「フーテンの寅」in 楽家

2001年10月14日 | 映画

女房が夜7時前になっても帰ってこない。
息子は腹がへったという。
「何時に帰る? メシはいつ頃?」
ケータイでメールを打った。
しばらくして、家の電話が鳴った。
「今、終わったのよ。これから帰る」という。
今日彼女は東京の美容院に行った。
あの、演歌をうたう美容師のいるところだ。
しかたないので、私はパルコに行き、
息子たちにヒレかつ弁当を買ってきた。
1日誰とも話しもせず、テレビを観たり、
本を読んでいた私は、
人恋しくて楽家に行くことにした。
しかし、財布に千円札が4枚しかない。
ま、いいかと家を出た。
楽家のカウンターには5人坐っていた。
私はテレビの下の席に坐った。
マスターがテレビをつけると、
「男はつらいよ フーテンの寅」をやっていた。
それまで、みんな話していたのが、
一瞬静かになった。
それから大変だった。
「寅が若いな」「いやみんな若い」
「先週は、都喋々が出ていた」
「あれは寅の母親なんだ」
「お、新珠三千代がキレイだな」
「おれは、浅丘ルミ子がよかったな」
みんな、それぞれの「男はつらいよ」に酔っていた。

私は、高校2年のときに、
テレビの「男はつらいよ」を観た。
それ以来のファンだ。
23歳で死んだ、
プロボクサーになった友人も好きだった。
ボクサーをやめ、会社を辞め、
フーテンの寅に憧れて旅をはじめた龍彦。
あいつは、ほんとうにバカなやつだった。
でも、こうしてあいつのことを書いてるだけで
涙がにじんでくる。
あいつは1年に1度ぐらい東京に戻ってきた。
そしてひと騒動起こして、また旅に出た。
まるで寅のように。
私も一度、神戸にいたあいつを訪ねたことがあった。
龍彦は、新聞配達所にいた。
私が行った翌朝、彼はそこを辞めた。
「おいおい、そんなに簡単に辞めていいのか」
「いいんだよ。しばられてちゃ、いい人生送れないよ」
それから2人で、龍彦のふるさとの山口に行った。
錦帯橋の上で飛び跳ねていた脳天気なあいつ。
寅さんを観ると、いつもあいつを想ってしまう。

 

コメント
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