
まだ、公演中。21日まで。お話に触れているからこれから見る人は見てから読んで頂きたい。
アメリカ村の三角公園から少し離れたところにあるマンションの裏手のスペースとそこにあるベンチを舞台にした会話劇である。一応は。繁華街から2ブロック離れたところにある路地裏。まるでこれまで関わりを持つことがなかったふたりの男と2組の男女。ここに来たコウヘイとこれからここで暮らすアキは高校の時の同級生だけど。アキは彼のことをほとんど忘れている。高校時代一緒に3度もデートしている、はずなのに。
夜、ふたりの男(コウヘイとテツヤ)が今日もここにやって来て、このマンションに住む友人タケルを待つ。彼が突然いなくなった。全く連絡が取れない。だから。
このマンション(というか、アパート)の住人である女性(ユキ)が帰って来て、怒り出す。こんなところでマクドを食べるな、と絡んでくる。
空きテナント裏口から明かりがともり、人が出てきた。彼は新しいお店のマスターらしい。アキは彼のパートナー。
関わり合いのなかった彼らがこの人気のない街の片隅で偶然出会う。繁華街からほんの少し離れただけなのにここはこんなにも静かで寂しい場所。
彼らの淡い関係性。その先にある展開が描かれる。だけどそこには必然性がない。例えば、いきなり怒り出すテツヤ。「こんなところでマクドを食べるな!」と暴れるユキ。ふたりはラスト、自転車にふたり乗りして失踪する。突然いなくなった友人を探していたはずが、自分までいなくなる。なぜそうなるのか、しかもいきなり。
店のお金を盗んで、高価な腕時計におしゃれなこの自転車まで窃盗して消える。そして、まるでわからないままいきなり芝居は終わる。啞然となる。
思い返すと、テツヤがこの自転車を漕ぐシーンからこの芝居は始まっている。不在タケルは最後まで帰ってこない。それどころか彼の姉がやって来て、ここを引き払うと言う。タケルは隣人であるユキの彼氏から50万も借りたまま、失踪したことがわかる。
ここで暮らしているけど、それはずっと続くわけではない。この街で生まれ育って今もここにいるけど、あるいはたまたまここに来たけど、それだっていつまでも続くわけではない。タケルの不在から始まった淡い関係性。知らない同士が淡くつながる。ここにやって来てカフェバーを開業するふたりは店のお金を盗まれたけど止まる。ここから自転車で去っていくふたりはどこに向かうのか。
これはきっと居場所を巡る物語だ。なぜか、ここに来てしまう。ここには何もない。だけど、知らない間にこの場所で待つ。ずっとこんなふうにしていられたらいい。そんな気分になる2時間である。