小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

日米のきしみの本当の理由は何か?--単眼思考では分からない⑤ 

2014-04-25 06:01:17 | Weblog
 昨日(24日)、安倍総理とオバマ大統領が東京・元赤坂の迎賓館で会談した。この首脳会談における日本の目的は二つだった。こじれにこじれて落としどころがなかなか見つけられないTPP交渉の大筋合意をトップ会談で図ること、さらに尖閣諸島の防衛について米国が日米安保条約に基づいて軍事的支援を行うことの確約をオバマ大統領から取り付けることであった。
 すでに4月5日に来日した米国防長官ヘーゲルが、尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲に入る、と明言していた。ただし、口には出さなかったが「中国が海洋進出の野望を捨てるまでは」という「限定条件」付きである。アメリカの尖閣諸島に対するスタンスが今後も続くという保証は何もなかった。アメリカの国益にとって、日本より中国の方が重要ということになれば、スタンスはいとも簡単にひっくり返る。それは竹島に対するアメリカのスタンスを見れば一目瞭然である。そういう意味では、米大統領が初めて「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用範囲だ」と明言したことの意味は小さくない。が、日本にとってものすごく有利な言質をオバマ大統領から取り付けたと考えていたら、お人好しもいいところである。
 では日米安保条約の5条とはどういう内容か。実はこの解釈をめぐっていろいろな説がある。現に米下院では「日本側に有利すぎる」と問題になった条項でもある。
「各締結国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危機に対処するように行動することを宣言する」
 この条項を読んで、日本が第三国から攻撃された場合、アメリカが日本を防衛する義務が自動的に生じることを明記したものと、素直に解釈できるだろうか。この条文の「各加盟国」が「米国」と書かれ、「いずれか一方」や「自国」が「日本」と書かれていれば、「5条の適用範囲」と米大統領が明言したら、アメリカは尖閣諸島の防衛義務がアメリカにあることを米大統領が認めたことになるが、オバマ大統領はヘーゲル国防長官の発言をオーソライズしたに過ぎないと考えざるを得ない。あまり有頂天になっていると、とんでもないことになりかねない。

