欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

下町にあるおいしいパン屋の話

2013-05-13 | une nouvelle
けっしてオシャレとは言えない下町の一角にあるパン屋さん。
そこのライ麦フランスパンがとてもおいしいって遠いところからもお客がくる。
ノラ猫や窓から窓に洗濯物が欲しいある狭い道にオシャレな車が通って、そのパン屋の前で止まることもしばしば。
ある日、元気のない娘さんがそのパン屋へ立ち寄って、なにもしらずにフランスパンを買って帰った。
そして、次の日にまたやってきて、パン屋のご主人にお礼を言ってる。
落ち込んでた毎日にほっこり花が咲いたような気分になったんだって。
どこかなつかしくて心明るくなるパン。こんなすばらしいパンはどうしたらできるんですかって。
ご主人の気持ちがとてもやさしいから?

パン屋の主人は五十を過ぎたふっくらしたおっちゃん。
そりゃね、お嬢さん。作る甲斐があったってものさ。うれしそうに調理帽をとりながら、
これからの仕事のハリになるってものだよ。
いろんなパンを食べてきたけど、こんな味ははじめて! なにか特別なレシピがあるのでは?
う~ん、そういうワケじゃないけどねぇ。
でも、ご主人の顔にはなにかワケがあるみたい。

娘さんがどうしても聞かせてくれってせがむので、気恥ずかしそうになくなく真相を告白。
じつはね・・。
昔、修業時代につとめてた大きなホテルがあってね。そこで自分はパンを作ってたんだが、そこのオーナーの娘さんに恋をしたってワケさ。
気取りもしないし、とても気さくでやさしい器量よし。フランスパンが好きだっていうからね、どうにか彼女の気をひこうといろいろ考えてみたワケさ。
その彼女の雰囲気をパンの風味にできないかって、いろいろなレシピを作ってはやり直してみたものさ。そして、今あるようなパンを作ったってワケ。
昔の恋もなにかの役に立つってものさなぁ。
ステキな話!!
今じゃ恥ずかしくて聞かれても言わないけどね。あの時の彼女はそんないい雰囲気をもってたんだよ。
ある日、その彼女が自分のところへやってきてさ、こう言ってくれたんだ。
とてもおいしい夢のあるフランスパン。毎日食べていたいわって。
えぇ~、そして、どうなったんですかぁ!!
さぁ、それは奥で花に水やってる人に聞いてみなよ。ご主人は笑いながら、
当人に聞いてみるのがいちばん早いってものだからね。


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