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第425回 タコは天才である<旧サイトから>

2021-06-11 | エッセイ

 その不思議さ、精妙さに魅かれて、時々、生き物を話題にしています。今回、<旧サイトから>の第5弾として取り上げるのは「タコ」です(2014年7月アップ)。

 食材としては、馴染みがあります。でも、本文でご紹介する本を読んで、そのスゴさ、天才ぶりに驚きました。文末に、そのスゴさを示すYouTube動画3本へのリンクを貼っています。合わせお楽しみください。

★ ★以下、本文です★ ★

 広く西洋では「悪魔の魚」などと呼ばれ、嫌われ者のタコですが、日本のほか、イタリア、スペインなどでは、ごく普通の食材として人気があります。
 そのタコが、地球上の95%を占める無脊椎動物の中で、最高の知性を有する生き物だ、という触れ込みの本が、「タコの才能」(キャサリン・ハーモン・カレッジ 太田出版)です。

 まだまだ未解明なところも多いようですが、よく知られた「擬態」という習性を中心に、その能力の一端をご紹介します。

 まずは、色です。
 全身の皮膚にある何百万個もの色素胞を周囲の筋肉で伸縮させることで色を作り出すというのです。まあ、全身が、高精彩ディスプレイみたいなものと考えればよいでしょう。単色ならともかく、これでもって、周辺の地形、他の動物など複雑な色、柄、模様を再現します。身を隠したり、エサを待ち伏せるための「変色」作戦です。
 そのためには、周囲の状況を的確に把握したうえで、さらに、何百万もの筋肉に指令を送らなければなりません。そんな脳の働きは、想像を絶します。カメレオンも太刀打ち出来なさそうです。

 それだけではありません。更に手の込んだやりかたで、擬態するものの「質感」(輝き、反射など)も再現します。
 使うのは、「虹色素胞」と呼ばれるもので、色素は持ちません。どうするかというと、シャボン玉が虹色に輝く原理で、細胞の膜の厚さを、ミクロ単位で、それ専用の神経で微妙に変えて、質感まで再現するのだといいます。

 まだまだあります。
 筋肉自体ををコントロールして、例えば、サンゴのような凸凹の再現まで、(たった)8本の腕を駆使して、海中にゆらめく海藻まで再現する能力を持つタコがあるというのです。「変色」だけでなく、「変身」までするというわけです(文末の「海藻に擬態するタコ」の動画をご覧ください)

 どうです?スゴイでしょ(と私が自慢しても仕方ないのですが)。タコの寿命は、1年からせいぜい2年程度と言われています。こんなに短い一生のために、3億年もかけて、これだけの能力を発揮できるになった進化の仕組みって、一体なんなのでしょう。考えれば考えるほど不思議です。

 お待たせしました。百聞は一見にしかず。同書から、タコの擬態に関する動画サイトへのリンクを引用しておきます。是非ご覧下さい。きっと驚かれることでしょう。

<海藻に擬態するタコ>

<ミミック・オクトパスの海ヘビへの擬態>

<道具(ヤシの実?)を使うメジロダコ>

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。