小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

小池新党への大合流で、一強体制回復を目指した安倍解散劇の筋書きはどうなる?

2017-09-28 08:27:17 | Weblog
 25日夕方、余裕を持って「国難突破解散」を宣言した安倍総理だが、それからたった二日で「政権選択解散」「安倍絶望解散」に変わってしまった。選挙のカギを握る無党派層の動向が一気に決まったからである。無党派層の動向を決めたのは、言うまでもなく小池新党の『希望の党』とメディアの報道である。
安倍総理を中心とする自民党執行部が、3分の2以上の議席を与党が確保できるのは今しかない、と判断して「解散の大義の無理付け」解散に踏み切ることにしたのは、アメリカと北朝鮮の「挑発ごっこ」がまさかの事態を招きかねない沸騰点まで高まり、政権への求心力が急速に回復したからであった。
実際、モリカケ疑惑や稲田答弁問題で6月、7月と内閣支持率が急落し、7月の各メディアの世論調査ではついに不支持率が支持率を上回るという事態にまで、安倍政権は追い込まれていた。8月の内閣改造で支持率はやや持ち直したが、前回の内閣改造後の支持率上昇と比較すると微々たる回復でしかなかった。
前にもブログで書いたが、内閣支持率を左右するのは選挙と同様、無党派層である。アメリカのように国民の多くが民主党か共和党の支持層に分かれている国でも、必ずしも固定的な支持層とは言えず、大統領候補者の選挙公約によって投票スタンスを変えてしまうことが起こりうる。実際、大統領候補者になるための必須の条件であるはずの、有力州の知事または上院議員というキャリアを経ず、しかも自ら共和党と民主党、さらには第3政党と党籍をうろちょろ変えてきたトランプ氏が、あれよあれよという間に共和党の大統領候補者に選出され、到底実現不可能な無鉄砲極まる公約を並べたてて大統領選を勝ち抜いてしまったのも、本来なら民主党の支持層であった白人低所得層がトランプ氏の「移民排除政策」によって、ヒスパニック系の移民によって奪われた仕事を取り返せるという期待から、従来の投票スタンスを変えたことが、大番狂わせの選挙結果を生んだ。
アメリカの主要メディアである『ニューヨークタイムス』や『ワシントンポスト』『CNN』などが選挙前の世論調査でヒラリー・クリントン有利の報道を流したことも「逆アナウンス効果」となり、「なんとなく」民主党支持層だった白人低所得層が一気にトランプ側に寝返ったというのが、米大統領選の真相である。米メディアは予想が外れた原因を「隠れトランプ支持層」の動向をとらえきれなかったと総括したが、もし本当に「隠れトランプ支持層」が存在していたら、かならず世論調査に引っかかっている。真相は「隠れトランプ支持層」の存在ではなく、本来なら民主党候補に投票するはずだった白人低所得層が投票行動を変えたためである。
そうした新たな「無党派層」の出現と、彼らの投票行動が事前の予想を大きく裏切るケースは直近のイギリスやドイツの選挙でも表れている。首相の解散権を憲法で縛ったイギリスでも、メイ首相が議会の3分の2の支持を得て解散に踏み切り、EUからの離脱交渉を有利に進めようとしたが、かえって与党の議席数を減らす結果になったし、先の大戦への大いなる反省から難民の流入に寛容な姿勢をとり続けるメルケン首相に対して国粋主義者政党が台頭し、やはりメディアの想定外だった第3党に躍進するという事態も生じた。
安倍総理が勝利の確信をもって解散に踏み切ったのも、米朝関係の悪化を日本にとって有事の危機であるかのごとく煽り立て、その作戦に自覚なく悪乗りした日本の全メディアの報道姿勢によって9月の内閣支持率が急回復したことで、安倍総理は「総選挙で与党が3分の2の議席を確保して『安倍一強体制』を回復する」ための絶好のチャンスとして行ったのが解散の真の目的だった。
が、遅くても今年に入って早々、小池都知事が若狭衆院議員とひそかに国政政党の小池新党の立ち上げを画策してきたと思われる。『希望の党』なる党名は、今年2月に投票登録を申請していたことが明らかになっているし、新党立ち上げ宣言の記者会見で流された動画も、相当前から準備していたと思われる。
