迷宮映画館

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大地

2013年04月05日 | ロシア映画シリーズ
回を重ねること、47回。上映された作品は、一応全部鑑賞。一応というのは、ときどき不覚を取ってしまったので、全部きっちり見た!とは、口はばったくて、言えません。不覚最高作品は、「アンナ・カレーニナ」でしたかな。
50作弱見て、一番印象に残ってるのが、「クロイチェル・ソナタ」!!これは素晴らしかった。
いまだに、ギシギシと、ねっとりとまとわりついております。

4年間、ほぼ毎月一本ずつ、ロシア映画を見続け、レビューも書いてきましたが、まあTBもコメントもほぼなし!この反応の無さもまたロシア映画の醍醐味ということで。こういうのをそれこそ、自己満足の世界!というのでしょう。

で、最後に登場したのがソ連のサイレント映画の三大映画の一つといわれる今作、「大地」。あとの二つはエイゼンシュタインの「戦艦ポチョムキン」と、プドフキンの「」。

これで三大サイレント制覇したことになったのであります。

さて物語は、どうやら革命後、農地にコルホーズの制度がじわじわと入り込んで、今までの古い時代の階級制度が打破されていく・・という頃のお話。老農夫の臨終の場面から始まるのですが、ここもなかなかシュール。「わしは死ぬ・・・・」と言って、なかなか死なないのです。

周りには、楽しそうな子供たちがリンゴをほおばっていたり、「んじゃ、どうぞ」と言ってる家族がいたり。延々とその風景を映した後、今度は農村にいきなりトラクターがやってきます。今までは富農に、馬や牛を借りないと農地を耕せなかったのが、でっかいトラクターが来れば、こわいもんなし。

今までのさばっていた富農たちは、ビビりあがると。集団農場化の波が押し寄せる中、そのリーダー的な存在だったワシーリーが突然銃弾に倒れてしまう。それは富農の仕返しだった。農民たちはワシーリーの死を悼みながら、それでも「自分が殺した!」と言い張る富農の息子を無視し、どこかで赤ん坊が生まれ、ワシーリーの恋人だった娘は、別の男と恋に落ちていく・・・・。うーん、一体何なんだ???

あまりの唐突な展開と、15分くらいあれば入る内容と、うーん、いつにもましてわけわかんない!!の展開に、先生の解説です。
これも最後か。。。

さて、先生によると。とにかくわけのわからなさではやっぱ折り紙つきだったようで、私の理解力が足らないだけではなかったことにホッ。なのに、なかなか世界的な評価も高いということは、このわけのわからなさも世界は許容しているんだと。その懐の深さに先生もひそかにびっくりしているそうです。

この映画で描かれるコルホーズ政策は、28年から始まった第一次五カ年計画のもので、土地の私有化をやめ、土地を集団所有に変えていくもの。実はロシアでは革命以前からコルホーズ化を進めており、自作農を何とかして創設しようとしていた動きを受けて、徐々にではあるが自作農が増えてきていた。この流れは社会主義革命が起きていた時も継続していた。

自作農は徐々に富農に成長していき、自作農の中でも格差が生じてきた。富農は多くの家畜を所有し、それを貧農に貸して、さらに肥えると。この第一次五カ年計画の頃には、富農に対する不満がかなり大きくなり、富農撲滅運動が激しくなってきた。

農場にやってきたトラクターはその象徴で、トラクターが導入されれば、馬や牛を富農に借りる必要が無くなる。こんな流れを映画で表しているのだが、それにしてもさまざまなイメージが映画全体に氾濫しているのがこの作品の特徴であると。

突然踊りだしたり、死にゆく者を延々と映したり、葬式だったかと思えば、いきなり民衆運動になったり、とにかく複雑なものが凝縮されているのはなぜか。一般的な社会主義のプロパガンダでありながら、そうとも言い切れないものが含まれているのはなぜか。

この世の中は常に前進している。生と死が象徴的に映されるが、個人の死を描きつつ、それを乗り越えて集団が生きて行くのが現実であると。死は悲しいものであることには違いないが、振り返ろうとしない。先を見る、先を見ようとしていく!!というのがこの映画を表さんとしていることなんだ・・・・ということらしいです。

さまざまなイメージが映される作品でした。いきなり突然のリンゴとか、馬の疾走とか、唐突過ぎるのですが、それらは多くの監督に影響を与え、さまざまな映画でオマージュとして使われているとのこと。ロシアでは、かなり敬愛されている監督さんだということです

映画全体から受ける印象は、複雑なものが同居し、器用にまとめたとか、技術的にうまくまとめる・・という感はなし。違和感だらけで、話の脈絡も時として無くなってしまうのだけど、それを排除する必要もなく、私たち人間は、違ったものでも、違和感だらけのものでも、それを許容していく心をもってもいいのでは。これはいくつもロシア映画を観た結果、つとに感じたことです。映画を見るには、大いなる包容力があると、もっともっといろんなものを受け入れることができますよ!!ということを教えてくれたようです。

ロシア映画という、超マイナーな世界の一角にお邪魔しましたが、こういうめったに見ることのできない世界にお邪魔できたことは、喜びとともに、忍耐力ってやつも身に付いたような気がします。ちょっとやそっとのわけの分かんない映画は、どんとこいですわ。

ということで、長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

単発で上映もあり!とのことでしたので、またこのカテゴリーに作品が増えることを期待します。「イワン雷帝」あたりが見たいなあ。
先生も充分満足されたようで、こんだけのものを見れて、おなかいっぱいなようでした。

「大地」

脚本・監督 アレクサンドル・ドヴジェンコ
出演
オパナス……スチェパン・シュクラート
息子ワシーリー……セミョン・スワシェンコ
娘……ユーリヤ・ソールンツェワ
ナタールカ(ワシーリーの許嫁)……エレーナ・マクシーモフ
富農……I・フランコ
その息子ホーマ……ピョートル・マソーハ


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