写真は、マンションの内覧会で畳を上げてみたところです。畳の下には、厚さ2㎜程の青いクッションシートが敷かれています。シートの下には、床のコンクリートが見えます。このコンクリートの部分を床スラブと呼びます。この床スラブの厚さは21㎝で、内部には鉄筋が入っています。このように、床の仕上げ材である畳やフローリングを、直接床スラブに載せる方法を直床と呼びます。もう一つの床の作り方は二重床です。二重床とは、鉄筋コンクリートの床スラブの上に短い束を立て、その上に下地を敷き並べ、畳やフローリングで仕上げます。コンピュターのアクセスフロアと同様に、フロアと床スラブの間を空ける作り方です。直床の場合には、フロアと床スラブの間に空間はありません。
写真の直床のスラブは21㎝と書きましたが、その内の20㎝は骨組みとしての床で、1㎝は仕上げのモルタルとなっています。この1㎝の仕上げモルタルはセルフレべリングと呼ばれるもので作られます。セルフレべりング、即ち、自分で平らになります、という事です。これは、モルタルに油のようなものを混ぜ、ドロッとした状態にして、床の上に流しておけば、次の日には、水平で硬くなっている、というものです。このように物理的に床の表面を水平にしてしまうので、ビー球を置いても、転がってはいきません。
また、床スラブの上に置かれている畳は、化学畳と言われるもので、畳表は樹脂(い草や和紙の場合もある)、畳床は発泡スチロール、底にはシートが貼ってあります。直床の洋室の場合には、フローリングをそのまま床スラブの上に敷きます。フローリングは木材ですので、その上を歩くと床スラブにぶつかって音がしてしまうので、防音のため、フローリングの底面は、5㎜程のクッション材が貼られています。その為、このような床材の場合は、どうしても、上を歩くと、フワフワ感があります。マンションを購入する際には、床の構造が、直床なのか、二重床なのか、確認すべきです。(7811)
表は、国土交通省が公表した、分譲マンションの修繕積立金の目安です。これは、部屋の専有面積80㎡として、84のマンションの実例を基に算出しています。例えば、10階建てで、戸数120であれば、マンションの維持管理のために必要な月当たりの修繕費は14,240円になるわけです。1㎡に当たりにすると178円となります。一方、マンションの売り出し時において、不動産が会社が提示する月当たりの修繕費は、同程度の部屋で7,600円、1㎡当たりにすると95円程度となっています。維持管理していくのに必要な修繕費は178円、ところが販売時に売主である不動産が提示する金額は95円ですから、約半分の金額となっていることになります。
このように、建物の維持管理に必要な積立額になっていない理由は、売主が購入者に対し、販売時に負担を感じさせないためです。そうなりますと、将来の改修時には、積立金が不足してしまうということになります。国土交通省としては、修繕金の実態を不動産会社に周知し、購入者に説明するようにするとのことですが、それで意味をなすのか疑問です。
マンションの管理費や修繕積立金は、売出し時には既に金額は出ています。これらのお金は、本来、住民が管理するものですが、売出し時は、管理組合が機能しないので、売主がとりあえず金額を決めているに過ぎません。売主が、一方的に決めている金額ですので、当然、売主の思惑が入っています。管理費は、自分達のグループ会社になるから高めに、修繕積立金は、売れやすくするために低めに、こういうことは当然考えるでしょう。ここで、大事なことは、住民が、管理費も修繕積立金も、業務の内容を精査し、それに見合ったお金を払う意識を持つことだと思います。
マンションは管理を買え、とも言われます。新築されたマンションでも管理が悪ければ、価値が下がっていってしまう、ということでしょう。新しく建設されたマンションが住民に引き渡されますと、住民が管理組合となって、共用部の管理を行っていきます。管理組合と言っても、最初は、住み始めるのもバラバラだし、住民も建物を理解しているわけではありません。これでは、引き渡しが済んでも、管理組合は、建物の管理は出来ないので、通常、管理委託内容や管理会社は、売主が決めています。通常、最初の管理契約は、期間1年間、業務は、①事務管理業務(管理費や修繕費の保管と運用) ②管理員業務 ③清掃業務 ④設備管理業務です。これらの業務に対し、売主は管理費を算定し、マンションの契約時に管理費を買主に示します。
以上のように、最初の管理会社も管理費も、売主が一方的に決めたものとなっていますが、これは、新築マンションの現状を考えますと仕方がないでしょう。最初の管理契約は1年間ですので、それ以降は管理組合が主体性を持って、管理契約を締結していくことになります。上述しましたように、最初の管理費、管理委託契約、管理会社、これらは全て売主が決めているので、1年間の状況を見て、最初の管理委託契約の更改時には、必要なところは修整して行く必要があります。場合によっては、管理会社を変える、ということもあるでしょう。
