第2次世界大戦後、平和主義を国是として「敵国」を作ってこなかった日本が、「敵国」を想定して戦前の軍事大国に回帰しようとしている。
第2次世界大戦時(日本にとってはアジア太平洋戦争)での「敵国」は中国、アメリカ、イギリス、オランダ(ABCD連合)だった。ソ連との戦争だけは何が何でも避けたかったが(実はドイツが独ソ不可侵条約を破棄してソ連と戦争を始めたとき、ドイツがソ連侵攻に成功していれば関東軍はソ連領に攻め込むつもりだった)、ソ連がドイツを撃破し、ドイツが連合国軍に無条件降伏した後、東欧諸国の支配を成し遂げたソ連がアジア支配に矛先を向け始めた。
- アメリカが広島・長崎に原爆を投下した本当の理由
ソ連のアジア侵攻に危機感を抱いたのがアメリカ。ヨーロッパ戦線と太平洋戦争で疲弊しきっていたアメリカは中国の共産化を武力で阻止することができず、西側の最後の砦として日本へのソ連の侵攻だけはいかなる手段を使っても防ぐ必要を感じていた。
アメリカは今でも広島・長崎への原爆投下について二つの理由を挙げて正当化している。
- 米軍兵士の犠牲をこれ以上増やさないため
- 早期に戦争を終わらせるため
この二つの理由のうち、一つ目はウソ。しかし二つ目は本当だ。
太平洋戦争の転機はミッドウェー海戦(1942年6月5日)と言われている。確かにこの海戦で日本海軍は壊滅的な打撃を受け、その後は防戦一方になっていった。が、アメリカの対日戦争作戦が大きく転換したのは44年6月15日のサイパン島上陸作戦以降である。サイパン島やその周辺諸島に空軍基地を整備して以降、米軍は対日攻撃の主力を空爆に転換する。
もっとも日本軍部も陸海軍で対米戦争作戦が必ずしも同一歩調ではなかったのと同様、アメリカも戦争作戦を空爆一本に絞ったわけではなく、沖縄攻撃など対日戦争上それほど大きな意味を持たない上陸作戦に膨大な犠牲を払ったりした。実際、広島への原爆を投下した爆撃機はサイパン島周辺の空軍基地のひとつテニアン島から飛び立っている。また日本も沖縄で莫大な犠牲を払っても、その時点では降伏していない。
アメリカが上陸作戦を完全に中止したのは、沖縄作戦であまりにも多くの犠牲者を出したためである。実際、沖縄作戦以降、アメリカの対日上陸作戦を停止している。なお東京大空襲は44年11月から断続的に始めたが、米軍の沖縄上陸作戦は翌45年4月1日からである。日本は首都・東京を空襲されても手も足も出なかったのに、アメリカが沖縄上陸作戦にこだわった理由は分からない。米軍部も一枚岩ではなかったのだろう。
また空襲は東京だけでなく、大阪、横浜など日本中の大都市いたるところに行われた。当然これらの空襲作戦では米軍兵士の犠牲はほとんど生じていない。沖縄を占拠することに何らかの軍事的意味があったのかは、日米いずれの戦史家も検証していない。太平洋戦争史を紐解く場合、最も無意味な作戦だった。
要するにアメリカの日本の大都市に対する集中的な空爆作戦は44年から始めており、沖縄上陸作戦以外には米軍の人的被害はほとんど出していない。だから「これ以上、米軍兵士の犠牲を出さないため」という原爆投下の理由は全くのウソであり、こじつけにもならない。
が、もう一つの理由である「早期に戦争を終結させるため」というのは間違いなく、そうせざるを得ない状況にアメリカはあった。その目的はソ連のアジアへの侵略の野望をどうやって阻止するかにあった。
東欧諸国を支配下におさめたソ連スターリンは米ルーズベルトに対して対日参戦する条件として北海道をアメリカとソ連で分割支配しようという提案をしている。さすがにルーズベルトはこの提案は拒否したが、スターリンの野望をアメリカは知ることになった。
