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第299回 海外、最初の一歩

2018-12-21 | エッセイ

 行きつけの店で、親しくしているお客さんからこんな話題が振られてきました、
「最近は、若い人、特に男子が海外旅行に行かないみたいですね」
「それはまた、どうしてなんでしょうか?」
「わざわざ行かなくても、ネットで見られるから、ということのようですよ」

 「ネット云々」というのがいかにも今風です。私自身も若い頃、なんだかんだと自分なりの理屈をつけて、海外へ行くのに二の足を踏んでいた時期がありましたから、他人事(ひとごと)とは思えません。

 パスポートの取得など一連の手続きが面倒くさそう、まとまった休暇が取りにくい、言葉が通じるか不安がある、などなど。

 そんな私が海外旅行に目覚めたのは、30代の半ば頃のこと。きっかけは、いきなりの海外出張でした。行き先は、これも、いきなりエジプト。そして、「仕事」は、3人のメンバーのひとりとして、セミナーで講演するという(私には)相当インパクトのあるもの。

 否も応もなく、旅行と講演の準備に忙殺されました。ネイティブにチェックしてもらった英語の講演用原稿に、真っ赤に修正が入って返ってきて、がっくりするやら、あせるやら。あたふたと出かけるハメになりました。

 でも按ずるより生むがやすし。セミナーも冷や汗かきかきなんとか乗り切って、気がつけば、同行のメンバーと、ちゃっかり、ピラミッド、スフィンクス、カイロ博物館などの「視察」(あくまで仕事ですので)も済ませていました。
 現地の関係者、スタッフなどとのやりとりも、英語でしたが、同行したメンバーも結構ブロークンのカタコト英語でやってます。「みんな私とチョボチョボや」「厚かましさでなんとか通じる」というのが分かって、少しばかり自信と度胸がつきました。とはいえ、力不足も痛感して、その後、少し本気で勉強するきっかけにもなったんですが・・・

 入出国など一連の手続き、機内のルール、言葉のことなど、一通り経験してみれば「まあ、なんとかなる」ーーそんなこんなで、海外旅行にすっかり目覚めてしまいました。エジプトから帰って、さっそく、国内で済ませていた新婚旅行のやり直しとばかりに、ハワイ、アメリカ西海岸の旅行を敢行し、家人には大いに感謝されたんですが、その変貌ぶりには我ながら苦笑い。

 私の場合は、いきなりの海外出張という「外圧」がきっかけでしたので、エラソーなことは言えないんですが、若い人にも、海外を体験してほしいなあ、と心から思います。

「ネットで見られるから」ということに関連して、私のささやかな体験です。

 中学1年生の時、英語の教科書の口絵写真は、ロンドンのビッグ・ベンでした。英語だからイギリス、イギリスだからビッグ・ベンということだったのでしょう。その写真ではありませんが、こちらですね。


 その写真を見ながら、「これから英語を勉強するんだけど、大きくなって、果たして、外国に行くチャンスなんてあるのかな。まして、英語を使う機会なんて・・・・、でもひょっとしたら・・」などと考えながら勉強していたのを昨日のことのように思い出します。

 それだけに、後年、プライベートで初めてロンドンとその周辺に出かけ、ビッグ・ベンの実物を目の前にした時は、柄にもなくちょっと乙女チックな感傷、感慨に浸りました。いろんなチャンス、幸運にも恵まれて、自分なりに思い入れのある現物の前に立って、自分の目で見る、周りの風景を確かめる、その場の空気を吸う・・・・折しも冬の陰鬱な空模様、肌を刺す寒気の中でしたけど、心は晴れ晴れしていました。「ネット云々」などと言わず、実物だけが持つ存在感、迫力を、若い人にも肌で感じて欲しいものです。
 
 さて、多くの若い人(と、かつての私)にとって、実は、大きな壁かもしれない「言葉」の問題です。

 少し重たい話題ですので、別の機会に、と思ってますが、とにかく恥をかくことを恐れず、そして、コミュニケーションしたいという思いを身振り、手振り、カタコトでもいいから伝える・・・日本人の国民性として、そこが一番のハードルなんでしょうが、気持ちと若さで乗り切れるはず、というのが、とりあえずのアドバイスになるでしょうか。

 先の韓国旅行では、言葉のことも含めて、さんざん恥も汗もかきましたけど、いい触れ合いも出来たと自負しています(第269回 韓国旅行ハプニング集)。そのオジさんが言うんですから、信用してください、そして、勇気を持って最初の一歩を是非。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。

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