住民として、マンション管理に携わるのは面倒なものです。でも、管理費として月々払っているお金の使われ方を確認するのも大事なことです。それには、先ず、現在の管理契約の内容を知ることが基本になります。そして、契約に従って業務が為されているか、この業務は必要なのか、契約形態はこれで良いのか、これらを考えることによって、充実した管理契約になり、また、無駄な管理費も削減されていくと思います。(71.13)
横浜のマンションで杭が支持地盤まで届いてなく、また、支持地盤を確認するデータが改ざんされていました。この杭工事の発注形態は左の表のようになっていました。私も建築業界に長年いますが、今回の事件は非常に狭い範囲で起きたと思います。つまり、旭化成建材の杭工事関係者が、工程を気にして、勝手にやってしまった、こんな風に感じています。勝手にやってしまったのですが、杭工事の請負形態が複雑で工事監理の責任体制が分かりにくく、それを見逃してしまった、ということも原因のもう一つです。旭化成建材の社長がテレビで涙を出しながら詫びていましたが、泣きたいのは社長ではなく、マンションの購入者だと思います。
このようなマンションを購入しないためには、旭化成建材が杭工事を行ったところは避けるべきと思います。通常、パンフレットには、マンションの販売会社と元請の会社名しか記載がありませんが、全体の工事の契約形態を明らかにしてもらうのが必要と思われます。
次に、駅ごとに2003年4月~2005年3月までに新規分譲された物件の坪単価と2013年4月~2015年3月までに中古流通した物件の坪単価を比較します。中古流通時の坪単価を、新築分譲時で割った値をリセールバリューと呼び、100%を越えていると購入時より高く売れる可能性が高くなります。
1位 小伝馬町(東京メトロ日比谷線) 131.8%(193.9/255.5)
2位 豊洲(東京メトロ有楽町線) 131.6%(180.1/237.0)
3位 辰巳(東京メトロ有楽町線) 127.5%(155.7/198.5)
4位 半蔵門(東京メトロ半蔵門線) 127.4%(428.9/546.4)
5位 外苑前(東京メトロ銀座線) 125.8%(409.0/514.7)
6位 市ヶ谷(JR総武線・中央線各駅停車) 122.1%(289.8/354.0)
7位 麹町(東京メトロ有楽町線) 121.7%(361.4/440.0)
8位 都筑ふれあいの丘(グリーンライン) 121.7%(109.7/133.5)
9位 南千住(東京メトロ日比谷線) 121.5%(141.8/172.3)
10位 元町・中華街(みなとみらい線) 120.9%(209.4/253.0)
11位 白金高輪(都営三田線) 120.8%(290.0/350.2)
12位 新御徒町(都営大江戸線) 120.0%(172.9/207.4)
13位 勝どき(都営大江戸線) 119.3%(194.3/231.9)
14位 国際展示場(りんかい線) 119.0%(193.5/230.4)
15位 天王洲アイル(りんかい線) 118.9%(212.2/252.4)
16位 泉岳寺(都営浅草線) 118.1%(285.5/337.2)
17位 新浦安(JR京葉線) 117.1%(154.3/180.8)
18位 下高井戸(京王線) 116.6%(243.2/283.6)
19位 品川(JR山手線) 116.5%(268.4/312.8)
20位 桜台(西武池袋線) 116.5%(198.5/231.3)
21位 東日本橋(都営浅草線) 116.4%(210.6/245.3)
22位 後楽園(東京メトロ丸ノ内線) 116.0%(260.7/302.4)
23位 日本橋(東京メトロ銀座線) 115.9%(323.8/375.2)
24位 東銀座(東京メトロ日比谷線) 115.6%(291.4/337.0)
25位 神楽坂(東京メトロ東西線) 115.0%(259.7/298.7)
26位 御成門(都営三田線) 114.6%(307.6/352.6)
27位 日暮里(JR山手線) 114.2%(169.5/193.6)
28位 秋葉原(JR山手線) 114.1%(236.3/269.7)
29位 人形町(東京メトロ日比谷線) 114.1%(221.3/252.5)
30位 菊川(都営新宿線) 113.9%(168.6/191.9)
