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第297回 大阪弁講座−34 「往生する」ほか

2018-12-07 | エッセイ

 第34弾をお届けします。

<往生する>
 「堪忍」、「殺生」など漢語系で、古くさい言葉を、大阪人は、独特のニュアンスで、日常的に使い回すのが好き、というのか、飽きもせず、うまく使ってるといったらいいのでしょうか。

 「往生」もご存知のとおり、仏教系の言葉で、「死ぬ」こと。極楽往生の「往生」です。「事故で電車が「立ち往生」」なんかは。全国的にもよく使われる。
 本来は、そんな縁起でもない言葉を、「(自分が)死ぬほどの困難な状況」の表現として、大げさに、かつ自虐的に使うのが、大阪人。

「あっちからは、「支払いは、まだか~」て、ゆうてくるし、こっちからは、「早(はよ)う納品せえ~」ゆうてくるし・・・・ホンマ「往生してる」ねん」

<皆目(かいもく>
 広辞苑にも「(多く下に打ち消しの語を伴う)全く、全然」と載ってますから、根っからの大阪弁、というわけでもなさそうです。現に東京出身の作家さんが使ってるのを目にしました。

 でも、大阪人の使用頻度が圧倒的に高そうです。今どきは、ちょっと年寄りっぽい響きがあって、若い人はあまり使わなさそうでもありますが。

 「急にそんなこと言われても、どないしたらええのか、「皆目」見当もつきまへん(つきません)がな!」
 白か黒かはっきりさせない言い方が好きな大阪人ですが、「皆目」みたいに、きっぱり否定する表現が好きなのも大阪人。難儀な連中です。

<食べさしてへん子ォみたいに>
 大阪というより、京都あたりでの使用頻度が高いような気がします。

 (日頃から、ロクなものを食べさせてない子供のように)ガツガツと行儀悪く食べるんじゃありません、と子供と一対一で、ストレートにたしなめる時に使うのが、まずは基本。こんなイラストを見つけました。



 だけど、京都あたりだと、イケズ(意地悪)とイヤミのニュアンスが加わることがあります。子連れの訪問先で食事を出された時などに・・・・
 「いややわ、うちの子供いうたら、「食べさしてへん子ォみたいに」がつがつして。ホンマ、恥ずかしいですわ」
 子供を叱りながら、「日頃は、ちゃんとしたものを食べさせてますので」という訪問先への申し開きの気分がひとつ込められてる。

 そして、「(訪問先側が用意した)この程度のものをガツガツ食べて・・・・」と、決して口には出来ない思いも入ってたりするから、こりゃ一筋縄ではいきまへん。

<使(つ)こたって>
 使って(利用して)やって、が、例によって、短縮化されて、「つこたって」という言い方になる。

 飲み屋で、先輩が後輩に「なっ、安うて、ええ雰囲気の店やろ、また使こたってや」などと、先輩風を吹かせる様子が目に浮かびます。

 「そやから、マスターも、コイツが来たら、「安うしたって」や」と、店のほうにも、きっちりとクギを刺すのを忘れないのも大阪流。ホンマ、しっかりしてますわ。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。