迷宮映画館

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スタフ王の野蛮な狩り

2013年02月26日 | ロシア映画シリーズ
ロシア映画シリーズも回を重ねて46回目を数えました。ほぼ皆勤の私。初めは、なにがなんだかわからず、とにかくついていこう!と見始めたロシア映画。40数本見ても、結局よくわかってないままですが、わかったことは何でもアリ!難解とか、わけわかんないとか、つまんなそうとか、牧歌的とか、いろんな言われ方をされますが、それはどこの国の映画でも同じなんではないでしょうか。

いろんなタイプの作品があり、いろんなジャンルがあり、傑作もあれば、駄作もある。それとおんなじなんだなあと思ったのが、数多く見て感じたことでした。だから好きになったか?というと、微妙。でも、紛れもない傑作に出会えたことも事実。次回で、ひと段落だそうです。

覚書程度に、毎回書いてきましたが、TBはほぼなし。コメントもさっぱりなし。ロシア映画の立ち位置を感じさせる結果です。ということで、今回の映画も、またいかにものロシア!!!!です。

さてお話は・・・・。

20世紀の終わりごろ、また帝政ロシア時代。壁に大きく掲げられているニコライ二世の皇帝の肖像画が印象的。民俗学を研究しているベロレツキーは、ベロルシア(白ロシア)の小さな村に伝わる伝承を取材にやってきた。ここの女主人は若くて、美人。でも、村中妖しげ。伝承の取材には見事にピッタリ。

17世紀、この村の領主・ヤノフスキーは、村の実力者・スタフ王をだまし討ちして、村を支配していたと。スタフ王の呪いは末代まで祟る・・・といわれていた。領主のヤノフスキー家には、ずっと奇妙なことが起こり、変死が相次ぎ、現女主人・ナジェージタは恐れおののいているということ。村にはスタフ王の亡霊が今も闊歩し、領主ゆかりの人を呪い殺している。

まさか現実にそんなことが起こるわけがない。ベロレツキーは独自に調査するが、次々と殺される村人に、おどろおどろしい沼地を爆走する白い馬にまたがったスタフ王・・・。本当にこんなことが起こるのか???真実は、亡霊なんかではないはず。ベロレツキーが見つけた真実とは。

ということで、前半おどろおどろしい感じの流れに、幻想的な雰囲気で、何やらミステリアスな話だなあと。それはそれでなかなかな空気感。亡霊の恐怖におののき、いかにも前世紀の遺物が出てきそうな沼地の風情が漂ってた。。。。と思ったら、後半になっていきなりの圧政に対して立ち上がった革命的な民衆!!になる劇的な展開になってしまう。

この突拍子もないクロスオーバーにも、ちゃんとついていけるようになったのは、40数本も見てきたからでしょう。何でもアリ?なんでもOKという懐の深さと、どんなもんでも突っ込める節操のなさもロシアです。

で、先生のお話。

先生の要望で、この映画の上映となったのですが、楽しんでみる分には十分なところ、これを解説しなきゃとなると、なかなか大変!そこを考えてから推薦すべきだったと。それもありかなあと思いました。

舞台となったベロルシアは、ソ連を構成していた共和国の一つだったが、いまいち特徴のない国。歴史的に見ても、完全な独立国となったことはなく、中世以前はキエフの支配下、その後はリトアニア、ポーランド、そしてロシアの支配下となり、ソ連へと移行すると。ほかのロシアを構成している国のような、確固たる民族意識もなく、曖昧模糊とした感じが映画にも出ていると。

地主はリトアニア系、農民はベラルーシ系。でも、映画では普通にロシア語で、ロシアの俳優や、ブルガリア出身の俳優だったりと、こだわりがあるわけでもなく、その辺の作りも国家の作りに準じているような・・ということらしい。

これが作られた1970年代というのは、ソ連の安定期の時で、民族意識が高まったり、いままで表せなかったもの、主張できなかったものを表現できる時代。それに合わせて、民族的な映画が多数作られたが、それの一つであると。で、民族的な伝承から始まって、ゴシック・ホラー的なもんから、いきなり亡霊の正体を暴いて、農民運動になり、革命蜂起へ進み、革命映画の典型的なものになる。

ソ連が描いてきた忠実な革命映画となるのだが、果たして70年代のソ連の人々はそんな物語を望んでいただろうか。要らないでしょう。でも、何か芯となるものが欲しい。確たるものが見つからない時代に、切実な思いで、新しい秩序を求めようとしたのではないか。かつてあったエネルギーを懐かしみ、社会的な信念を見失ってしまった人たちが、未来に何かを求めようとしたのではないかと。

そんな大層なものを込めたわけでもないけど、何かを見つけたい。そんな思いが作らせた作品ではないかというふうにまとめてらっしゃいました。

そんな小難しいことは考えても見ませんでしたが、何でもアリのロシア映画の真骨頂であることは間違いないです。

「スタフ王の野蛮な狩り」

監督 ワレーリー・ルビンチク
出演 べロレツキー:ボリス・プロートニコフ
ナジェージダ・ヤノフスカヤ:エレーナ・ジミートロワ
ガツェヴィチ:アリベルト・フィローゾフ


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