日本に無条件降伏を要求したポツダム宣言は45年7月に行われたが、この時の宣言にはスターリンは署名していない。この時点では日ソ中立条約がまだ有効だったため、スターリンに代わって中国の蒋介石が署名した。が、東欧を支配したソ連がアジアに触手を伸ばすだろうことは目に見えており、アメリカはソ連が対日参戦に踏み切る前に日本を降伏させる必要があった。ただ無意味な大量殺人しか意味を持たない広島・長崎への原爆投下は、日本をソ連に占領させないためにアメリカにとっては必要欠くべからざる作戦だったのだ。
実際、アメリカが広島に原爆を投下した直後の8月8日、ソ連はポツダム宣言に署名すると同時に日ソ中立条約を破棄して対日宣戦布告し、満州や北方領土など日本の支配下にあった地域を侵略する。この行為の違法性は、日ソ中立条約破棄より、ポツダム宣言の署名国になっていながら、日本が宣言を受諾したのちも日本への侵略をやめなかったことである。
- 日本の「敵国」は中国か北朝鮮か、それともロシアか
岸田内閣は12月16日、わが国の安全保障・国防政策の基本方針「国家安全保障政策(NSS)」を記した3文書を閣議決定し発表した。
NSSは「わが国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境のただなかにある」と位置づけ、その根拠として「これまでになり最大の戦略的挑戦」(中国)、「従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威」(北朝鮮)、「安全保障上の強い懸念」(ロシア)とした。
つまり、この3国は「日本の敵国である」と国際的に宣言したに等しい。
が、この3国から日本は敵視政策をとられてきたと言えるのだろうか。
例えば北朝鮮。まだ核弾頭は搭載していないようだが(ミサイルに搭載できるほど核の小型化には成功していないためと思われる)、ミサイルをしばしば発射している。日本にとっては迷惑極まりない行為だが、日本を標的にした発射実験ではない。国民生活が疲弊しきっているのに核ミサイル開発に北朝鮮はなぜ狂奔するのか。
実はアメリカがレーガン大統領の時代に、旧ソ連と軍拡競争を行った。その軍拡競争で敗北した旧ソ連は体制崩壊に追い込まれたのだが、その時旧ソ連圏でアメリカに一番近い国である北朝鮮に対して「悪の枢軸」「ならず者国家」「テロ支援国家」と名指して非難を繰り返した(金日成時代)。
朝鮮戦争時代、北朝鮮は中国から軍事支援を受けていたが、金日成は毛沢東思想とは別の主体思想を掲げ、中国の支配下に入ることを拒んだ。その結果、日本や韓国のようにアメリカの支配下に入ることによってアメリカの核の傘に守られるといった安全保障策をとることができず、アメリカの核の脅威の前に自前で核ミサイルを開発せざるを得なくなったというわけだ。もし金日成が日本や韓国のように主権国家としての矜持を捨てて中国の支配下に入っていれば、レーガンが北朝鮮に対する敵視政策をあらわにしたとき、中国は「もし北朝鮮が攻撃されたら、我々が核で北を守る」とアメリカをけん制していただろうし、北朝鮮も中国が核の傘で保護してくれていれば、あえてアメリカに対抗して核ミサイルの開発に狂奔することはなかったはずだ。中国と北朝鮮のこうした微妙な関係を私たち日本も理解しておく必要がある。
また、もし日本がアメリカの支配下に入ることを拒んで主権国家としての矜持を維持する道を選択していたら、日本は旧ソ連や中国の核ミサイルの脅威に直接さらされていただろうし、例えば毛沢東やスターリンから「悪の枢軸」「ならず者国家」「テロ支援国家」などと露骨な敵視政策をとられていたら、日本も核ミサイル開発に狂奔せざるを得なくなっていたはずだ。
確かに金正恩は一時「朝米有事の際は、日本と韓国が真っ先に火だるまになる」と、日本を敵視するような発言をしたことがあったが、それはまだグアムや米本土まで届くミサイルが開発できず、日本や韓国の米軍基地を攻撃するという意味で、それ以上でも、それ以下でもなかった。だから、この発言に日本が過激に反応したことで、それ以降、北朝鮮は日本をいたずらに刺激するような発言は慎んでいる。
