小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

朝日新聞が大混乱に陥っているーー民主主義とは何かが、いま問われている⑳

2018-09-17 02:20:48 | Weblog
昨日(20日)自民党総裁選が行われ、下馬評通り安倍総理が3選を遂げた。そして朝日新聞も大々的に報じたのだが、中学生の作文にも劣る記事が掲載された。そのことについては、このブログの末尾に【追記】として書く。

 自民党総裁選の報道で、朝日新聞が大混乱をきたしている。
 その原因は、私にある。
 経緯から説明する。何が混乱しているのかは、「後のお楽しみ」。

 通常国会が終了した途端、自民党は一気に総裁選モードに突入した。その時点では安倍晋三、石破茂、野田聖子の3氏が立候補するとみられていた。その後、野田聖子氏は必要推薦人20人を確保できずに立候補を断念、安倍現総裁と石破氏の争いに絞られた。
 当初、安倍陣営はいわゆる「地方票」(ここで鍵カッコを付けた意味が今回のブログのキーポイントになるので記憶しておいていただきたい)で石破氏に負けるかもしれないという危機感を抱いていた。そのため野田氏をあえて立候補させ、第1回投票で石破氏がトップになっても、ほぼ国会議員だけによる決選投票で逆転できると読んでいたのだろう。で、当初は安倍陣営は野田氏を立候補させるため、あえて安倍陣営から推薦人を出すことも考えていたようだ。
 が、肝心の野田氏がスキャンダルを生じ、安倍陣営から野田氏の推薦人に回ることを逡巡する議員が続出したこと、また安倍総裁自身がかつてやったことがない地方行脚をしたり、首相官邸に地方議員を招いて食事を共にして「地方票」固めに必死になるという「前代未聞の作戦」で、第1回投票でも総票の過半数を獲得できるという見通しが立ったため、あえて野田氏を立候補させる必要がなくなったというのが、野田氏立候補取りやめの真相だと思う。
 少し時間を巻き戻す。今年春ごろ、私は共産党本部に電話した。私自身は共産党支持者ではないが、共産党の政策には共感することも少なくない。私が電話したのは、朝日新聞が共産党の衰退についてかなりの紙面を割いた報道をしたためである。その新聞がいま手元にはないし、この原稿を書いている16日も明日17日も朝日は読者からの問い合わせに応じない体制をとっているため、記憶に頼って書いている。間違いがあったらコメントで指摘していただきたい。
 記事によれば、それまでの選挙では消去法で共産党に票を入れていた無党派層が雪崩を打つように立憲民主党に投票したこと、また共産党の機関紙「しんぶん赤旗」や「しんぶん赤旗日曜版」の読者も激減し、党員数も減少傾向にあるという記事だったと記憶している。しかし、メディアが毎月行っている世論調査の結果からすると共産党の支持率はほぼ3%前後を維持しており、共産党への岩盤支持層がそれほど減少したようには思えない。で、私は前回の衆院選で共産党がなぜ大敗したのか、共産党自身の総括を聞くことにしたというわけだ。
「選挙協力を行い、野党候補が一本化できた選挙区では立候補者を立てなかったためです」
 で、私はこう問い返した。
「もともと小選挙区では共産党は一人も勝てていません。前回の衆院選ではむしろ他党の協力を得て沖縄では一人勝っていますね。比例区で惨敗したのは選挙協力のためとは考えにくい。民主主義の国ではいいか悪いかは別にして選挙がすべてです。有権者も、どの政党に日本の明日を委ねるかの結果責任を負います。政党も有権者からの支持が激減したら、執行部は当然責任を取るべきです。共産党は当選議員数が約半減したのに、執行部はだれも責任を取ろうとしないし、また執行部の責任を問う声も党内で生じていない。そういう政党が、民主主義について声を大にする権利があるとは思えないのですが…」
「執行部に伝えます」
 怒ったような口ぶりで電話をガチャンと切られた。
 自民党本部に電話したのは、通常国会が終わって総裁選に突入した直後だ。
「これから総裁選が本番を迎えるが、自民党総裁は自民党国会議員の代表ですか。それとも全国の自民党員の代表ですか」
 電話機の向こうは無言だった。私がどういう意図でそういう疑問をぶつけたか、理解できなったのかもしれない。で、私が一方的に電話を続けた。その内容は7月25日に投稿したブログ『トランプ政権が仕掛けた貿易戦争の行方は?アベノミクスの失敗のツケが回ってきたよ!』の末尾に書いたので、その個所を貼り付ける。

