小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

黒川・前東京高検検事長への処分と退職金満額支給への疑問。

2020-05-23 07:57:13 | Weblog
 黒川・東京高検検事長が、22日、職を辞した。その前日、黒川氏は辞表を提出したらしい。ただ、提出した相手は稲田検事総長か森法相かは不明。というのはいまだに法務省と検察庁の関係がよくわからず、そもそも検察についての位置づけも安倍総理と森法相の間で認識が違っているからだ。安倍総理は検察の「強い独立性」を認めながら、検察官は「行政官である」としている。一方森法相は検察の独立性を完全に認めている。一方、黒川氏の麻雀問題については安倍総理は何も語らず、森法相が記者会見の場で、「黒川氏の定年延長問題」についても責任を一身に負う発言をし、記者から「では、どう責任を取るのか」と追及されたときは、ちょっと言葉を詰まらせながら「総理に進退伺を提出したが、強く慰留された」と述べるにとどめている。安倍総理はいまのところ、森法相の事実上の辞意を「強く慰留した」理由については何も語っていない。
 私自身は、ある意味では今回の問題は検察の在り方について考え直すいい機会になったと思っている。検察・警察があまりにも強い権限を持ちすぎると韓国のような状況になりかねないし、日本でも郵便料金割引不正事件を捜査していた大阪地検特捜部が当時の村木厚子・厚労省障害保健福祉部企画課長を無理やり有罪にするため、この事件の担当主任検事だった前田恒彦氏が証拠をねつ造するなどの犯罪をおかし(前田氏は懲役1年半の実刑になった)、検察の捜査に対する国民の目も厳しくなった。その後、取り調べの可視化などの改革も進められたが、こうした流れの中で「黒川事件」が生じたといっていいだろう。私は前回のブログで民主主義制度の基盤の一つである「三権分立」はもう賞味期限切れになっており、検察・警察を司法にも行政にも属さない独立機関として位置付けて「四権分立」にすべきだと訴えたが、そうした民主主義制度の改革も考えるべき時期に来ていると思う。ただ、検察・警察の独立性を強めすぎると問題も生じかねないので、検察権・警察権の行使については司法・行政からも独立した第三者機関(裁判官OB,検察官OB,警察庁OB,大学法学部の教授・名誉教授などで構成)による監視体制を確立すべきだとも主張した。
 それはともかく黒川氏への処分が甘すぎるという批判がメディアや国民の間で沸騰している。黒川氏と雀卓を囲んだ(元?)社員の勤務先だった朝日新聞の内部調査によれば、元社員が黒川氏と雀卓を囲んだのは3年ほど前から(ということは黒川氏が法務事務次官だった時期から)月に2,3回のペースで麻雀をしていたという。同じ職場の人だったら月2、3回のペースというのは常習的とは言えないだろうが、外部の人間、それも情報欲しさに黒川氏の相手をしたとしか考えにくい人たちとの回数と考えると、当然他の新聞記者とも麻雀をしていただろうし、勤務先の同僚や部下ともしていただろうから常識的には常習者とみていいと思う。
 そう考えると、とくに内閣官房長、法務事務次官を経て東京高検検事長の職にあり、次期検事総長に据えるため「法律解釈を変更」(安倍総理)してまで定年を6か月延ばされたことを百も承知していた黒川氏が、しかも新型コロナ禍で多くの国民が外出自粛の要請に従い、また3密状態になりかねない業種が休業要請を受けて苦しんでいる中での麻雀は「軽率のそしり」では済まされないだろうというのが、私も含めて一般国民の率直な感情だろう。だとすれば、黒川氏に対する処分が懲戒に相当しない「訓告」というのはやはり甘すぎる処分と思わざるを得ない。
 問題は処分の甘さだけではない。黒川氏に対する退職金問題だ。前出の前田氏によれば、黒川氏の退職金は「基本額」が5437万9722円、「調整額」が451万3516円で、合計5889万3238円の満額が支給されるようだ。前田氏は黒川氏に対する処分「訓告」が違法だと主張しているが、その判断をともかく、少なくとも黒川氏の辞表は即受理すべきではなく、「預かり、調査完了まで謹慎」処分にしたうえで、常習性について徹底的に調査すべきだろう。
 さらに、仮に常習性はなかったとしても、黒川氏の任期(定年)は今年8月まで延ばされている。民間企業の場合は、退職金が満額貰えるのは「定年まで勤めあげたとき」か「会社都合による退職」の場合だけである。それ以外の定年前の退職は「自己都合退職」扱いになり、会社によって退職金規定は違うかもしれないが、大半の会社は退職金を半減している。で、私は22日、最初に検察庁に電話したが、「法務省に聞いてくれ」と言われ、次に法務省に電話したら「人事院に聞いてくれ」、人事院に電話したら「内閣人事局に聞いてくれ」とたらい回しにされたが、やっと内閣人事局に問い合わせることができた。その結果、国家公務員の場合も定年前の自己都合退職の場合は退職金は何割か減額されるという回答を得た。そうなると、黒川氏の場合も、定年は今年8月まで延期されており、したがって5月22日での退職は誰がどう考えても「自己都合退職」に相当する。
 菅官房長官は「規定にのっとって支給します」と記者会見で述べたが、内閣人事局の説明によれば、黒川氏の辞職は「自己都合退職」以外にはあり得ず、退職金も満額支給はありえないということになる。それとも「安倍総理都合」の退職という解釈をして満額支給することにしたのなら、国民にはっきりそう説明してほしい。