- 「台湾有事は日本有事になる」というレトリックのウソ
台湾をめぐってはアメリカと日本の立場は微妙に違う。ニクソンが日本の頭越しに中国を訪問し、毛沢東・周恩来との間で国交を正常化したとき、ニクソンは「一つの中国」を認めた。当時、ベトナム戦争は激化の一途をたどっていたが、中国側は「一つの中国」の見返りにアメリカの北ベトナム攻撃を容認、アメリカは北ベトナムへの海上封鎖や北爆を再開している。その結果、北ベトナムと中国の関係は悪化し、北ベトナムは旧ソ連に接近する。
この「一つの中国」容認はアメリカ議会で紛糾し、アメリカと台湾の政治的関係は表向き遮断したが、外交機関は名称を変えて台湾に存続させ、台湾との軍事同盟関係も継続することにした。アメリカの対台湾政策がダブル・スタンダードと言われているのはこうした経緯による。
一方、日本は米中国交正常化に驚き、田中角栄総理が慌てて中国を訪問、周恩来との間で国交正常化を果たす。日本は直ちに在台湾の日本大使館を閉鎖し、以降政治的外交関係は消滅した。なお毛沢東はニクソンとは会談したが、田中は会うことさえ許されなかった。
台湾有事のリスクが表面化したのは習近平が覇権主義を強めだしたことによる。香港の民主派弾圧や新疆ウイグル族の中国化強行も習近平の覇権路線の一環と言えるが、台湾に対する「一つの中国化」政策がアメリカを強く刺激した。
インド太平洋地域の覇権を中国に奪われたくないアメリカは「力による現状変更は認められない」と習近平の「一つの中国」化政策に強く反発、アメリカの支配下にある日本も「一つの中国」路線をかなぐり捨てることにした。12月10日には萩生田政調会長が訪台、蔡英文総統と会談して「日台の安全保障協力の強化」を約束した。日本のメディアでは報道されていないが、ダブル・スタンダードに転換した日本に習近平は怒っているはずだ。
言っておくが、台湾有事が自動的に日本有事になるわけではない。私は中国による台湾支配には反対の立場だが、基本的には「一つの中国」化を容認するか否かは台湾の人々が決めることと考えている。ただ実際には、そう簡単に中国による台湾支配は成功しないだろうと思っている。
たとえばウクライナ戦争。ロシアとの戦力比較の上では圧倒的にロシアのほうが有利と思われていたが、実際の戦況はウクライナ有利に進んでいる。台湾でも蔡英文総統の支持率は極めて高く、中国統一を望む「国民」は圧倒的に少数派だ。もし習近平が軍事力で台湾の中国統一を強行しようとした場合、ウクライナ戦争の二の舞になりかねない。それにロシアと違って中国はEU諸国との関係も今のところ良好だが、もし中国が台湾に軍事侵攻でもしたら、関係が一気に悪化しかねない。習近平もアメリカとの衝突がEU諸国との関係が最悪の状態になりかねないことは百も承知のはずで、そういうリスクを冒してまで台湾の軍事的統一を強行したりするほどのバカではない。もし台湾統一を強行するとしたら、台湾政府を香港のように親中国派が占める事態が生じたときだろう。
実は香港も、多くの人たちが勘違いしているようだが、いまでも「一国二制度」は維持されている。法律も本土とは違うし、いまでも香港は資本主義体制である。現に香港の法定通貨は中国元ではなく香港ドルである。
もちろん習近平が香港の中国化の野望を捨てたわけではなく、「一つの中国」への地ならしとして国安法を制定して香港の民主派を弾圧したことは周知の事実だが、それも香港の政権が親中国派で安定していたからできたことで、いまの台湾に対して国安法を適用しようとしても簡単ではない。だいいち、香港の警察権力と違って台湾の警察権力が国安法による民主派の人々を取り締まるようなことは絶対にしないからだ。
