代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

CIAも劣化したものだ ―ブルース・クリングナー氏のインタビュー記事紹介

2015年09月20日 | 脱米
 本日(2015年9月20日)の『東京新聞』で、元CIAの北東アジア担当官で、現在ヘリテージ財団の「ジャパン・ハンドラー」の一人、ブルース・クリングナー氏(ヘリテージ財団上級研究員)のインタビューが掲載されていた。クリングナー氏は次のように言う。

***『東京新聞』9月20日付け6面クリングナー氏インタビューより引用****

 集団的自衛権の行使容認は、米国が長年、日本に要求してきたことだ。だが、日本側はいろいろな理由を挙げて「難しい」と譲らなかった。だから安倍首相が容認に動いたときは、良い意味でとても驚いた。
 (中略)
 ただ、安保法制は日本からすれば安保政策の歴史的転換点であっても、世界的に見れば、哀れなほど小さな変化にすぎない。
 日本が集団的自衛権を行使できるのは敵対行為に対応する場合に限られ、PKOでも応じるのは後方支援くらいだろう。
 (後略)

***引用終わり*****

 クリングナー氏は、米国が執拗に日本に要求し、拒み続けた日本政府をついに屈服させたぞと鼻高々のご様子である。おそらく氏は、財団内部において日本を屈服させるに当たって自分の果たした役割を誇らしげに報告していることだろう。宗主国から送り込まれた植民地行政官の態度さながらである。そして、安倍首相はまだ屈服し足りないと、さらに積極的に自衛隊を米軍の下請け部隊として奉仕させるよう要求している。
 この後、何を考えるだろう。日本がさらに積極的に集団的自衛権を行使し、戦闘行為に参加せざるを得なくなるよう、さらなる「ショック」を与えようと考えているに違いないのである。

 クリングナー氏の過去の行状を見れば、今後彼の考えそうなことは明らかだ。

 民主党政権時代の2012年11月14日にクリングナー氏が書いたレポートの要約は、IWCが翻訳している。以下のサイト参照。
 
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/118349

 クリングナー氏はこの論文で以下のように宣言している。

 「安倍氏の外交姿勢が保守的であり、日本国民のあいだに中国への懸念が広がりつつあるという状況は、米国政府にとって、日米同盟の健全性維持に死活的な数項目の政策目標を達成する絶好の機会である。

 米国政府は長きにわたって、日本が自国の防衛により大きな役割を担うこと、さらに海外の安全保障についてもその軍事力・経済力に見合う責任を負担することを求めてきた。日本が防衛費支出を増大させ、集団的自衛権行使を可能にし、海外平和維持活動への部隊派遣に関する法規を緩和し、沖縄における米海兵隊航空基地代替施設の建設を推進することになるとすれば、米国にとって有益なことである」と。

 尖閣での日中対立を利用して、中国の脅威を煽り立てれば、日本は屈服し、米国の長年の要求である集団的自衛権の行使容認、防衛費の拡大(=アメリカからの武器輸入の拡大と自衛隊の米軍の下請け化による米国の財政負担軽減)、海兵隊辺野古基地建設、を受け入れるだろうと。日本と中国を対立を拡大させることが、アメリカにとって有益であると堂々とおっしゃっているわけだ。
 そして、まんまとこの戦略通りに事は運んだわけだ。大予言的中と言いたいところだが、シナリオ通りになるように植民地を恫喝しているだけなのだから的中するのも当然でしょうよ。「さすがはCIA」と言うほかない。

 尖閣の日中対立を煽って、鳩山政権の目指した東アジア共同体構想を挫折させるに当たっては、いろいろ影でやってくれたようだけどね。まあ、そんなのにまんまと引っかかる日本人も中国人もよほど民度が低かったってことだから、残念ながらこっちの負けですよ。

 クリングナー氏が、2013年12月17日に発表したレポートでは、「沖縄知事が、辺野古の埋め立てを認めないなら沖縄振興予算を凍結すると恫喝すべきだ」と日本政府に「指南」していたということを自ら明らかにしている。「振興予算を凍結すれば沖縄は経済的苦境に陥るだろう」と。植民地政府に対して、反乱を鎮圧するための兵糧攻めを献策したわけだ。たいそうな軍師ぶりである。

 この問題、本土のマスコミは報じていなかったが、『琉球新報』は大きく報道した。琉球新報のサイト参照(2013年12月22日付け記事)。

 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-217009-storytopic-53.html
 
 この問題を見ても、彼のやり方は「ショックドクトリン」である。東アジア共同体を挫折させるためには「尖閣」ショックを与え、辺野古基地を推進するためには「兵糧攻め」ショックを与える。前者は成功したが、後者は失敗した。沖縄県民は、そんなことで屈しはしなかったわけだ。 

