代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

毎日の記者さんへのインタビュー

2006年07月07日 | マスコミ問題
 前のエントリーで書いたように、私はアジア経済研究所の途上国研究奨励賞をいただきました。授賞式の後、毎日新聞の記者さんからインタビューを受けました。インタビューの内容は、もちろん私の研究内容に関してです。私がインタビューを受けた後、今度は逆に一ブロガーとして記者さんへのインタビューを試みてみました。その内容をご報告します。毎日新聞が護憲から改憲へと舵を切っていった過程などを聞くことができました。ちなみに記者さんは私よりも若いフレッシュな方でした。

私「じつは私は毎日新聞の購読者なんですけど、もう止めようと思っているんです。東京新聞に変えます。全国紙の中では一番まともだと思って毎日の購読を続けたんですが、郵政民営化を支持する報道姿勢を見てとことん愛想が尽きました。その上、いつのまにか毎日の論調は改憲論に変わってるじゃないですか。もう首都圏の新聞で護憲なのは東京新聞だけだし、私がまともだと思う論調は東京新聞だけですよ」

毎日の記者さん「おっしゃる通りです。私たちの努力が足りずに申し訳ございませんでした」 

 その後の彼の話は、語るも涙、聞くも涙でした。記者さんの立場を考えるとあまり詳しくは書けないのですが、その記者さんは護憲派の学者のインタビューを取って紙面に掲載しようとしたところ、政治部の有力者に睨まれてつぶされそうになった経験を持つそうなのです。すったもんだの挙句、掲載予定より2日遅れて何とか載ったのですが、そういう記者へのハラスメントを通して、毎日の論調は強引に改憲論へと舵を切っていったそうです。 

 さらに私は、固有名詞を上げながら、あの記者の書くものはひどい、この記者もひどい、とずいぶん批判をさせていただきました。
 それを聞いて、その記者さんは次のように言いました。

記者さん「先日、友人のNHKのディレクターと飲みながら話していたんですけどね、私たちが信頼している知識人の皆さんも、きまって悪い報道を見つけて批判ばかりするんですよね。それはあまり生産的なことではないんです。私がお願いしたいのは、何か光る良い報道を見つけた場合、その記事を褒めてあげて欲しいのです。皆さんがそういう記事を褒めてくだされば、その記者は弾圧を受けにくくなります。社内でも立場も改善され、もっと自由に良い記事を書けるようになるでしょう。新聞報道を改善させたいと思うのでしたら、悪い記事を批判するよりも、良い記事を褒めてくれることの方がはるかに効果的なんです」

 う~ん、なるほど。私がブログで過去に書いてきたことをかんがみて反省してしまいました。私の過去記事も確かに批判ばかりですね。
 
 今のマスコミ報道を憂いている他のブロガーの方々にも知っておいて欲しい言葉だったので紹介しておきました。

 そういうわけで、これから褒め言葉も書くように努力いたします。

 そういえば、NHKで褒めたい番組が一つ。7月14日(金)報道予定のNHKスペシャルはすばらしいですね。
 ラテンアメリカの左派政権の特集番組なのですが、そのホームページには以下のように書かれています。う~ん、すばらしい。さすがはNHK国際部。NHKを民営化させては絶対にダメですね。こんな番組は決して作れなくなってしまうでしょう。
 
<以下、NHKスペシャルのホームページより引用>
 世界最悪の「格差社会」、ラテンアメリカで今、新たな挑戦が始まっている。「平等な社会」を目指そうとする左派政権が、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ベネズエラ、ボリビアで相次いで誕生したのである。これらの国々は、経済再建のため、早くからアメリカ主導の、「規制緩和」「民営化」「外資の導入」といった新自由主義経済を受け入れてきた。しかし、それは逆に「格差」の拡大を生み出し、人々は不満を募らせていった。

 ブラジルを始め、左派政権の国々が去年団結して反対したのが、アメリカが進めてきたFTAA(米州自由貿易圏)の構想だった。FTAA構想は、関税を撤廃し、多国籍企業により大きな自由を与えることで経済を活性化させようとするものであった。これに対し、左派政権の国々は、新たな市場を中国、インドなどに求めようとする、いわば「脱アメリカ」に動き始めたのだ。

 急速な反米の動きの底流にはまた、ラテンアメリカの多くの国に共通の暗い記憶がある。冷戦下アメリカは、この地域に誕生した社会主義政権にたびたび介入。多くの国に軍事政権が生まれ、思想の弾圧や虐殺などが繰り返されてきた。現代の潮流の根底には過去の記憶が横たわっている。
<引用終わり>

