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★坂口裕彦 毎日新聞前ウィーン特派員 著者と語る『ルポ 難民追跡 バルカンルートを行く』 2016.11.22

2016年11月24日 12時40分23秒 | ●YAMACHANの雑記帳
坂口裕彦 毎日新聞前ウィーン特派員 著者と語る『ルポ 難民追跡 バルカンルートを行く』 2016.11.22

2016/11/23 に公開
Hirohiko Sakaguchi, the former Correspondent of Mainichi Shimbun in Vienna
ドイツを目指すアフガニスタン人一家を追いかけ新聞に連載した同時進行ルポが本に。「途中で見失ったりしたが、現場でへーっと感じたことを書くのが新聞記者。日本の記者はみな泥臭く現場に入っていた。特派員網を維持してほしい」と最前線から切実な声。
司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2016/11/r00034417/
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記者による会見リポート

予定稿なきはらはら連載 国際報道の原点

2015年11月、アフガニスタンのアリ・バグリさん一家の先行きの見えない旅が日本の新聞に連日、載った。ギリシャ・レスボス島でアリさんに出会った記者が追いかけ、その日の記事にする。島から本土への船は出発しない。所持金は底をつく。妻と幼い娘を連れたアリさん一家は、あすはどこをさまようのか。あげくの果て、同行している記者は一家を見失ってしまう。予定稿のある記事ではない。表現はよくないが、はらはらどきどきの連載に国際報道の原点と記者の意地を感じた。難民の過酷な状況が世界の関心を集めた昨年、日本のメディアによる難民報道で出色のルポだった。

◎「失敗した時に考えたらええんちゃうか」

連載に加筆して『ルポ難民追跡 バルカンルートを行く』(岩波新書)が出版されたのを機に記者、坂口裕彦さんをゲストに招いた。

「正直いって、行き当たりばったり、企画が成功するかどうか、わからないんです。失敗したら何と言われるか。自分はハンターではない。早寝早起き朝ごはん、のタイプだし」とためらったことを隠さない。上司に「失敗した時に考えたらええんちゃうか」といわれ、レスボス島に向かった。

まず探したのはシリア人難民。それはそうだろう。世界が注目するシリア内戦から命からがら逃れた人々の話なら字にしやすい。「きれいに話をまとめるならシリア人と考えました」。ところが、カメラを向けると女性は顔を隠す。名前を聞いても教えてくれない。

◎「デスクに怒られてもこの人についていこう」「私でいいんですか」

困っていた時に出会ったのがアフガニスタンのハザラ人、アリさん家族だった。考えてみれば、9・11同時テロとアフガン戦争から世界の混乱は始まりシリア内戦に至ったのではないか。アフガンこそ出発点なり。

「しかも一家の持ち物はごみ袋に詰めた毛布だけなんです。これは、グローバル化と格差の最底辺が映し出されている」という説明は、いささか後付けの理屈かもしれない。ともかく「デスクに怒られてもいいから、この人についていこう」と決めた。この手のルポには相手の全面協力が欠かせない。話を持ちかけると「私でいいんですか」と聞き返された、と言うからいい人を見つけたものだ。

そのあとのはらはらは本をお読みいただくとして、アリさん一家はバルカン半島を予想より早く駆け抜け、ドイツに着いた。追いかける記者は、動きがなくてもつなぎ原稿を送って紙面を作る。見失って迷子になっても次の国境で会えるはずと先回りしては空振りに終わる。

◎Wi-Fiを探せ 一人4役

昔のアナログ時代なら、とにかく紙の新聞用に記事を東京になんとか送ればよかった。ネット時代は違う。Wi-Fi環境さえ確保すればスマホで通信できる。仕事は増えた。原稿だけでなく写真を送る。電子版用に動画を送る。記者レポートと称する立ちレポも要求される。「一人4役です」とぼやくが、「フェイスブックとツイッターまではやらなかった。じっくり原稿を書きたかったから」と踏みとどまったのはアナログ世代の最後だからだろう。

◎日本の記者は果敢に泥臭く現場に行った

以下、同業者の質問と答えをいくつか。
「アリさんのカネがなくなった時、カネを貸さなかったのか?」
「おカネを渡すと同時進行の意味がなくなる、と考えました。貸してくれ、と言われたこともなかった。家族からの仕送り金を待つ間はつなぎの記事を書いていました」
「最後まで見つからなかったら、どうするつもりだったのか?」
「見失うこともニュースだ、と思っていた。どうしても見つけられなかったら、別の家族と一緒に、とにかくドイツに入るつもりでした」
「日本のほかのメディアの難民取材は?」
「日本の記者は果敢に泥臭く現場に行っていました。欧米メディアはシリア難民のカバーが多かったが、欧米メディアに流されない視点も大事です」

◎現場取材はメディアの生命線

坂口記者がこの機会に最も言いたかったのは、報道各社は特派員のネットワークを崩さないでほしい、という訴えかもしれない。

「メディアの経営環境は厳しいが」と前置きしてこういった。

「外国通信社の配信を翻訳すれば、現場に行かないで日本にいてもきれいな記事は書けます。でも、日本人記者が自分の足で現場に駆けつける。その手触り感のある記事の先にいまの世界が映し出されるんです。ネットのニュースを超え、足で稼ぐ分析こそ、これからのメディアの生命線になります。特派員を手放すのは世のため人のためならず、です」

その通り。新聞テレビ通信各社は、なんとかして自前で特派員網を維持し、最前線から記者をひきはがさないでほしい、と願う。

日本記者クラブ顧問
中井 良則
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