているので、見える範囲の家にお住いのようだ。
島は南北に長く、集落は小高い丘を挟んで東と西になっているため、境である丘の上に
集会所が設けてある。
前島集会所は大師堂と老人の家を兼ねており、集会所前には顔を覆った地蔵尊も祀られ
ている。
東集落の風景。
海岸部の地蔵尊は、漁師たちの豊漁と安全を見守ってきたようで、今も大切に祀られて
いる。
1981(昭和56)年に沿岸漁業構造改善事業(漁船用補給施設)で設置された漁船用燃料
タンクと漁具倉庫。
すでに漁港の役割は終えたようで、周囲には漁船の残骸がみられる。
東集落には1名がお住いとのことだが、野菜は自給が原則のようだ。島にはイノシシは
いないが、鳥が悪さをするので網掛けされているとのこと。
右手に黄幡神社と砲台跡への道。
山頂に旧軍の砲台跡が残るというので、雑草を踏んでヘリポートまでは何とか上がるこ
とができたが、その先の旧軍用路に入ると藪道である。藪にはサルトリイバラが繁茂して
おり、山頂までの距離を考えて残念する。
山道には1ヶ所だけ海に浮かぶ福島が見える場所がある。手前はビロウの木だろうか丸
々と太っている。
境内から鳥居までは上り坂で、安永九年庚子春(1780)と刻まれた明神鳥居が建つ。
黄幡神社の御神体は巨岩で、金運・海運の神として祀られている。社殿の前には銭にま
つわるバクチノキがある。
お堂の隙間から内部を覗くと、祭壇と御神体用の注連縄が保管されている。壁には奉納
者氏名がずらりと並ぶ。
周回路を下り終えると海岸部に出る。
前島神社の創建年代は不詳とされるが、古くは荒神社と呼ばれていたが、1872(明治
5)年現社号に改めたという。江戸時代には島内に野ネズミが大量発生し、島民の多くが飢
えに苦しんだことがあったという。このため、御神体を祀って祈祷したのが、この神社の
起源ともいわれている。
島の開墾に私財を投げ打って尽力した久賀の庄屋・伊藤惣左衛門(1770-1820)が合祀さ
れているようで、境内の隅には恵比須社も祀られている。
1866(慶応2)年6月の第二次幕長戦争において、幕府軍の軍艦4隻が宮島から久賀沖
にやってきて碇泊する。同月13日高杉晋作が指揮する丙寅丸(へいいんまる)が夜襲をかけ
た所である。
久賀小学校前島分校は、1873(明治6)年前島小学として創立されるが、1881(明治
14)年に開明小学校の分校となる。1979(昭和54)年以降は休校と再開を繰り返したが、
2000(平成12)年3月をもって廃校となる。
校舎は1969(昭和44)年に新築されたが、現在は前島公民館として活用されている。
同校の校歌は、周防大島出身の作詞家・星野哲郎氏が作詞したとされる。
戸数にして70戸ぐらいあったようで、現在は4戸、5人が暮らす島である。
大きな家だったが一瞬にして屋根が崩れ落ちたそうだ。
西集落の生活道は細い坂道である。
この坂道には一軒の人家以外は無住である。
集落内のどこからでも海が見渡せる。
大きな家だが廃屋である。
渡船待合所からの路地に入ってみると、商店だった家を含め廃屋が並ぶ。
ここから見ると他と変わらない集落に見える。
漁船の船底塗装などに使用された引揚げ用レールが残されている。
防波堤から見る西集落。
予定していた砲台跡に行けなかったため、海岸部で波音を聞きながら対岸の銭壺山、琴
石山などを眺めながら時を過ごす。波音を打ち消す異様な爆音を発しながら真上を戦闘機
が飛び去るが、乗船まで周期的に爆音を聞く羽目になる。
待合所でスナメリが見られますようにと願掛けスタンプを押す。
約5時間を過ごした前島から久賀に戻る。
願掛けが効いたのか2頭のスナメリが渡船を追いかけるように現れる。突然の出現と渡
船のスピードが早いため頭部のみの撮影となる。
「スナメリ」はスナメリ属の小型イルカだそうで、背びれのないイルカだそうだ。
周防久賀バス停前にトイレと信号機もあるので、こちらに戻ってJR大畠行きバス(17:
08)に乗車して前島散歩を終える。