【追記25日】 今朝6時配信の共同通信報道によれば、やっぱり黒川氏の処分は懲戒でもなければ「自己都合退職」でもなく、「安倍総理都合退職」(民間企業の場合の「会社都合退職」に相当)だったことが判明した。黒川氏の退職金が満額支給になった理由が、共同通信の報道で明らかになったのだ。とりあえず、共同通信の報道を転載する。

 賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長(63)の処分を巡り、事実関係を調査し、首相官邸に報告した法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していたが、官邸が懲戒にはしないと結論付け、法務省の内規に基づく「訓告」となったことが24日、分かった。複数の法務・検察関係者が共同通信の取材に証言した。

 安倍首相は国会で「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」と繰り返すのみだった。確かに訓告処分の主体は検事総長だが、実質的には事前に官邸で決めていたといい、その経緯に言及しない首相の姿勢に批判が高まるのは必至だ。

 安倍総理が第2次政権後、これで「解釈変更」したこと(検察庁法改正など未遂も含め)は何回目になるのか。今日もまた、緊急事態宣言解除の基準を「解釈変更」して首都圏の1都3県と北海道を一気に解除するようだ。その解釈変更に協力したのがNHKだ。
 NHKはこれまで未解除の自治体の感染率を自治体ごとに表記してきた(NHKホームページ)。実は政府の解除指針は非常に分かりにくい表記になっていた。「直近の7日間で感染者数が10万人当たり0.5人を下回ること」という解除基準を示してきた。この基準の意味を正確に理解できた人はたぶんほとんどいないと思う。私自身は、例えば東京都の場合、直近の7日間の新しい感染者数の合計をいったん10万人当たりの人数に換算し(つまり10万人当たりの感染者数の累計)、さらにその人数を7で割って7日間の平均感染者数が0.5人以下になったときが解除基準達成ではないかと考え、厚労省コールセンターに「こういう考え方でいいのか」と確かめたのが、たぶん5月4日に政府が緊急事態宣言解除の目安を5月31日まで延ばした直後だったと記憶している。そのときは「その通りです」と回答をもらった。
 ところが、23日になり、急に首都圏の1都3県の解除が前倒しになるような報道が相次ぎ、その時点では東京都は今日(23日)明日中に解除基準をクリアすることがほぼ確実になり、埼玉・千葉はすでにクリアしていたのだが、神奈川はクリア不可能であることが確実になっていた(23~25日の3日間感染者ゼロでもクリア不可能の状況。その場合でも神奈川の感染者数は0.53人と基準を上回るから)。で、23日、再び厚労省コロナセンターに電話をして、「関西圏の大阪・京都・兵庫はすべて基準をクリアしたため前倒しで解除になったが、首都圏では神奈川が絶対にクリアできない。首都圏は関西圏と同様ブロック解除ということになっており、神奈川がクリアできなければ首都圏ブロックはすべて解除できないはずだが」と聞いたところ、「総理がどういう発言をされるかわからないが、首都圏全体として判断されるのではないか」との返答だった。で、その日はNHKの「ふれあいセンター」は営業時間が終わっていたので、24日に電話して上席責任者に聞いたところ(民放の視聴者窓口はすべて閉鎖中)、「首都圏ブロック全体の平均値で判断するのではないか」と言われ、急いでNHKのホームページを見たら、従来の都道府県単位の感染率表示だけではなく、首都圏ブロックの感染率表示もされていた。すでに官邸からNHKに対して首都圏ブロックでの感染率表示をするようにという指示があったことを意味する。
 首都圏ブロックで一気に解除する方針に変えたのなら、関西圏もブロック全体の平均値を基準になぜしなかったのか、そうしていれば、関西圏はおそらく数日早く前倒しで解除されていたはずだ。これまた安倍内閣が解除基準の解釈変更で、首都圏ブロックすべてを今日(25日)に一気に解除してしまおうということのようだ。ということは安倍内閣にとっては「法あって法なし」「施策の基準あって基準なし」つまり場当たり的な人気取り政策を実行できるようにするために、法解釈、基準解釈を自由気ままに変更する権利を国会が総理にいつ与えたのか。ま、もっとも今更首都圏ブロックの1都3県を緊急事態宣言解除したところで、内閣支持率が回復するとは思えないけどね。
 でも、北海道は首都圏ブロックに入っていない。北海道まで宣言解除するらしいから、どういう屁理屈で解除するのかね。まさか、国会議事堂や首相官邸、議員宿舎や議員会館などを北海道に移して首都移転するからとでもいうつもりなのかね。それなら、納得!


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