こうして「安倍解散劇」が進行する中で、早々に動いたメディアが毎日新聞だった。解散宣言の翌26日と27日の2日間にわたり緊急の世論調査を行ったのだ。この世論調査によれば、投票先政党は依然として自民党がトップだったが(29%)、次いで『希望の党』が早くも18%と2位につけた(民進は8%、公明5%、共産5%、維新3%)。内閣支持率も支持36%、不支持42%で再々逆転した(前回9月2,3日の世論調査では支持39%、不支持36%)。ただし、無党派層(支持政党なし)の投票先は自民15%、希望14%と拮抗したが、昨27日の『希望の党』と民進党の合流への動きの急展開が、この世論調査にどの程度反映されたかは不明である。
このブログを書いている現時点(28日06:45※書き終えて投稿する時間ではない)希望・民進の急接近に維新が加わるかどうかは不明だが、維新の松井代表は小池新党の立ち上げ早々から「私たちと同じ主張だ」と秋波を送っており、最終的には希望を軸に民進・維新が合流する政界大再編になる可能性が強い。
ただ事実上の中心軸となる小池氏は「大合併ありきではない」(趣旨)ことを明言しており、当選目当ての新党への参加は拒否する構えだ。しかもその参加条件は「改憲と安全保障に関する姿勢の基本的一致」で、暗に民進党の革新系議員の参加は認めない方針を打ち出している。明確な保守新党の誕生を意味し、危機感を募らせた自民党幹部の「野合」「烏合の衆」といった批判は当たらない。
この政界大再編の動きで、いったん新党への支持を打ち出した連合だが、対応の見直しを迫られることになる。連合は組織票を背景に新党でも発言力を確保したかったのだろうが、小池氏の参加条件をのむことはできまい。
さらに、割を食いそうなのは共産党だ。共産党に対する政党支持率はここ数年ほとんど変化がないにもかかわらず、たまたま行き場のない無党派層の消去法による選択により、国政でも地方でも選挙のたびに議席数を増やしてきたが、いまのところメディアが小池新党にきわめて好意的な報道をしており、無党派層が一気に雪崩現象を生じる可能性が高まっている。
問題は小池氏が目指すという「寛容な保守党」という新党のイメージが有権者にどう受け止められるかだ。「寛容」が何を意味するのか。自民党のような「極右から左寄りまで」の幅の広さを意味するのであれば、自民党とどう違うのか。アメリカの民主党のような「リベラル保守勢力」を目指すのであれば、憲法と安全保障に関して自民党との明確な相違を明らかにしないと、イメージを具体的な政策として打ち出した場合、内部亀裂や支持者の失望を招きかねない。
というのも、小池氏には都知事として市場問題で示した極めてあいまいなスタンスを、いまだにとり続けているという前歴があるからだ。「豊洲は生かす、築地は守る」というイメージ作戦で都議選を大勝利に導いたが、果たして二兎を追うことが可能なのか、その処方箋はいまだ明らかでない。小池氏のイメージ作戦に悪乗りしたメディアは、おそらく今では気がついているだろうが、いまさら手のひらを返すように小池批判はしづらくなっている。小池氏はメディアの出身だけに、そうしたメディアの体質を知り尽くしている。
市場問題について言っておく。築地の再開発に要する期間は5年と予定されている。つまり築地の市場関係者はそれまでの間、豊洲で事業を続けることになる。5年も事業を続ければ、豊洲での定着はかなり進む。築地から豊洲に移転するのも多少リスクが伴うが、他に選択肢がないから移転せざるを得ない。5年後、市場関係者をもう一度築地に戻すというなら、都は膨大な補償金を支払って豊洲市場を閉鎖してうえで、再移転を強制するしか方法はない。そんな強権行政が日本で出来るとでも思っているのか。メディアは小池ブームを演出したプロデューサーでもある。その責任感をかみしめてもらいたい。
最後に、小池氏が都知事を辞任して衆院選に出馬するのではないかという憶測を流しているメディアもある。小池氏は否定しているが、小池出馬説は依然として消えない。が、小池氏の鞍替えは絶対あり得ない。もし、都知事職を辞したら都民の反発はおそらく想定以上のものになる。大票田の首都で、小池新党は惨敗する。頭のいい小池氏が、自殺行為に相当するバカげた選択をすることは考えられない。ただ市場問題で二兎を終えなかったのと同様、都政と国政の二足のわらじをはくことも無理だ。選挙の顔だけで、小池氏の役割は終わる。

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