安倍さんは総裁3選を狙って全国行脚中ということだが、それどころではないはずだ。こんな人を3期9年も総裁に抱くことに、自民党国会議員は恥ずかしいと思わないのだろうか?
ちなみに今年9月に行われる総裁選では国会議員票と党員票が1:1の比率になるという。自民党の国会議員総数は405人。一人一票を持つ。それに対して党員数は約107万人。107万人でやはり405票。国会議員は一般党員の2640倍もの権利があることになる。
いったい自民党総裁は党の代表なのか、それとも国会議員の代表なのか。国会議員の代表なら党員投票のような金だけかかることはやめたほうがいいし、党の代表なら国会議員の一票も一般党員の一票も同じ重みを持たなければならないはずだが…。もっともこうした代表選出方式は自民党だけではないが…。日本の政党には「民主主義」という言葉は禁句のようだ。

 私はこうも続けた。「日本の政党の代表の選出方法は自民党だけではない。アメリカでは共和党の大統領候補者も民主党の候補者の選出も、上院議員も下院銀も州知事も、投票の権利は一般党員と同じ一票だけです。日本の政党が、なぜ国会議員にだけ特別な権利を与えているのか理解が出来ない」
 そこまで話して私の意図がようやく分かってくれたようで、「おっしゃることはよくわかります。私も同感です。いただいたご意見は文書にして執行部に伝えます」と言ってくれた。
 いままで一般党員や地方議員のことなど見向きもしなかった安倍総裁が、今回の総裁選に限って「地方票」固めに奔走しだしたのは、私が自民党本部に電話したことと無関係ではないと思う。安倍さんが血眼になっただけでなく、安倍陣営の各派閥も一斉に「地方票」固めに全力を注ぎだした。まるで総裁選後の論功行賞を競い合っているかのようだ。
「地方票」の意味をネットで調べてみた。前回(2012年)の総裁選のとき朝日新聞がこう解説している(9月24日付朝刊)。

地方票の300票は、各都道府県連にまず基礎票として3票ずつ(計141票)を割り当て、残り159票を党員数に応じて振り分ける。持ち票が最も多いのは東京都連の16票。最少は岩手、徳島、沖縄など8県連の4票。地方票は都道府県連ごとに党員投票の得票数に応じ、ドント方式で配分される。

