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第341回 アクション英語-英語弁講座25

2019-10-18 | エッセイ

 「英語落語」というユニークな試みを創始したのが、関西の落語家桂枝雀(かつら・しじゃく 1939-99年)です。オーバーアクションぶりや、ちょっとシュールな芸風で人気があり、私も大ファンであり続けています。こちらの方です。

 その彼に「枝雀のアクション英語高座」(祥伝社)という本があり、とびきりユニークな学習法との出会いや授業風景などが面白可笑しく綴られています。その悪戦苦闘ぶりをご一緒に楽しもうと思います。

 さて、高校時代に、いい英語教師に出会ったのがきっかけで、英語にはずっと興味を持ち続けていた彼が英会話に本格的に取り組もうと決意したのは、40歳を過ぎた頃だといいます。町の英会話スクールに通ったりと、いろいろ試した結果、行き着いたのが、大阪でHOEという教室を運営している山本正明氏との「運命的な出会い」(同書から)です。

 氏のモットーは、言葉は頭ではなく、カラダ全体で覚えるものだ、というちょっとユニークで過激なもの。本のタイトルにもなってる「アクション英語」というわけです。さっそく、その様子をご紹介しましょう。

 最初のレッスンでは、机の上のペンを取り上げながら、"Pick up the pen."と言い、"Put it down.”といいながら、元に戻す・・・これを何度も何度も繰り返えす、というのです。まるで、子供扱いですが、そうすると、英語とか日本語とかの区別を意識しなくなり、カラダが自然に反応するようになったといいます。

 鉛筆を出したり、名前を書いたり、消したりと机上で出来るアクションが身に付くと、次のステップは、いよいよ教室の中で、カラダを動かすレッスンです。

 "Stand up." "Go to the window."  "Open the window."  "Shut the window."  と部屋の中で、アクションをさせられて、"Go back to your seat."で席に戻ります。
 あの枝雀師匠が、部屋の中をウロウロしながら勉強しているのを想像すると、頬が緩みます。

 第2段階では、教室を、機内に見立てて、客室乗務員役と乗客役とに扮した模擬レッスンになります。

 時代が古いので、客室乗務員が搭乗券をチェックするところから始まります。
 "Please show me your boarding card." (搭乗券を拝見します)に対して、
 "Sure.Here you are."(はいどうぞ)などとやりとりがあって、
 "Please come this way.This is your seat."と席に案内されます。

 こんな流れだと、客室乗務員が会話をリードする形になりますから、乗客役の方も、
 "Where’s the toilet?"のように「反撃」にでる必要がある、と書いてあるのが可笑しい。

 で、最終段階になると、「即興」を主にしたレッスンになります。シチュエーションは、「知り合いのオフィスへ行く」というものです。

 名前を訊かれ、アポの有無を質問され、それを受けて、受付嬢が取り次いでくれる・・・・・と
ここまでは(英語は省略しますが)ありがちな展開ですが、なんと、受付嬢から「ボスはあなたのことを知らない」と言われます。さあ、どうする、というわけです。
 「わたしは、落語家の枝雀と申しまして、こちらのオフィスの山本さんにお会いすることになっておりまして・・・」などと伝えますが、「「ラクゴカ」ってなんですか?」とこれまた意地悪な答えが返ってきます。
 "story telling"、”stage drama"、"imagination"など、思いついた言葉で、汗をかきかき説明したと書いています。この時の汗かきが、後に「英語落語」で、外人さんに落語の説明をするのに役立った、とも書いています。

 「読む」「書く」「聴く」はある程度、自学自習が可能ですが、「話す」となれば、これくらい実践的にやる必要があるだろうなぁと実感出来ます(が、大変そう)。
 私も気の利いた言い回しなんかを覚える時は、(アクションまではやりませんけど)自分が使ってる場面を、アタマの中でイメージ、シミュレーションしたりすることはあります。万人向きとは言えませんが、ある程度の下地があれば、効果はありそうですね

 枝雀師匠も効果を実感したのでしょう。この体験が、「英語落語」の創作へとつながっていくのですが、その話題は別の機会に「英語講座」らしくご紹介できれば、と考えています。

 いかがでしたか?それでは、次回をお楽しみに。