 いやー、勇気のあるすばらしい番組だと期待できます。親米右派の方々には必見の番組でしょう。
 安倍さ~ん、NHKに電話かけて弾圧したりしちゃダメですよ~。  
 

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8 コメント

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戦争の克服 (足踏堂)
2006-07-07 13:52:09
新書の中で、私は集英社新書が比較的まともなものを出しているなぁと感じているのですが、最近、森巣博対談シリーズ三弾「戦争の克服」を最近読みました。

そこで、国際法学者の阿部浩己先生も、良心的なジャーナリストや裁判官を応援するという活動を提案されていました。「彼らを孤立させてはいけない」と。

確かに、われわれのできることは、批判だけでなく、応援もあるのだなぁと、反省した次第です。
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受賞おめでとうございます (三木敦朗)
2006-07-07 17:26:44
受賞おめでとうございます。

「フリーター研究者」の希望の星、だと思います。



報道に地道にとりくんでいる方々を応援しつつ、よくないところも言っていく、というのが建設的批判なのでしょうね。14日(延期になってしまいましたが)と21日のNHK番組も、見て大いに評価し、製作者を励ましていきましょう。
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Unknown (oozora通信)
2006-07-07 20:32:12
受賞まずはおめでとうございます。

自己のフィ-ルドワ-クの専門領域にあって尚、在野の批判者であり続けておられることに敬意を表します。

歴史学者A・ド-ヴエは次のようにいっています。「人・・科学者・・は自己の個別領域に深い愛着をもって接しなくてはならない。しかし、それと同時に常に歴史の進行をその大局において全体的に把握しなければならないことも忘れてはならない。」・・と。科学者が象牙の塔の内外で常に”良き批判者”であろうとするのにはそれなりの苦労があるとは思いますが、どうかこれからも自己の専門領域と”歴史の大局”へのコミットの行き来を継続してください。
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足踏堂さま ()
2006-07-08 06:05:14
 私も集英社新書の出版方針にはすごく共感できます。編集者たちにハートの熱い人々が多いのだろうというのが伝わってきますよね。こちらも応援しましょう。『戦争の克服』は読んでいないので、時間があったら読んでみます。
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三木敦朗さま ()
2006-07-08 06:18:57
 おお、同じ「フリーター研究者」仲間の三木さんではないですか! 三木さんのHPに今まで気付かなかったのですが、これから拝読させていただきます。

 「全国フリーター研究者連絡会」でも結成したら面白いかも知れませんね。金のないフリーターでもこれだけの研究ができるんだぞ、いや失うべきものの何もないフリーターだからこそ面白い研究ができるんだってアピールするためにも・・・。

 
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oozora通信さま ()
2006-07-08 06:51:06
 ドーヴェの心に染み入る言葉をまことにありがとうございました。たいがいの専門家というのは、自分の専門以外の事象(歴史の大局)にまで踏み込んで発言するのには躊躇します。そこで何か誤った発言をしてしまい、自分の専門分野の業績にまで傷がつくことを恐れるのでしょう。でも、そうすると市民感覚を失った危ない専門家たちが量産されるようになると思います。自分の専門分野を離れると、すごく危ない、幼稚な考えしか持っていないという・・・。

 私は、専門外の事象には、「専門家」としてではなく「一市民」としての立場で発言をするという方針でいます。

 専門家なんてのは要するに「オタク」な人々なので、狭い専門領域をマニアックに極めているだけで、市民よりも歴史の大局なんて見通せない場合が多いと思います。

 経済・社会に関して広い知見を持たない、軍事オタクなんかに、日米アジアの未来まで見通せるとは思えません。
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Unknown (oozora通信)
2006-07-08 22:42:30
私なんかはむしろその逆で、学問(科学)としての専門領域のいはばつまみ食いのうえになりたっているような記事しか書けないですよ。

真摯で目立たぬがゆえに、ことの”真理”に誠実であろうとするその作業の結実は尊い「人類全体」の財産だと思います。
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oozora通信さま ()
2006-07-11 22:25:03
 狭い専門領域をきわめる人の役割ももちろん重要ですが、同時に専門の深い知見を総合化しながら鳥瞰的な視野で大局を見通せる人の存在がすごく大切なのだと思います。リベラル・アーツをきわめた人が。

 社会科学から自然科学まで一通りの教養がそろっている知識人、そういう人こそ政治家向きなのだと思います。
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