 私は8月中旬頃だったと思うが、NHKと朝日新聞に対して「地方票」という言い方はどう考えてもおかしい、表記を「党員票」にしてほしい、と要望を伝えた。
 自民党員は現在約107万人。一方自民党所属の国会議員は衆参合わせて405人。「議員票」は一人一票で405票。「地方票」は107万人で「議員票」と同じ405票。党のトップである総裁を選出する票の重みは、国会議員は一般党員(地方議員など無含む)の実に2600倍を超える。そのうえ第1回投票でどの立候補者も過半数に達しなかった場合は、ほぼ国会議員だけによる上位2者の決選投票で決めることになっている。一般党員の党費は年4,000円だから、その2,600倍の権利を有する国会議員は1040万円もの党費を払っているのだろうか。だとしたら、よほどの金持ちでなければ自民党所属の国会議員にはなれないことになる。共産党は自民党政治に対して「金持ち優遇政治」と批判するが、党運営の体質がそうなら、むべなるかなと言わざるを得ない。
 それはともかく、私の要望に対してNHKも朝日新聞も「報道部門に伝えます」と言ってくれた。結果はどうだったか。
 NHKは今回の総裁選については政治部記者やアナウンサー、字幕(テロップ)もすべて「党員票」に統一した。
 大混乱を生じたのは朝日新聞だった。「党員票」と表記した記事もあれば、従来通り「地方票」という表記をした記事が混同していた。その都度、私は朝日新聞に電話をして表記の統一を要請した。たまたま電話で私と話をした人が同一人物だったので、そうした経緯を朝日新聞側は否定できない。
 私が怒り心頭に達したのは、13日付朝刊の「自民党総裁選2018 識者に聞く」シリーズの1回目である。この回の識者はコラムニストの小田嶋隆氏だったが、記事の中で小田嶋氏は「党員票」と明確に話しているのに、見出しでは「地方票」と改変されていたのだ。
 実は朝日新聞は今回の総裁選報道では、少なくとも私の記憶にある限り、見出しで「地方票」という文字が躍ったのはこれが初めてである(今後は頻発するかもしれない)。
「この問題について電話するのは最後にします」と断ったうえで、朝日新聞のいい加減さをブログで書くことも伝えた。かつて読売新聞の読者センターと私はかなり激しいやり取りをして、2度にわたって読売新聞社のコンプライアンス委員室に事情をすべて文書で通告し、読者センターは責任者を含めてかなりのスタッフが入れ替えになったこともある。その経緯もブログで書いた。
 読者によっては「些細なこと」と思われるかもしれない。が、メディアにとっては記事によって表記がばらばらというのは決して些細なことではない。
 なぜ自民党はあえて党員票(正確に言えば「党員・党友票」だが、党友票は極めて少ないから省略してもいい)と言わずに「地方票」としてきたのか。実はネットで調べたが、党則には「地方票」とは明記されていない。「党員の投票による選挙人」という位置づけのようだ。実は「選挙人」という具体的な人物がいるわけでもない。いわばロボットのような存在と考えればいい。ロボットのような選挙人405人が47都道府県にそれぞれ党員数に応じて割り当てられる。例えば東京都に住民票を置く自民党員が全党員数の1割とすると東京都には40人の選挙人がドント方式で割り当てられる。党員票は各都道府県ごとに集計され、最多の票を獲得した立候補者にすべての選挙人が割り当てられる。こうしたやり方をドント方式(選挙人の総取り)という。
 実は前回の総裁選(2012年)では選挙人は300だった。総裁選には5人が立候補したが、選挙人は石破氏が165人を獲得し過半数を超えた。2位の安倍氏が獲得した選挙人は87人にすぎず、石破氏の約半分に過ぎなかった。僅差ならいざ知らず、党員の総意は明らかに石破氏に軍配をあげた。
 が、一人一票の権利を有する議員票では安倍氏が54票、石破氏が34表と20票の差で安倍氏が有利に立った。それでも党員票による選挙人と議員票の合計が全体の50%を超えていれば石破総裁が誕生したのだが、石破氏の獲得した票は合計で199票で総数の30%にとどまった。そのため上位2人による決選投票が国会議員のみによって行われ、有力派閥をバックに持っていなかった石破氏が涙を呑む結果になった。このことは何を意味するか。
 自民党員の総意を国会議員198人がひっくり返したことを意味する。民主主義の最大の欠陥は「多数決原理にある」ことは、これまでの民主主義シリーズで毎回書いてきた。「少数意見にも耳を傾けよ」というルールもあるが、採決に際して少数意見が採用されることは絶対にありえない。もし議長権限で少数意見を採用したら、そのこと自体が民主主義制度の破壊を意味する。
 実は自民党総裁選挙規定は、民主主義制度の破壊の上につくられている。自民党の総裁は、自民党所属の国会議員の代表ではなく、自民党員の代表であるはずだ。党員票に基づく選挙人の数で、石破氏は過半数を獲得していた。総裁が党員の代表であるならば、その時点で総裁選の決着はついていたはずだ。これほどあからさまな民主主義の破壊を、私は見たことも聞いたこともない。
 私が「地方票」と「党員票」の表記にことさらこだわったのは、単に表記がバラバラでもいいのかといった単純なことではなかったのだ。
 たとえば民間会社の株主総会では役員の改選を行う。この場合、投票の権利は株主が所有している株数によって平等に与えられる。単位株が100株の場合、1000株を持っていれば株主は10票の権利を持っている。所有株数に限らず一人一票の権利しか与えられなかったら、それは形式民主主義で、真の民主主義ではない。だから大株主が会社の経営権を握るのは当然のことだ。
 だから国会議員の場合、すでに述べたように一般党員の党費4000円の2600倍にあたる1040万円の党費を納めているのなら、まだ一般党員の2600倍の権利を与えられていたとしても、それは一つの政党の在り方として容認できないこともない(政党は民間企業とは違って利益団体ではないはずだが…)。
 確かにアメリカのように、国会議員も州知事も一般党員と同じ投票権しか持っていないということになれば、トランプ大統領のような政治音痴の大統領が登場するリスクはあるが、日本の場合は政党の代表者の立候補資格として「自らが国会議員であること、国会議員の推薦人が一定数必要なこと」という高いハードルを設けている政党が大半だから、政治経験がまったくないトランプ氏のような人物は政党の代表者には絶対になれない。
 朝日新聞の表記上の大混乱は、単にメディアとしてみっともないというだけでなく、そもそも民主主義という制度に対する哲学的理解が新聞社として皆無であることを意味する。強い反省を求めたい。リベラルを標榜している新聞社だけに…。

