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雲上を飛ぶ (38)

2010-03-22 | その他

[嘉手納ラプコン]主権問われる空域返還

約半世紀も「暫定」という形で米軍が航空管制を行ってきた嘉手納ラプコンが31日に返還される。あまりにも長い「空の占領」を許してきた日本の主権意識が問われる。

それが当たり前との受け止めがあったのだろうか。外国のケースをみるとき、そのいびつな姿が鏡に映る。

米軍受入国であるイタリアの北部に、米空軍が使うアビアノ飛行場がある。管制塔には軍用機パイロットと交信する米兵士に混ざってイタリア兵1人がいる。彼は米軍機と直接やりとりする役割ではなく、着陸後の軍用機を駐機場へ誘導する担当だった。

何を担っているかではなく、そこに伊軍の関与があるという象徴的な存在(プレゼンス)が重要だという考えだ。

米軍の管制空域で何が起きているかを受入国当局も逐次確認できている。イタリアが米軍の管制業務に関与することを当然視するのは、「領土、領海、領空」がいずれも主権の空間だからだ。

さらに米空軍は、低空飛行訓練を実施しようとするとき、イタリア航空安全局(EVAN)に飛行ルートや時間帯を通告する必要がある。そのデータは民航機のパイロットに公表され、注意を呼びかけている。

日本でも米軍は低空飛行訓練を実施するが、外務省はルートすら把握していないという。理由は、日本の航空法令に基づいて米軍は飛行しているはずだから、問い合わせる必要がない、という。

米軍との付き合い方は日伊でこうも違う。



「ラプコン」は、レーダー・アプローチ・コントロールの略。沖縄返還のときに、日本が進入管制をできるようになるまでの「暫定措置」として米軍が引き続き行うことにした。
 
空のフェンス、と言われた。嘉手納基地を中心に半径90キロの円内で高度6000メートル以下、久米島飛行場を中心に半径50キロの円内で高度1500メートル以下の円筒状の空域が米軍管理下にある。
 
那覇空港を出発する便は嘉手納に着陸する軍用機と飛行ルートが重なるため、離陸後約10キロほどは高度を300メートル以下に抑えて飛行する。米軍機の下をかいくぐるように飛ぶため、民間パイロットは安全面への不安からストレスを訴えていた。
 
ラプコン返還後は米軍機の進入管制も国交省が行うため、民航機はよりスムーズな上昇が可能になるという。長い交渉の末の返還実現だが、あまりに時間がかかりすぎた。

 
いったいどれほどの日本人が首都東京の空にもエベレスト山とほぼ同じ高さの空間が米軍の官制下にあることを知っているだろうか。米軍横田基地の「横田ラプコン」だ。
 
さらに松山空港(愛媛県)に離着陸する便が米軍岩国基地の「岩国ラプコン」を通過している。嘉手納ラプコンの返還後もこの二つは残る。

 
地上の基地フェンスのように日常的に威圧感があるわけではない。ただ一部であるにしても空域のコントロールを外国軍に預けるこの国のあり方が問われる。

(「沖縄タイムズ」 2010年3月20日付より)