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イワン雷帝

2014年07月02日 | ロシア映画シリーズ
名前はとっても有名なソ連の監督、エイゼンシュテイン。モンタージュ理論の完成者としてその名を馳せているが、作品はというと、そんなに多くはない。50歳で亡くなったのが1948年と今更知ったのだが、結構若井内にすごいものを残したということらしい。

その最後の作品となったのが、この「イワン雷帝」!イワン雷帝は言わずと知れた、ロシア帝国の初代皇帝だ。本来は3部作だったらしいのだが、時はスターリン体制下。初めは賢帝として政治にまい進した君主が、変節していき、徐々に独裁者っぽくなっていくという姿になっていくという作品では、作り続けるのも無理からぬことだったろうと想像する。そんな政治の事情は抜きにして、久々のロシア映画の大仰さというか、激情形というか、あぁ、これぞロシア映画だあ!に浸った。

1部は、モスクワ大公のイワンが、王宮のさまざまな思惑と足の引っ張りあいの中、皇帝に就任する。この場合の皇帝は、まさにローマ皇帝の正統な後継者であり、その威光を存分に見せる。ドアップ、延々と続くコインの雨、白黒ながらも金銀きらきらのどんだけ派手なんだ!!という衣裳の凄さ!これぞロシア映画だ!!いや、当時はソ連映画か。

アナスタシアを皇妃に迎え、ますますその威光を世間に知らしめようとするが、イワンの伯母のエフロシニアは、わが子ウラジミルを帝位に就けんと画策。この辺は宮廷内のどろどろ。普遍の物語だ。世論を味方につけようと、エフロシニアは、謀反を画策。イワンが何より大事に思っている国民を離反させようとした。

この辺は、右にいけーーとおあられると一気に右に、左だーーって言われると、今度は一気に左に!!っていうロシアの気質みたいな、単純さが見てとれるのだが、描き方のせいかもしれない。イワンに反旗を翻そうとしたものの、イワンの真意を知るや、国民はイワンに忠誠を誓う。次々と敵を倒し、その地位を確固たるものにしようとしたとき、イワンは病に倒れる。

好機と見たエフロシニアは、ウラジミルを皇帝に座に就けようとする。しかし、イワンは奇跡的に復活!伯母を始め、周りの人間たち、重臣の貴族たちすら信用が置けなくなった。疑心暗鬼が募っていくイワン。そんな中で妻が毒殺されてしまう。何も信じられなくなっていくイワン。猜疑心という悪魔に魅入られていくよう。

2部は、妻の毒殺の犯人が伯母とわかり、イワンは孤独に苛まされていく。もう貴族団は信用できない。皇帝に対して、露骨に反逆の刃を向けてくる。しかし、敢然と立ち向うイワン。伯母は、今度はイワン自身の暗殺を画策する。酒宴に出席したウラジミルと刺客。しかし、イワンには通じなかった。イワンはウラジミルに自分の衣裳を着せて、皇帝と間違わせて、刺客に殺させる。

倒れている皇帝の衣裳をまとった男の死体を見て、喜ぶエフロシニア。しかし、その顔はわが子ウラジミルだった。もう敵はいない。孤独の中で確固たる地位を確立したイワン。真の皇帝となったはずですが、孤高の皇帝なように見える。

ということで、ぜひ3部でその後の姿を見てみたかったのですが、それはかなわず。やはり中途半端感があります。モンタージュ理論、確立せり!といった感じで、迫力ある度アップの連続!それ見てるだけで、ごちそうさま!です。内容を鑑みるかぎり、スターリンの批判めいたもんとは感じませんでしたが、そう取られるというのは多分に後ろめたさもあるのではないかと思うのです。

一部分だけ、カラー映像になるのですが、きっと3部が作られてたら、キラキラのド派手な迫力満点の映像になったのではないかと想像します。話の流れが若干わかりにくく、説明不足なのですが、きっとソ連の人たちにとっては、あたり前のことで、徳川家康のことを映画にした・・・みたいな感覚なのかなあと思いました。

◎◎◎○

「イワン雷帝」

監督 セルゲイ・M・エイゼンシュテイン
出演 ニコライ・チェルカーソフ リュドミラ・ツェリコフスカヤ セラフィマ・ビルマン パーヴェル・カドチニコフ ミハイル・ジャーロフ


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