【追記】自民党総裁選で安倍総理が辛勝(あえて「辛勝」と書く)した翌日の朝日新聞朝刊は、党員・党友の投票について1本の記事だけを除いて見事に表記を「地方票」に統一した。
 私がこのブログを書く前に「地方票」という表記はおかしいと「お客様オフイス」に電話をしてきた経緯についてはすでに書いた。そしてこのブログを書く前は、朝日新聞は表記に混乱をきたしながらも、全体の流れとしては「党員票」という表記に移行しつつあった。
 が、私がこのブログで朝日新聞の表記についての混乱を批判した途端、朝日は表記を統一することにしたようだ。今朝(21日)の朝刊は1面トップから解説記事、「時々刻々」「社説」に至るまで、ものの見事に党員や党友による票を「地方票」というおかしな表記に統一することにした。
 それはそれで、海のものとも山のものともつかない読者の批判になんか応じられるか、天下の大新聞の「沽券にかかわる」というどこかの総理顔負けの「権威」を守ることを最優先したのだろうから、これ以上私ごときが天下の大新聞に刃向かったところで、風車に槍1本で突進したドンキホーテほどの効果もないので、これ以上刃向うのはやめる。
 で、これは嫌がらせではなく、朝日新聞の方針に相反する表記が堂々と載っているので、訂正分をお出しすることをお勧めする。例の「慰安婦誤報問題」事件以来、朝日は連日、訂正文の大安売りをしているから、今から指摘することも、大安売り記事の目玉になると思うからだ。
 この日の朝刊に「麻生・菅・二階氏続投へ「圧勝」できず、政権運営に影 安倍首相、自民総裁3選」という見出しの記事が載った。署名記事ではないが、かなりの扱いの記事だから、政治部の責任記事と考えてよいだろう。全文を引用しても意味がないから、肝心の箇所だけ引用する。(下線が問題の表記)
「総裁選では、国会議員票の8割超を固めた首相陣営が当初、党員票でも7割を獲得して圧勝し、石破氏をはじめ党内の異論を封じる筋書きを描いていた。ところが、地方票の獲得は55%にとどまり、議員票も当初見込みより減らした」
 私が17日に投稿したこのブログでは、記事によって表記がバラバラのケースが多すぎることを批判した。例外的に見出しの表記と本文記事での表記が異なるケースが(私が気付いた限りでは初めて)あったので、これは見過ごすわけにはいかないと思い、「お客様オフイス」に断ったうえで、ブログで告発することにした。いくらなんでも、一連の解説記事の中で、「党員票」と「地方票」をどういう理由で混同したのか。そもそも使い分ける必要などまったくない、同じ意味のことをわざわざ別の二つの表記で記事にする。アホとちゃうか!


【更に追記】 22日の朝日新聞朝刊は自民党総裁選の分析記事「地方票、参院選を懸念? 各地の獲得状況を分析 自民党総裁選」を載せた。この記事は署名記事である。その記事の冒頭で記者はこう書いた。
「20日に投開票された自民党総裁選で、安倍晋三首相を相手に善戦した石破茂・元幹事長が45%を獲得した「地方票」に注目が集まっている」
 通常、引用文中の鍵カッコは二重鍵カッコにするのだが、この引用については私は意図的に二重鍵カッコを付けなかった。この記事で、記者が「地方票」という表記に鍵カッコを付けたことを明確にするためである。「天下の朝日新聞」が、名もない一読者の批判に振り回されている実態が明白になった記事である。
 このブログでは書かなかったが、何回か朝日新聞の「お客様オフイス」に電話した際、私はこう主張したことがある。
「イラク・シリアにまたがる地域で一時勢力を拡大したイスラム過激派について、NHKはある時期からISと表示するようになった。が、多くのメディアは鍵カッコを付けて『イスラム国』と表示した。どうしても『地方票』という表記をしたいならば、自民党の党都合にすり寄るためではないことの証明のために、地方票という表記に鍵カッコを付けるべきだ」
 朝日新聞の「お客様オフイス」は、たぶん慰安婦記事誤報問題で社内が大混乱した時期からではないかと思うが、名称を「読者広報」から変更した。通常、広報はメディア関係の窓口である。別に「上から目線」の名称ではない。が、名称を変更することで、あたかも「読者に寄り添う」かのような錯覚を、朝日新聞自身が持つようになったのではないかと思う。
 名称変更だけではない。公称されている「お客様オフイス」の電話番号は大阪本社以外はナビダイヤルである。0570から始まるナビダイヤルは、受信者が電話料金を自由に設定できる制度だ。朝日新聞の場合、実質的にNTT料金とほぼ同じだが、携帯電話からは電話できない。おそらく、朝日新聞はNTTから通話料に応じたバックマージンを受け取っていると思われる。ナビダイヤルというのは、そういうシステムだからだ。
 活字メディアは、どこも経営が苦しい。だが、ほとんどの国民は知らないと思うが、活字メディアは政府と闇取引をしている。来年10月に引き上げられる予定の消費税で、政府は公明党の主張に配慮して軽減税率を導入する予定だが、軽減化の対象はスーパーなどで買う食料品だけではない。新聞や週刊誌、月刊誌などの活字定期刊行物も対象になっている。私は日本経済が消費税を引き上げられる状況にあるかどうかに疑問を抱いているが、引き上げる場合には軽減税率を導入すべきではないと主張してきた。食料品に関して言えば、「オージービーフの切り落としと、銘柄和牛のひれ肉が、同じく軽減税率の対象になることに国民が納得するか」と。さあ、朝日新聞はどう答える?