 クリングナー氏のやり方、「さすがはCIA!」と言いたいところだが、ちょっと待った。アメリカの外交も随分劣化していないか?
 ふつうこうした隠密活動というのは影でコソコソやるものであって、自慢気に堂々と顕示するようなもんじゃないでしょう。クリングナー氏ときたら、公の目に触れるヘリテージ財団のレポートで、自分の業績として高らかに誇っているのだ。

 ここまで日本人は舐められているんだよ。こんなのに手玉に取られている自称「保守」、自称「愛国者」っていったいなんだ? あなたたちはバカにされてるだけなんだよ。 

 


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4 コメント

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政党とは国民にとって与えられるものではない。選挙とは選択ではない。自由とは選択の自由ではない。 (薩長公英陰謀論者)
2015-09-28 02:54:53

 もとCIAの、ジャパン・ハンドラー、クリングナー氏が東京新聞のインタビューに応じ、今般の戦争法について、日本が集団的自衛権を行使できるのは敵対行為に対応する場合に限られている、と不満を表明しているとのこと、驚愕しました。
  相手側からの敵対行為なしの集団的自衛権の行使を要求しているわけで、おそらく先制攻撃というより、侵略征服行動そのものを求めているのです。日本が軍事同盟下に下請参加する米国の軍事行動がそもそも侵略征服であることが躊躇なくさらけ出されています。

 米ネオコンがかようになりふり構わなくなっていること、その倨傲と下劣さににあらためて唖然といたしました。
 せっかくの西洋のよき思想的文化的伝統からは無縁の白い膚のオオカミのもとで自衛隊員たちがその生死を差配されること、まことにつらい思いです。

 戦後占領行政において、日本の軍事国家としての牙を根こそぎ抜くという目的のもとではあれ、彼らなりに誠実に近代立憲国家の理想を追ったニューディーラー、GS(GHQ民政局)を冷戦への転換を奇貨として放逐した反共謀略組織、G2(GHQ参謀第2部)と、ドレスデンと東京に対する無差別殺戮爆撃、対日原爆投下を立案指揮した殺人鬼カーティス・ルメイの流れを汲むのがネオコンの対日謀略チーム(ジャパン・ハンドラーズ)であると聞いたことがありまして、むべなるかなと思いました。

 今般の戦争法によって往時の南ベトナム政府と何ら変わらない存在と化した日本政府は、明治長州政権が大日本帝国憲法をそうしたように、外見的立憲主義によって運用してきました。
 すなわち、国民の基本的人権と憲法を最高規範とする法の支配をたんなる建前と考えてきたわけです。

 集団的自衛権の行使承認を安倍官邸が閣議で決定するまでは、防衛省のホームページには
 「しかしながら、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものであって、憲法上許されないと考えています」という政府見解が明記されていたとのことです
http://news.livedoor.com/article/detail/9018146/ )。

 これはあくまで外見的立憲主義による権力側の行動の制約を明記したものです。
 しかし、ネオコンに使嗾された政府官邸および自公は、今次の戦争法制定において外見的立憲主義さえ踏みにじったわけです。
 かように前近代的なやり方を躊躇なく、計画的にやってのけたことから、ほとんどすべての憲法学者が、野蛮な違憲立法であると怒りを表明しました。

 かって長州明治政府が日本を近代的立憲国家に見せようと努力したことさえドブに投げ捨てた政府官邸と自公は、人類史的に恥ずべき存在に堕しているのにかかわらず、長州平成政府が国営放送局と最大発行部数の新聞を支配しているために、多くの人びとはそれに気づかされていません。

 しかし、「憲法守れ」と立ち上がった、SEALDsという若ものたちの、かってない草の根運動が、広汎な庶民国民一人ひとりに憲法に対する自覚的認識を呼び起こしました。

 民主主義とは選挙という一方的に与えられた機会にお仕着せの選択肢に限定されてさまざまの注文に従って行使するものではないこと。民主主義とは、選挙を含めての自発的、主体的な表現と行動によってつくりだすものであることを、人びとははじめて自分のものとしつつあります。

 思い思いのプラカードを掲げて主張し訴える行動、デモという言い方にまじってパレードという言葉が自然にもちいられるようになりました。
 そこではマイクを握って大勢の前で呼びかけるときに、誰もが「私は・・・」と言っています。「我々は・・・」ではなく。そのことに強い感銘を受けました。

 いま、あの民主党と、すでに長州ではなくなった共産党が手を結ぶことができるのか、それが焦点になっています。
 そして、民主党内にはけっして共産党に近づくことのないであろう主要メンバーが公然たる力を持っています。

