迷宮映画館

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コミッサール

2012年12月31日 | ロシア映画シリーズ
コミッサールとは、政治局員という意味らしいのだが、いつものようにさっぱり分からずに鑑賞。ソ連革命軍には、必ず政治局員という役柄の人員がついていて、様々な指導をするのだが、主人公の女性もそのコミッサールだった。幾多の戦場を駆け抜け、男・女を問わずに戦ってきたが、気づいた時にはお腹が大きくなっていたと。

仕事を全うできず、子供を産むために、ユダヤ人の家庭に身を寄せる。そこで子供を産み、ユダヤ人たちを生活を共にし、自分の歩んできた道を振り返りつつ、やはり前に進むしかない・・・という葛藤しながらも、革命に身をゆだねる女性の姿を表したもの。

さて、映画に関しては、それほど面白いとか、なるほど・・とも思えなかったが、いつものように、目的は先生のお話とお勉強。ソ連時代によくあった、上映禁止、公開禁止の憂き目にあった作品。理由は、ユダヤ人問題を取り上げたため、と言うことになっているのだそうだが、そうでもないのでは、と言うのが先生の解釈だ。

映画は、革命後の1920年ごろが舞台で、場所も大体特定できると言う。今で言うと、ベラルーシとポーランドの国境のあたり。そのあたりは、昔からユダヤ人が多く居住していたところで、旧ソ連とポーランドとの国境紛争が多く行われてきたところ。当然ながら、ユダヤ人は虐待されてきた、ひどい目にあってきたことは事実なのだが、映画を見ている分では、それほど伝わってこない。
 
映画で伝えようとしているイメージは第二次世界大戦のころの収容所のイメージで、時宜にあってない。全体的に半端な印象を受けてしまった。先生もおっしゃってたが、私もそんな印象だった。特に先生は、ずれてると。それって致命的だと思う。映画を作る人、自分の道を貫くのはいいが、ずれてるのはまずい。それが己の信じる道!!と言っても、世の中とずれてしまっては、伝わるものも伝わらない。

結局、上映禁止になったのは、1966年という時代がそうさせたのではないかと。おりしも中東戦争の真っ最中。アラブ側に加担していたソ連にとって、ユダヤと対立したり、ユダヤ人を真正面から描いたものを公開するは、いかがなものかという政治的な配慮があったのだろうと。

ソ連と言うのは、ユダヤ人に寛容な国だった。学歴も高く、政治的に大きな影響力のあったユダヤ人も少なくない。トロツキーもそうであった。エイゼンシュタインもユダヤ人。文化面でも大きな影響を与えていたのは疑う余地がない。ソ連にとって、ユダヤの影を払うことは不可能だったわけで、こういう映画は、とりあえず公開はしないでおこう・・・という配慮も働くだろうなあ~と言った感じ。

映画はともあれ、なぜにこういう映画が公開禁止になったのか、その政治的な背景やら、歴史的な影響、ユダヤ人がソ連でどんな立場にあったのか・・・と言うのがわかる映画と考えると、価値もあるというもの。

◎◎○

「コミッサール」

監督 アレクサンドル・アスコリドフ
出演 ノンナ・モルジュコーワ ローラン・ブイコフ ワシーリー・シュクシン


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