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第236回 書評を楽しむ

2017-09-29 | エッセイ

 以前にも書きましたけど、本好きの私にとって、一番の情報源は本屋さん。なかでも、東京堂(神保町)の新刊棚と、自宅から徒歩圏にある増田書店を頼りにしています。取り次ぎの言いなりにならず、店長(店主)のしっかりした眼と見識で選んだ本が、いつも揃っていますから、足を運ぶのも、買うのも、専らこの2店に限られます。

 さて、書評も情報源として、大事にしなきゃいけないんですけど、なにしろ数が多いですからねぇ。日曜日に掲載される主要全国紙のそれを図書館でチェックするのがせいぜい、その上、新聞の場合、取り上げられる本って、誰が読むんだろう、みたいなのが多い気がします。各紙の見識を競ってるようなところがあって、いまひとつ私にはフィットしません。

 そんな不満を解消してくれそうなサイトが、最近、登場しましたので、ご紹介します。

 ALL REVIEWS(オール・レヴューズ https://allreviews.jp)です。トップ画面の一部をご覧ください。

 フランス文学者・作家の鹿島茂氏が、立ち上げたサイトで、「活字メディア(新聞、週刊誌、月刊誌)に発表された書評を再録するサイト」(同サイトから)です。
 で、「明治以来活字メディアに発表されたすべての書評を閲覧可能にする書評の構築を目指します」(同)とあります。

 使い捨てになりがちな古今の書評に光をあて、ひいては、古今の名著にも眼を向けさせようというなかなか気宇壮大で、意欲的な取り組みです。「書評界のグーグル」を目指してるのかな、と思わせるものがあります。

 どんなサイトかは、ご覧いただくのが一番ですが、それでは、話が終わってしまいますので、もう少し、お付き合いください。

 まずは、ジャンル別。「文学・評論」、「人文・思想」、「社会・政治」、「ノンフィクション」など8つのジャンルがありますが、まあ、これは、基本中の基本ですね。「文学・評論」で約200本、私が関心がある「ノンフィクション」が。、10数本と、バラつきはありますが、今後の充実に期待しましょう。

 なんといってもユニークなのは、書評家(多くが、作家、評論家を兼ねてますけど)を選んで、その書評が読めること。

 現在登録されてるのは、50人ほど。中には、いずれも故人ですけど、澁澤龍彦、井上ひさし、米原万里など、私が愛読してきた作家の皆さんも、「書評家として」ラインナップされてる(もちろん、鹿島自身も、ちゃっかり、名を連ねてますけど)。

 好きな作家とか評論家が、一体、「どんな本を」、「どのように」評してるか、これは、興味をそそられます。例えば、澁澤龍彦の「銀河鉄道の夜」評は、短いですが、彼独特のユニークなものです。

 さて、「読書日記/コラム/対談・鼎談」というコーナーもユニークです。

 「本の雑誌」の「新刊めったくたガイド」とか、「週刊文春 私の読書日記」とかに枝分かれして、それぞれののバックナンバーが読めたりするので、なかなか便利です(バックナンバーといっても、現状では、最近のものが中心ですが)。活字媒体を幅広くカバーしようという看板に偽りはなさそうです。
 そのほかにも、村上春樹の本の書評が読める特集コーナーがあったりと、あれやこれやの切り口で、書評が読める工夫がなされています。

 実は、もうひとつ、私が注目しているのは、このサイトのビジネスモデルです。

 書評で取り上げられてる本毎に、3つのネット書店へのリンクが貼ってあります。トップページではなく、その本のページへ直接リンクを貼ってますから、便利で、使い勝手はいいです。

 このサイトを通じて、本が売れれば、アフィリエイトで、なにがしかの収入が、サイト側に入る仕組み(のはず)で、それだけなら、どこにでもある話です。サイトの安定的運営のためにも、しっかり稼いでもらっていいと思います。

 ユニークなのは、「書評家還元システム」と、このサイトが名付けてる仕組みです。

 このサイトに再録している書評については、当然のことながら、通常の著作権処理を行っています。その上で、「書評の対象となっている本」を、このサイトを通じて購入すると、「書評家」に、購入価格の0.7~2.1%を還元すると謳っています。

 本を買う気にさせた書評家にも、それなりのリターンを、というわけです。書評家の皆さん(作家と兼業の方も多い(鹿島氏も含めて)とは思いますが)にとっては、思わぬ収入の途が開けるわけで、なるほどなぁ、と思いました。

 古い本が、古い本として、流通している限りは、著者にはなんの実入りもありません。このサイトの書評が、きっかけになって、古い出版物に、日が当たり、再版、増刷で、著者にも還元され、出版界も活気づく・・・・・便利なだけじゃなく、夢のあるサイトじゃないでしょうか。一度アクセスしてみてください。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。

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