代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

八ツ場ダム建設: 国交省による審議会資料捏造問題 その2

2010年09月19日 | 治水と緑のダム
(前の記事のつづきです)

国土交通省によるダム建設のロジック

 国交省が利根川の治水基準点における基本高水流量を22,000m3/秒と計算し、八ツ場ダム建設の根拠としたロジックは以下のようになっています。

① 昭和30年代に発生した二つの洪水(3日雨量168mmの昭和33年(1958年)洪水 ならびに3日雨量216mmの昭和34年(1959年)洪水)をサンプルとして選定。両洪水の実績流量データと計算流量が合致するように、貯留関数法による計算モデルを構築する。両洪水の流量解析により、流域の飽和雨量(土壌が雨水を最大に貯めこめる係数)は、48mmと設定された。
                   ↓
② その計算モデルに1947年のカスリーン台風の雨量データ(3日雨量で318mm)を当てはめると、治水基準点の八斗島では22,000m3/秒が流れるという計算結果が得られた。
                   ↓
③ ゆえに200年に1度確率とされるカスリーン台風と同規模の豪雨(3日雨量319㎜)が再来すれば八斗島において洪水のピーク時で22,000m3/秒が流れる。これを基本高水流量と定める。
                    ↓
④ 現在の利根川・八斗島地点における流下能力は16,500m3/秒である。よって、上流にダム群を建設することにより、
    22,000-16,500=5,500(m3/秒)
をカットしなければならない。

 さて皆さん。この国土交通省の①から④のロジックをどう思いますか? このロジックの中に、既にして科学的な推論として看過できない重大な誤謬が二つ含まれています。分かるでしょうか? 科学的センスのある方なら、すぐに理解できると思います。

 ちなみに、現在までに八斗島上流に6つのダムが建設されており、1,000m3/秒のピークカット機能があります。八ツ場ダムは600m3/秒ほどをカットできると計算されています。八ツ場ダムとあわせても1,600にしかなりません。まだ3,900も足りないのです。国交省のロジックによれば、八ツ場ダムの他に、さらに上流に15~20個ほどもダムを建設せねば5,500という数字は満たせないことになります。
 かくて日本国は、財政破綻により滅亡するというわけです。

 この国交省の推論の誤りについては次の記事で解説します。まず皆さんで考えてみてください。
 (つづく)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。