そういう意味では日本にとっては台湾有事はウクライナ有事と同様、日本有事にはなりえない~~はずだった。が、萩生田氏が蔡英文と安全保障についての協力関係を強化する約束をした以上、台湾有事が生じたら、日本に飛び火するのではなくアメリカと一緒に台湾有事に軍事的に参加することになる。つまり自ら日本有事にすることを意味し、中国が反発するのは当然といえよう。
- ロシアを「平和国家」にするカギは日本が握っている
ロシアがウクライナに侵攻した理由については諸説あるが、メディアがロシア側の情報をあまり流さないので不明なことは多々ある。
ただかつてはウクライナは親ロ政権が君臨し、ロシア系住民が多く住んでいた東部地域ではかなりおいしい思いをしていたようだ。親EU政権が誕生して東部地域で騒擾が頻発し、圧迫されるようになったロシア系住民がロシア政府に助けを求め、彼らを保護するという名目でウクライナに侵攻したようだ。
周知のように、ロシアは広大な土地と豊富なエネルギー資源に恵まれている。工業立国を目指すには最高の条件を有している。が、産業革命でエネルギー資源の重要性がクローズアップされるまで、ロシアは貧しい農業国家だった。土地は広いが、いわゆる「北の大地」で肝心の農作物の収穫が少なかった。土地の広さに比べて人口があまり増えなかったのはそのためだ。
いまも、ロシアの主要産業はエネルギー資源の輸出以外は兵器産業くらいだ。しかし宇宙開発ではしばしばアメリカを追い抜くなど、最先端技術の素地はある。日本とは北方領土問題が残っているが、ロシアにとっては財政的に北方領土はお荷物になっているはずだ。実際、たとえ北方領土が日本に返還されても、日本にとっても漁業拠点にするくらいしか利用価値はない。なまじ日本人が居住するようになると日本政府は大変な財政負担を背負うことになる。こうした事情は別に北方領土だけのことではなく、日本以外でも寒村やへき地に住んでいる人たちのための財政負担はかなり大きい。
確かに大都市は公共の利便性が大きい。公共サービスや行政に注がれる税金も膨大である。が、大都市に住む人の数で割れば一人当たりへの負担額は寒村へき地住民の類ではない。
そういう観点からロシアの将来を考えると、ウクライナに住んでいるロシア系住民には母国に帰ってもらって、近代工業の担い手になってもらい、平和国家への道を歩んでもらいたい。そのお手伝いを、日本ならできる。また日本が仲介してアメリカとの軍事対立も縮小に向かえば、ロシアにとっても北方領土の維持は軍事的には意味を持たなくなり、新たな展開も考えられる。
ロシアとロシア人が豊かになる道は、こういう方法があるよと、日本はプーチンに働きかけるべきだ。ロシアが平和国家を目指すようになれば、NATOも必要がなくなるし、ヨーロッパ全域が平和になる。ヨーロッパが平和になれば、核やミサイルも必要なくなるではないか。
- 日本の「抑止力強化」はアジアの軍事的緊張を高める、これだけの理由
17,18日に毎日新聞が行った世論調査によれば、防衛費を大幅に増やすことに賛成48%、反対41%だった。また反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有については賛成59%、反対27%。ただし財源については増税でが23%、反対69%という結果だった。
この世論調査の結果を見てつくづく思ったのは、政府のマインド・コントロールにメディアも国民も容易に左右されるということ。
マインド・コントロールという言葉は旧統一教会問題をめぐって広く流布されるようになり、私は今年の流行語大賞に選ばれるのではないかとさえ思っていたくらいだ。が、その言葉の意味するところは安倍元総理が野党の政府批判を「印象操作」と切り捨てたこととほとんど同意だ。そして印象操作を最も有効に駆使して1強体制を作り上げたのが、実は安倍氏だった。
たとえばモリカケ問題で安倍内閣が窮地に陥った時、棚ボタ的な幸運を利用した。北朝鮮が襟裳岬上空をかすめるミサイルを発射したため、これ幸いと「国難突破解散」に打って出て衆院選で大勝、1強体制を築いた。
