鮮やかな新緑に包まれた泉屋博古館(せんおくはくこかん)東京分館。
木島櫻谷(このしまおうこく)展は素晴らしい展覧会だった。
櫻谷は明治後半から大正期にかけて、名作を量産した日本画家である。
近頃の日本画は絵の具を塗り重ねて、油絵のような作品が多いが、これは正真正銘の日本画だと思った。
徹底的な写生を基に、卓越した技術と感性により描かれた動物画は高い評価を得た。
確かに、展示ケースの中の写生帖に描かれた動物たちは、体の一部分しかないが、今にも動き出しそうだった。
夏目漱石が酷評したという、評判の「残月」(六曲一双)。
数人の入館客が椅子席で、じっと見つめていたが、じじぃはこういう暗い絵はあまり好きではない。
かといって漱石のような痛烈な批判はいかがなものか。余程胃の調子が悪かったのだろう。
鹿の群れを季節によって描き分けた「初夏・晩秋」(六曲一双)が愛らしい。
また「猿猴」(一幅)の猿や、もふもふした毛並みの狸など、いずれも気品があり優美でさえある。
京都に現存する櫻谷邸内で、ボロボロの状態で発見された「かりくら」(二幅)。
馬の荒い鼻息と蹄の音が聞こえてくる。騎乗する老壮3人の射手は華麗で、踏み分けられた草原の描写は繊細である。
2年間を費やし、名作を完璧に甦らせた修復技術に拍手しよう。
「木島櫻谷-近代動物画の冒険」は8日で終了しました。櫻谷に関する詳しい情報は、こちらをどうぞ。
なお「木島櫻谷-四季連作屏風と近代花鳥図屏風尽くし」は4月14日から開催。
「泉屋博古館」は住友家が収集した優れた美術品を所蔵しております。
出光美術館・野間記念館と同様に、周囲の環境が魅力的な、小さな美術館です。
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