 日本人の多くは、GHQ総司令官マッカーサーが天皇の戦争責任を不問に付して皇室の存続を認めたことで、マッカーサーに感謝している人たちが多いが、実はマッカーサーは日本を二度と工業国家として復活させない方針を持っていた。マッカーサーがアメリカで大統領になれなかったのは日本占領政策が過酷にすぎ、日本の共産主義化を招きかねないと米政府から懸念を持たれたからである。実際、マッカーサーは日本の軍事産業を解体させただけでなく、あらゆる工業生産設備をアジアに移してしまうという計画まで立てており、実施に移す直前に米本国政府から「待った」をかけられている。
 竹島も、マッカーサーは日本の施政権から外しており(マッカーサー・ライ
ン)、1952年4月のサンフランシスコ講和条約発効によって、ようやくマッカーサー・ラインが廃止され、竹島の施政権は日本に返還された。が、その直前の同年1月に大韓民国の李承晩大統領が竹島の領有権を主張、マッカーサー・ラインに代わる李承晩ラインを設定する。日本政府は当然反発して抗議、アメリカもこのときは「国際法上不当」と日本政府に同調する姿勢を示した。日本側は、とりあえず竹島の実効支配をアメリカに委ねるべく、竹島を米軍の訓練地として日本が提供することを約する協定を米政府との間に結んだが、もちろん竹島を軍事訓練地にできるわけがなく、アメリカは基地をつくることなど毛頭考えていなかった。一方韓国は翌53年4月には「独島義勇守備隊」が竹島に駐屯、その後は韓国警察の警備隊が占領を続けている。
 安倍政府は今年の小学校の社会科教科書検定基準に「竹島、尖閣諸島は日本の領土」と明記する方針を策定、実際にそう明記された。当然、中韓は歩調を合わせて日本の教科書検定に抗議、中韓との関係はますます悪化した。ここで問題が生じた。
 とくに竹島は日本の領土であるのに、韓国に占領されている。日本政府は韓国政府に対して一貫して「韓国の不法占拠だ」と抗議し、「国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)での法的決着」を申し入れているが、韓国側が応じない。国連安保理も「われ関せず」だし、そうなると日本は国連憲章51条で認められている二つの自衛権を行使するしかない。
 言っておくが、私は「軍事力で竹島を奪還すべきだ」などと言いたいのではない。小学生の教科書に「竹島は日本の領土」と明記させておきながら、韓国
に占領されている状態を子供たちにどう学校で説明するのかという問題を問題にしているのだ。
 安倍内閣は竹島返還にアメリカの支援を期待しているのかもしれないが、かつては「韓国の不法占拠」に抗議していたアメリカも、今は「だんまり」を決め込んでいる。肝心の個別的自衛権すら行使できない状態なのに、集団的自衛権どころではないだろう、と言いたいだけだ。
 だから私は今日のブログの冒頭で、オバマ大統領は尖閣諸島については日米安保条約5条の適用範囲に入ると明言してくれたが、いつそのスタンスをひっくり返すかわからないよ、と書いたのだ(オバマ大統領がひっくり返すことは考えられないが)。とりあえず現時点では中国の海洋進出を阻止することが極東におけるアメリカの国益に大きな影響を及ぼすから中国に対する牽制球を投げてみたというのがオバマ大統領の本音で、実際に日中で火花が散る事態になった時、アメリカがどう出るかはふたを開けてみるまでわからない。パワー・ポリティクスの世界とは、そういう世界であって、日本人は国際情勢についてあまりにも情緒的すぎる。日本人の国際感覚を情緒的にしてきたのは政府にも責任はあるが、メディアの責任も大きい。
 情緒的すぎるのは、憲法についてもそうだ。左翼政党やいわゆる「市民団体」が勝手に「平和憲法」と定義づけるのはいいとしても、メディアが同調して「平和憲法」と定義して矛盾を感じない感覚が私には信じがたい。
 私は何度も書いてきたが、「現行憲法無効」論である。理由についても何度も書いてきたが、現行憲法は占領下において制定された憲法であり、サンフランシスコ講和条約締結で独立を回復して主権国家になった時点で現行憲法は法的に無効になっていたはずである。その時点で改めて主権国家としての尊厳と国際社会に対して負うべき責任を明確にした憲法を制定すべきだった。その新憲法が、条文において現行憲法とまったく同じになったとしても、それは日本国民の総意として制定された憲法ということになり、法的にも有効である。その手続きを現行憲法は踏んでいない。だから私は現行憲法は無効だと主張しているのである。
 私も、「平和憲法」という定義は否定しているが、現行憲法の底流に脈々と流れている平和主義の考え方は基本的に尊重しているし、新憲法を制定する場合も現行憲法の平和主義は永続的に継承すべきものと考えている。ただ、現行憲法が制定された当時と、いまの日本が国際社会で占めている立場や地位は大きく異なっている。日本は自国の平和だけ考えていればいい、といった一国平和主義は国際社会から受け入れられない。そういう意味で安倍総理が国際平和の実現と維持に対して、現在の日本が国際社会で占めている地位にふさわしい責任を果たす義務があり、それを「積極的平和主義」と主張しているのであれば、私も諸手を挙げて支持したいのだが、肝心の安倍総理が「積極的平和主義」の
概念を明確にしないから、安倍総理がどういう国づくりを目指しているのかが
よくわからない。うかつには安倍総理の「積極的平和主義」を支持できないのはそのせいだ。
 安倍総理自身は、「外国の首脳たちから安倍政権の積極的平和主義は歓迎されている」と主張するが、日本人の私たちが理解できないのに外国の首脳が理解できるというのも不思議な話だ。