北朝鮮のミサイルは日本を標的にしたものではない。ただ北朝鮮は地政学的に遠距離ミサイルの発射実験をする場合、当初は高度を上げることで飛距離を計測していた。実際、当時の北朝鮮はミサイル実験を否定し、「衛星打ち上げのロケットだ」と主張していたほどだ。
今回の防衛政策転換で日本もミサイルを持つことになりそうだが、日本の場合は他国の領空域を通過しないでミサイル発射実験をいくらでも行えるが、北朝鮮は不可能で。日本を敵視していない証拠に、北朝鮮が太平洋目指してミサイルを発射する場合、日本の陸地上空は避けて津軽海峡上空を通過するように配慮している。北朝鮮の目的は明らかで、もしアメリカと軍事衝突に至った時は、アメリカもただでは済まないぞということをアメリカに知らしめるためだ。
実際、米韓軍事演習に対してきたが厳しく対応しているのは、米韓軍事演習が北を標的にしたものだからだ。
同様に、もし日本政府が本当に中国や北朝鮮、ロシアの軍事力を脅威に感じるのであれば、日米軍事演習を日本海や東シナ海、オホーツク海で行わなければ中・北・ロに対する抑止力にならない。たとえば「台湾有事は日本有事だ」という論理が正当であるならば、中国の狙いは「台湾の次は尖閣諸島だ」という前提をたてないと論理的整合性が取れない。
中国が尖閣への野望を持っていることは事実だが、尖閣諸島を日本領土として確定するには、アメリカの歴代大統領が「尖閣は安保条約5条の範疇だ」と口約束してくれている間に尖閣諸島に自衛隊基地を設置するとか漁業拠点や灯台を設置して実効支配に踏み切るべきだ。少なくとも中国の尖閣周辺海域への軍用船の不法侵入に対して日米軍事演習で中国を威嚇すべきではないか。
が、ミサイルをいくら買っても、日本は日本海や東シナ海、オホーツク海への発射実験はしないだろうし、日米軍事演習も従来通り太平洋でしか行わない。つまり多額の費用を払ってミサイルなどをアメリカから買っても、肝心の実用的発射実験などできもしないのだ。
しかし、中国や北朝鮮、ロシアは日本の防衛政策転換を、「日本はわが国を敵視することにした」と間違いなく受け止めるし、国内に抱えている諸問題から国民の目を「反日」にそらそうとすることだけは間違いない。つまり、日本の防衛政策の転換は、日本の安全保障上のリスクがより高まることを意味するのだ。
あまりいい例えとは言えないが、良好な関係にある二つの暴力団が、関係良好なうちは互いに武力を強化しようとはいないが、いったん関係がこじれると双方が軍拡競争を始める。国家間の関係も同じで、いま日韓関係は戦後最悪と言える状況にあるが、それが軍事衝突に至らないのは両国がともにアメリカに忠実な属国であるため、それが両国にとって最大の安全保障になっているからだ。暴力団同士の対立も、この暴力団がともに巨大な暴力団の支配下にあったら衝突は未然に防げる。国際社会における国家間の関係も暴力組織同士の関係とあまり変わらないといってよい。
なお岸田総理は防衛政策の転換に際し、「安全保障上のあらゆるリスクを想定し、防衛対策のシミュレーションを行った」と説明したが、日本から「敵国視」された中国、北朝鮮、ロシアとの関係は悪化せざるを得なくなる。ウクライナ戦争が思うように進まないプーチンが核兵器の使用をほのめかすようなリスクを岸田総理は想定しなかったのか。
万が一、これら「敵国」との関係が悪化して、核を有していない日本に対して核の脅しをかけてくることは想定外だったのか。少なくとも私だったら、日本が「防衛」を口実にしたとしても軍事力を強化した場合、そういう事態は当然想定する。そのうえで日本国民が核武装することまで「防衛力の強化」を容認するか、を深く考慮する。
そして日本の安全保障を高めるためには、軍事力の強化ではなく、あらゆる国と国隣国との良好な外交・経済・文化などの関係を構築することで、安全保障上のリスクを軽減する方法を選択する。たとえアメリカが不快に思ってもだ。