ツキコさん

2007年02月03日 | 健康・病気
ある駅前の一杯飲み屋に入ると、ひとりで酒を飲んでいる女性がいた。
肩ぐらいまでの真っ直ぐな黒髪がきれいだ。
背筋をすっと伸ばして酒を飲む姿が、その店に場違いな感じがする。
そのすらりとした背中が他の客すべてを拒否していた。
といってもその店にいることをゆるりと楽しんでいる様子が見える。

そのうち初老の背広を着た紳士がふらっと店に入ってきた。
自然な感じで女性のとなりに坐った。
店主のサトルさんに酒とつまみを頼む。
女性は相変わらず手酌で飲んでいる。
初老の紳士も黙って自分のぐい飲みに酒をついで飲んでいた。

おれは知っている。
女性はツキコさんという名で、紳士はセンセイだ。
おれはふたりに話しかけたかったが、よした。
おれなんかが入り込める隙間はふたりにはない。
おれも黙って手酌で酒を飲み続けた。

ここまで書いたことはつくり話です。
川上弘美さんの「センセイの鞄」という小説を先週読んだ。
よかった。久しぶりにいい小説を読んだ。
主人公のツキコさんとセンセイがよく行った居酒屋に、
私も行きたいと思った。

ツキコさんて、川上弘美さんそのものだな、と思った。
私は彼女とパソコン通信のオフ会で会い、酒を飲んだことがある。
ネットで句会をし、オフ句会も何度かやった。
句会で落ち込んでいるときになぐさめのメールもいただいた。
遠いむかしのことです。

コメント (4)
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