 これを政党による政局問題としてのみ考えるマス・メディアはすでに周回遅れになっていると思います。
 民主主義においては政党の動きや政党内の考えがコトを動かすのではなく、政党は多数の国民に動かされて国民の考えに従って政治に携わるものだ、ということが、SEALDsによって当然のこととなり、これが澎湃たる流れになりつつあります。

 マス・メディアの世論調査において支持政党を選ぶ、選挙において選択できる政党に投票する、こんなものが民主主義ではないと、SEALDsの若ものたちが、世代をとわず皆につたえています。

 「勝手に決めるな。言うことをきかせる番だ俺たちが」というコールは、政府自公に対するだけのものではなく、政治というものに対する民主主義的スタンスを端的にあらわしていると思います。
 いまこのコールが民主党に向けられていることを思い知るべきです。

 政党とは国民にとって与えられるものではありません。国民が動かすものです。
 選挙とは与えられたリストから選択するものではありません。国民の意を日々体して政治のプロフェッショナルとして動いてくれる人をつくりだすものです。
 自由とは選択する自由ではなく、つくりだす自由なのです。

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Unknown (tomnohara)
2018-03-24 16:21:15
>ここまで日本人は舐められているんだよ。

それは大変よく判る。ではどうすべきか?

「舐められない」ということは外国と対等の立場に立つ、と言う意味である。その際米国と手を切り、日本を間接侵略して、何番目かの自治州にせんと虎視眈々と狙っている国と友好関係を結ぶという選択はあり得ない。
ならば、全ての国と外交に頼るのだが、外交力を裏打ちするものは相応の軍事力である。
外交なき軍事は暴力であるが、軍事なき外交は泡でしかない。
ならば核戦力も厭わぬ独立した軍事力を持て、ということになろうが、全体を読むとそう理解できない。貴殿は、日本を一体どうしたいのかがイマイチ判らぬ。
返信する
tomnoharaさま ()
2018-03-30 22:27:17
>ならば核戦力も厭わぬ独立した軍事力を持て

 それこそ日本は国際社会から孤立して、滅亡の途をたどります。世界で核保有国は9か国のみです。ラテンアメリカもアフリカも核なしで、世界の多くの国々は、核なしで、外交力のみで国際社会で渡り合っています。残りの180か国に核武装させることを考えるよりも(それこそ地球滅亡です)、わずか9か国の核を無くさせることの方がはるかに近道でしょう。それを目指すのが外交です。
返信する
(関さまへ)核抑止力について (Mr.T)
2018-04-04 06:25:58

正気でない科学
https://www.youtube.com/watch?v=Xuv1W2s8Nnc
最新鋭ロシア兵器が動画で公表【動画】
https://jp.sputniknews.com/russia/201803244709631/

結論的には今年が日中平和友好条約締結40周年と言う事もあり
極東アジアにおいては日米中露朝の「皆平和協定」が宜しいかと

オオカミ少年の中国崩壊論ではなくて
中国脅威論は現実的な問題ですよね

ただ中国最強の「習近平&王岐山」はコンビですからね
片方だけに偏り偏向して極端な事(話し)を言っていると
そんな感じなのが例によって保守・右翼の人たちですw

「核はなしにして外交力のみ」でと言う話しであれば
http://earth.kurasu.biz/index.php?QBlog-20170910-1
↑の動画の海洋国連合の発想はユニークと思います

領土的野心を剥き出しにしているのは中国ですが
確かに日本は飲み込まれるリスクありと思います
(したがいまして北を取り込めるかどうかは重要)

北と一体なのは何度か繰り返し記しました
旧・瀋陽軍区(現・北部戦区)で中央北京に
核ミサイルを向けるくらいに独立意識が高く
シナ中共最強の人民解放軍は朝鮮族メイン
旧満州国エリアの中国軍を指導してきたのは
大日本帝国陸軍だった日本の軍人と言われて
中国内で最強の理由がわかろうというものです

北が主導する南北朝鮮の統一国家が
日本寄りになる事等で旧・瀋陽軍区の
シナ中共最強の人民解放軍を親日へ
これで中国の領土的な野心を抑えると

世界の指導者となったプーチンのロシアから最高勲章
聖アンドレイ勲章を授与されたのが習近平と言う事実
https://www.youtube.com/watch?v=A3E7qCrv748)←
中国株の投資家の間では習近平の評価はかなり高く
次代の覇権国を目指す帝国主義だと言うのはちょっと
違うような気が感じがして大国ではなくして「経済強国」
実体経済を最重要視してるのではないかしらと考え中
西側の有識者の目よりもプーチンの心眼を採用します

判断ミスで失敗すれば国家が崩壊し消滅するリスクのある
日米中露朝の政治家のトップは皆さん非戦派の気がします
(勿論ファーストは自国なんで国益を巡る問題はありますが)
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