欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

音に込める愛情

2012-05-25 | une nouvelle
夕日がさしこむ鐘のある街。その路地裏で、
古いイスに腰かけコントラバスを奏でるひとりの老人。
毎日夕方なると、同じ場所にコントラバスを持っていき曲を奏でているのです。
だれも通らないようなひっそりとした路地裏で。

あるとき、野菜の配達人が演奏を耳にし二輪車を止めます。
演奏を聞き終わって、ブラボーと拍手。
すばらしい演奏だ。しかし、こんな人知れずの場所ではもったいない。
老人はメガネをはずしながら、
いいんだよ。昔のなじみに聞かせているだけだから。
野菜の配達人はその意味がよくわからないながらも、
なんか不思議な曲だね。どことなくぬくもりを感じるよ。やっぱりこんな場所じゃもったいないシロモノだ。

老人は毎日この場所で曲を奏でているのです。
雨の日も、屋根のひさしの下で。海が荒れる嵐の日も、短い曲を奏でて・・。
たまに道行く人が立ち止まり、演奏を聞いていきます。
こんなに切ない曲もあるものだ。心に刻まれるような大きな出来事を経験した人にしか演奏できまい。
老人は弦をはじくのを止め、ひとり言のように、
自分はここで弾くのが毎日の日課さ。昔ここを去って行った人へのせめてもの贈り物なんだよ。


最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
忘れられない人 ()
2012-05-25 18:38:44
ふと立ち止まり、
その場から離れられないような
旋律に心奪われて
そっと目を閉じる
切ない音楽と重なる
今でも忘れられない思い出
返信する
最近おもうことは (makoto)
2012-05-27 17:44:11
心の旋律ということです。バランスを崩すとは、この旋律をうまく奏でられていないということなのかと・・。
まわりのペースにあわせるのは大切ですが、バランスを崩してはなにもはじまらない。自分の旋律すら忘れかけているのでは・・?
そんなことを思うのです
返信する

post a comment