東日本大震災以降、建物の免震構造が注目されています。建物の耐震構造については、➀耐震構造(地震力を吸収する特別の措置はしない)➁制震構造(建物の壁や柱にダンパーと呼ばれるバネを設置)➂免震構造(建物と基礎との間にゴムを設置)、それと最近出てきてますが➃免制震構造(制震と免震を組み合わせる)、この4種類です。現在、年間約2,000棟弱のマンションが建設されていて、免震構造採用のマンションは、その1割の200棟程です。今後、免震構造のマンションが増えていくと思われますが、なんで、増えて来なかったのでしょう?その理由は、免震構造にすると建築コストが増加するからです。勿論、その値上がり分は、売値に反映されます。それでは、普通の耐震構造に比べて、免震マンションの場合、どの程度建築コストが上がるのでしょう?左の図が、それを試算比較したものです。建物の規模は、地上11階、建築面積は400㎡、述べ床面積は4,400㎡としています。イメージとしては、戸数60程の都心型マンションです。図の最下部に書かれているように純粋に建築コストだけを比べると、免震構造にしますと、2.8%の増加になります。このマンションが一般的な耐震構造で戸当たり3000万円とすれば、免震構造になると3090万円になります、ということです。
このコストの増加をどう考えるかですが、これは将来の地震の確率とその際の被害額との兼ね合いになります。仙台市のマンションのように全壊になることを考えれば、はるかに安い金額です。また、免震構造であれば、地震時に建物に与える負荷も軽減されますし、地震保険に入る必要がなくなるかもしれません。これからの首都圏での直下型地震を考える時、安全で安心のまちづくりの為には、ビルやマンションを免震構造にしていくことが重要と思われます。
家の環境はピンからキリです。誰でも静かな環境を望みますが、都会ではなかなかそうもいきません。車の音、電車の音、私達の生活はいろいろな音に囲まれています。それでは、騒音というのは、どれぐらいまで許されるのでしょうか?騒音規制法では、夜中(午後10時~午前6時)の騒音が40~45db以内になる様に規制しています。40~45db以内であれば安眠できるという判断です。
外からの音が最も侵入し易いのは窓です。窓の設置は明り取り及び換気のために建築基準法で床面積に対し必要面積が定められています。ですので窓がない部屋はありませんが、外からの騒音に対しては弱点となってしまいます。そんな経緯から、窓のサッシには遮音性能を持たせるようにしています。周りの騒音が高い所では遮音性能の高いサッシを使うわけです。
窓のサッシの遮音等級には、T-1からT-4まで4等級あります。T-1等級というのは、25等級とも呼ばれ、25db分、外からの音を遮断します、ということです。等級が上がる毎に5db分遮音性能が高まり、T-4等級になりますと、40db分遮音し、2重サッシになります。つまり、外の騒音が80dbあっても、T-4等級のサッシを設置すれば、80-40で、家の中の騒音は40dbになるというわけです。家を設計する際には周りの環境騒音を測定し、サッシを選択することになります。
写真はマンションの内覧会で撮りましたが、窓は二重サッシとなっています。二重サッシの場合には、外窓を閉めれば25db分、内窓も閉めれば15db分、両方合わせて40db遮音します。内窓の枠は樹脂で作られていますので、断熱性も高く、結露もしにくくなります。ただ、開閉が少し面倒になり、部屋も僅かですが狭くなります。自分の部屋の窓の遮音等級が知りたい場合には、売主に尋ねてみて下さい。(8.7)
昨年の東日本大震災で、建物の免震構造が注目されています。建物の耐震構造については、①耐震構造(地震力を吸収する特別の措置はしない)②制震構造(建物の壁や柱にダンパーと呼ばれるバネを設置)③免震構造(建物と基礎との間にゴムを設置)、この3種類です。現在、年間約2,000棟弱のマンションが建設されていて、免震構造採用のマンションは、その1割の200棟程です。今回の地震で、免震構造のビルやマンションが増えていくと思われますが、なんで、今まで、増えて来なかったのでしょう?
その理由は、免震構造にすると建築コストが増加するからです。勿論、その値上がり分は、売値に反映されます。それでは、普通の耐震構造に比べて、免震マンションの場合、どの程度建築コストが上がるのでしょう?
上の図が、それを試算比較したものです。建物の規模は、地上11階、建築面積は400㎡、述べ床面積は4,400㎡となります。イメージとしては、戸数60の都心型マンションです。図の最下部に書かれているように純粋に建築コストだけを比べると、2.8%、約3%の増加となります。このマンションが普通の耐震構造で戸当たり3000万円とすれば、免震構造になると3090万円になります。
このコストの増加をどう考えるかですが、これは将来の地震の確率とその際の被害額との兼ね合いになります。仙台市のマンションのように全壊になることを考えれば、はるかに安い金額です。また、免震構造のマンションであれば、地震保険に入る必要がなくなるかもしれません。これからの首都圏での直下型地震を考える時、安全で安心のまちづくりの為には、ビルやマンションを免震構造にしていくことが重要と思われます。