 中国の尖閣諸島領有権の主張は1971年から活発化しだした。1968年の海底調査で東シナ海の大陸棚に膨大な石油資源の埋蔵の可能性が指摘されたのとである。中国の主張は、①尖閣諸島は中国の大陸棚に接続している、②古文書に琉球への渡航の際に尖閣諸島を目印にしていたとの記述があり尖閣諸島を最初に発見したのは中国だ、という二つである。さすがに石油が埋蔵されたことが分かったから、といった主張はしていない。
 が、70年以前に用いていた中国の地図や公文書では尖閣諸島は日本領であることが明記されており、またアメリカの施政時代においても米国統治に抗議したこともない。こうした経緯から日本側は尖閣諸島に領有権問題は存在しないという立場をとっている。
 尖閣諸島の領有権についてはかつてブログで書いたことがあるが(いつだったか記録を探したが、かなり前だったため見つからなかった)、航路の目印にしていた時代があったなどという主張が国際的に領有権の存在理由として認められたケースは皆無であること、明清時代を通じて中国が尖閣諸島に上陸したこともなければ実効支配した事実もないことから、客観的に見ても中国の主張には無理があると書いた記憶がある。また当時は琉球王朝は中国の属国的状況にあり、そのため中国・琉球間の渡航が行われていたという事実が前提であり、琉球(沖縄県)の日本への帰属を認めている以上、論理的整合性にも欠けると書いたが、今一度確認のためウィキペディアで尖閣諸島の領有権問題を調べ直したところ、最近中国は沖縄についても領有権を主張する構えを見せつつあるらしい。私のブログを中国人が読んでいることは100%ありえないから、中国政府自身が尖閣諸島だけを自国の領土と主張することは論理的整合性に欠けることを理解したようだ。
 が、沖縄もかつては中国の属国だった時代があると中国の領有権を主張するなら、朝鮮の方が中国に対して属国的立場をとっていた期間も長いし、属国性も琉球よりはるかに大きかった。実際豊臣秀吉が朝鮮征伐を行った時には中国は朝鮮の集団的自衛権行使に応じて軍事的支援を行い秀吉の野望を粉砕したが、薩摩の島津藩が徳川幕府の許可を得て琉球を攻撃・占領したとき、琉球王朝はやはり集団的自衛権を行使して中国に軍事支援を要請したが、中国は応じなか
った。中国が沖縄まで過去の従属関係を理由に領有権を主張するなら、韓国・北朝鮮に対する支配権の方が歴史的にも、また支配権の大きさからいっても、中国に領有権主張の正当性があることになる。中国の主張は牽強付会にも相当しない。
 ただ琉球民族は人種的に日本人とは異なるため、もし沖縄県民が民族自決権を求めて独立運動をはじめたら、問題が生じかねないと私は思っている(沖縄県民に独立を勧めているわけではない)。日本は聖徳太子の憲法17条(※後世の創作説もあるが)以降「和を以て貴しと為す」という精神的規範を培ってきており、先の大戦時においても支配下に置いた朝鮮や台湾の人たちに対しても日本人と平等に扱い、教育制度の充実を図るなど融和的政策をとっていた。だからといって私は日本の「大東亜共栄圏」構想を支持しているわけではないが、「勝てば官軍、負ければ賊軍」といった世界共通の歴史認識の基準に疑問を呈しているだけである。
 
 明日からゴールデンウィークに入る。読者の方たちも行楽などのご予定があるだろう。私も一息入れたい。この続きは5月7日から再開する。ただ予告編的なことだけちょこっとお知らせしておこう。
 実は23日、集団的自衛権に重要な関係がある中央官庁の官僚に電話した内容だ。その官僚とのやり取りを再開後に書くつもりでいる。これだけは情報源を明かすわけにはいかない。大メディアだったら政府の弾圧からその官僚を守れるかもしれないが、私には不可能だ。だから「○○省庁の○○官僚」としか書けない。朝日新聞の記者のようなでっち上げ発言ではないことだけは私の名誉にかけてお約束する。

 

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